中編4
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上書き保存

ぼくの家庭は一般的なサラリーマン家庭で 子供はぼく一人。

両親とも本当に普通を絵に描いたような人たちでとてもやさしい。

ぼくは今日も部活を終え、電車に乗り、駅から徒歩で歩いて10分の家路を歩いていた。

日もすっかり短くなり、この時間には真っ暗で家までの道も人とほぼすれ違わない。

女の子なら危ないから親に迎えに来てもらわなければいけないレベルだな。

ぼくはそんなことを考えながら歩いていた。

すると後ろから白い乗用車が近づいてきた。乗用車はぼくのすぐ隣で止った。

道でも聞きたいんだろうか?そう思っていると、中から男性が降りてきた。

「よお、久しぶりだな。元気そうじゃねぇか。」 男はそう言った。

全く知らない男性だったので 「どなたですか?人違いではないでしょうか。」

とぼくが言うと、とたんに男は顔を真っ赤にして怖い形相になった。

「とぼけんじゃねぇよ、てめえ。この傷のおとしまえ、つけに来たぜ。」

そう言うと長袖の腕をまくった。そこには刃物で切ったような長い傷があった。

男は、ぼくの手を思いっきり引っ張って車の中に押し込んだ。

「騒ぐなよ。」そう言うと男は刃物を突きつけてきた。

ぼくは怖くて、ウンと首だけでうなずくと男は車を発進させた。

ぼくは拉致された。なぜだろう?この男に全く心当たりもないし、あんな傷知らない。

車はどんどん山の中に入って行き、雑木林の中で車が止った。

男はぼくを引きずりおろし、 「よくもやってくれたな。覚悟しろよ。」

と言いいきなりぼくの顔を殴った。

「ちょっと待って、ぼくは知らない。誰かと勘違いしてるよ!」

「しらばっくれんな!人にこんな大怪我させておいて!」

「ほんとに知らないんだ。ぼくはただの高校生だ!この町でずっと暮らしてて

あなたとは会ったこともない!人違いだよ。」 男はしばらく、ぼくの顔を覗き試案顔になった。

そして何かがわかったような顔をした。

「なるほどな、あいつらがお前の記憶を操作したのか。まぁ、俺にはそんなことは関係ない。

お前には痛い目をあわせなけりゃ、気がすまないんだよ。」

男はぼくのお腹を蹴り上げた。男はぼくに怒涛のような暴力を振るった。

ヤバイ、このままでは、ぼくは殺されてしまう。

こんなところで死ぬのはいやだ。お父さん、お母さん!

そう思った瞬間ぼくは爆発的な力が出て、男を跳ね除けた。

男は一瞬ひるんだ。その隙を狙ってぼくは男の手を曲がらない逆の方向に曲げた。

「うぎゃあああぁぁぁぁあぁぁぁ!」 男は叫んだ。

ウソだろ、ぼくが男の手を折った。 倒れそうになった男のアゴを蹴った。

モロ入ったので男は一瞬白目を剥いて倒れた。

頭を何度も何度も踏みつけた。足も逆に曲げてやった。

もう男は動かなくなって、体中がボキボキに折れて、首も変な方向に曲がっていた。

そして怒涛のような暴力を振るいながらぼくは思い出したのだ。

こいつはぼくの、父親だ。しかも、小さい頃からぼくを虐待し続けた。

中学生になりぼくも少し体が大きくなり初めて父に反撃して殴りつけたのだ。

そしてついに父は刃物を持ち出してきた。卑怯なやつだった。

刃物を振り回す父を止めようとした母が刺された。 ぼくはブチ切れた。

父親につかみかかり、もみ合っているうちに父親の腕を切っていたのだ。

母の周りを血溜まりが覆っていく。死なないで、お母さん。

遠くから救急車とパトカーのサイレンが鳴っている。ぼくが思い出したのはそこまでの記憶。

ぼくは、車を運転することはできないので、車と父親の死体を残し、山を下りていった。

民家が見えてきた。ぼくはほっとしたとたんにそこで気を失ってしまった。

ぼくには何故、二つの記憶があるのだろう。

この田舎町でサラリーマン家庭で16年間幸せに暮らした記憶と あの忌まわしい血の記憶。

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ぼくは目を覚ました。壁も天井も白い。ここはどこだろう。 体中が痛くて動けない。

白衣の男二人がぼくに背を向けて何か話している。

「被験体を回収しました」

「ご苦労様、死体はどうした?」

「ああ、きちんと処分しましたよ。心配ありません。」

「しかしまぁ、ああいう副作用があるとは思わなかったな。」

「そうですね。フラッシュバックと共に、理性のリミッターが外れて

あんな人並み外れた力が出るなんて。」

「うちで遺伝子デザインしたチャイルドのモニターがあんなクズ男だったなんて。

しかも出所してしぶといことに、チャイルドを探して復讐しに行ったんだろ?」

「そのようです。まぁあの被験体がうちでデザインした遺伝子でよかったですよ。

デザインした遺伝子だからこそ、特殊な光を当てて記憶を操作できたんです。

あの男が現れるまでは、被験体はずっとあの町の一般サラリーマン家庭で 育ったという

記憶を保持していたんですから。新しいモニターのほうにはちゃんと 何事もなかったように

いつも通りに接するよう言わなければなりませんね。」

デザインされた遺伝子、被験体?モニター?何を言ってるんだ。 それは、ぼくのことなの?

「あ、被験体が起きてますよ!」 二人の男はぼくのほうを見た。

「まずいなぁ、今の話、聞いちゃったかな?すぐ処置しないとな。」

そう言うと男たちはいそいそと機械の準備を始めた。ぼくに何をする気?

「おとなしくしててね。痛くないから。上書き保存するからねー。

ちょっとだけまぶしいけど我慢してね。」

強烈な光がぼくの目を襲った。 ぼくの記憶が溶けていく。溶けていく。

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「ただいまー」

「あら、今日は遅かったわねぇ。お帰り。」

「そうなんだよ、部活の片づけが長引いちゃってさぁ。 あー腹減ったぁ。飯、飯~!」  

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なるほど……
たしか僕は向井理なはずなのに、
鏡を見るたびに違うから……

チャイルド!