【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

色情を持たない田分つくると、彼の除霊の年

中編4
  • 表示切替
  • 使い方

色情を持たない田分つくると、彼の除霊の年

「ねえ、つくる?お前はいつになったら、孫の顔を見せてくれるんだい?」

田分つくるは、いつもの言葉にうんざりしていた。

母からの電話である。

「孫の顔も何も、僕には彼女すらいないよ。」

これもいつも通りの定型文である。

田分つくるという命名通り、彼の親は、田分家の子孫を彼が残すと信じてやまなかった。

もう生まれた時から、そんな期待を背負わされた身にもなってほしいと、つくるは常々思っていた。

決して容姿が悪いわけでもなく、女性から全くモテないわけでもない。

人並みに、初恋もあったし、好きな女の子と付き合ったこともある。

彼は普通の男であった。

最近では、結婚しない男というのが増えてきているが、田分つくるは、それともまた違った。

強いて言えば、結婚できない男。

潔癖症なわけでもなく、女性が嫌いなわけでもなく、もちろんホモでもない。

一つだけ、彼が人と違うところはと言われれば、それは色情を持たないこと。

彼は生まれてこの方、男性の生理現象に悩まされたことがない。

EDと言われてしまえばそうなのかもしれない。

好きな女性と居ても、まったくそういう気分になれないのだ。

どちらかと言えば、彼は好きな人の側にいるだけで良い。

付き合って最初のうちは良い。

しかし、付き合いも長くなると、女性は不安になるらしい。

自分には魅力がないから、手を出してこないのだろうか。

決してそんなことはない。

しかし、長年そんな関係が続かないのが人の不思議なところだ。

人というのは、子孫繁栄に向けてプログラムされているようだ。

子供は要らないという女性と付き合っても、やはりセックスレスというのは、女性にはこたえるようだ。

そうこうしているうちに、他の男に掻っ攫われていくというのが、今までの経緯である。

そんな田分つくるの前に、ある一人の女性が現れた。

もう見るからに、女のフェロモンがバリバリに出ているような女だった。

体つきも、胸は大きく、ウエストはくびれ、尻は大きく張り出して、実に男性好きのする体だ。

しかも、顔は官能的な要素である、厚ぼったい唇、アンニュイな瞳、おまけに口元にほくろまで。

エロスを贅沢にあしらった女体。街を歩けば、男は皆が振り向き、声を掛けたがる。

そんな女だった。彼女はそんな自分に自己嫌悪の念をいだいていた。

彼女もまた、つくると同じ、色情を持たない女だったのだ。

田分は運命だと思った。

彼女だけが、きっと自分を理解してくれる。

田分は、その女と付き合ってあっという間に結婚した。

田分は幸せだった。

初めて、自分と同じ価値観を持った女。セックスレスにも何も疑問を持たず、夫婦は仲睦まじかった。

ところが、周りはそれを許してはくれない。

特に、結婚に諸手をあげて喜んだ、両親は。

顔を見れば、孫、孫、とうるさい。

とうとう、嫁にまで圧力をかけてくるようになって、とうとうその女は出て行ってしまった。

田分は、ショックで激痩せした。

とうとう田分までノイローゼになりそうになった。

両親は困り果てて、ある女性に相談をした。

その初老の女は、隣の村では、イタコとして有名だった。

両親は、自分の価値観でしか、ものを考えない人たちであった。

男が、女に欲情しないのは、何か、つくるに悪い物が憑いているせいだと考えたのだ。

女は田分に憑いているという霊を自分に降ろし、除霊した。

その間、3日という日を要したが、田分つくるは、生まれ変わったように明るくなった。

以前と違い、全ての悩みが吹っ切れたような、どちらかと言えば、躁状態のようにも見えた。

3日後、イタコはというと、何だか疲弊して見えた。顔色が悪く、お礼を受け取ると逃げるように帰って行った。

その日から田分つくるは、うそのように絶倫男になった。

あちらこちらで、女遊びをし、今までの人生分を取り戻すほど、いろんな女と関係を持った。

そのおかげで、いろんな女から、妊娠を告げられ、両親はほとほと困ってしまった。

孫の顔を見たいとは思ったが、結婚しない女を孕ませろとは言っていない。

両親は、あらゆる女性に息子の不始末を詫び、償いをしなければならなくなった。

そして、10ヵ月後、除霊をしたイタコから連絡があった。

なんと、その女性も妊娠したというのだ。

両親は信じられない気持ちでいっぱいだった。

彼女は子供を産んでいた。

思わぬところで、彼らの願いは叶った。

「もっともっと、孫の顔を見たいだろう?父さん、母さん。」

両親は声にならない悲鳴をあげた。

Concrete
コメント怖い
13
21
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信

わ、わたしにも憑きませんかしら

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信

親御さんの気持ちになってしまいます(T^T)

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信