太樹と大樹 ータイキとヒロキー 前編

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太樹と大樹 ータイキとヒロキー 前編

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太樹(タイキ)と大樹(ヒロキ)は、一卵性の双子だ。

兄弟仲は良い。

片方が怪我をしたら、片方も同じ所を……なんていう、双子特有のシンクロニティも、2人にとっては珍しい事ではない。

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まだ2人が高校生の頃。

何気無い雑談の中で、大樹(ヒロキ)が良く見る夢の話を語り始めた。

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大樹(ヒロキ)は知らない家の前に立っている。

洋風の大きな家だ。

所謂シンメトリー……左右対称の造りで、人の気配は無い。

玄関の扉は、閉まっていて開かない。

ふと辺りを見回すと、建物の左と右の端に、上へと続く外階段がある。

外観から判断して、3階に繋がっている様だ。

大樹(ヒロキ)は左端の階段から3階に上がった。

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外階段を上がった先に、家屋内に入る扉がある。

ドアノブを回すと、カチャリという軽い音と共に、扉が開いた。

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扉を開けてすぐ、長い廊下が奥へと延びている。

左側に扉が3つ、右側には窓が並び、大樹(ヒロキ)が立っていた庭先が見えた。

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窓は大きく外も明るいのに、何故か廊下は薄暗い。

とは言っても廊下の照明自体が暗めなので、大樹(ヒロキ)にはモダンな空間を作り出す、演出に思えたという。

大樹(ヒロキ)は、一番手前の部屋から順番に見ていく事にした。

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バスルーム……

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寝室……

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リビングルーム……

3つの部屋が、内扉で繋がっている。

どうやら、3階はゲストの宿泊用の部屋らしい。

どの部屋も今しがた清掃した様に、清潔で整っていた。

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再び廊下に出て奥に進むと、廊下の突き当たりに、もう1つ扉を見付けた。

扉の左手には、階下へと続く階段がある。

中央に位置する扉に手を掛けるが……開かない。

鍵が掛かっている様だ。

1夜目は、ここで目を覚ました。

・・・・・

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2夜目……

大樹(ヒロキ)は階段を見下ろしている。

どうやら、前に見た夢の続きらしい……そう理解出来た時には階段を下りていた。

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階段を下り終えると、3階で見たのと同じ扉が目に入る。

基本の造りは同じ様だ。

一応、この扉も引いたり押したりしてみたが、上の階と同様に開く気配は無い。

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前回とは逆に、家の中央から2階の廊下を見渡す。

左に窓、右に3つドアが並んでいる。

違うのは、突き当たりに外階段へと出る、扉が無い事だ。

手前から中を見ていく。

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女性の部屋……

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男性の部屋……

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………………何も無い部屋……

他の部屋と違い、この部屋には何も無い。

……ああ…子供が生まれたら、子供部屋になるんだ……

大樹(ヒロキ)は漠然と、そう思ったという。

長居しても仕方ない……

部屋を出ようと、踵を返した。

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ジリリリリッ……ジリリリリッ……

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突然、室内にけたたましい音が鳴り響く。

まるで大樹(ヒロキ)を呼び止めるかの様だ。

ビクリと体を跳ね上がらせて、反射的に辺りを見回す。

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ジリリリリッ……ジリリリリッ……

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何も無いと思っていた部屋の片隅で、時代遅れの黒電話が鳴っている。

大樹(ヒロキ)の中で、動揺と不安が膨らんでいく。

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……何だよ、これ……怖い夢なのかよ…………

可笑しな話だが、大樹(ヒロキ)はこの時、本当にそう思ったそうだ。

ただの探索の夢だと思っていたのに……騙されたそんな気分だったらしい。

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ジリリリリッ……ジリリリリッ……

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そうこうしている間にも、電話は出ろ!出ろ!と催促している。

躊躇しながらも、大樹(ヒロキ)は受話器へと手を伸ばした。

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ジリンッ!ガチャッ!!

「…………も…もしもし…?」

上擦る声で受話器に話し掛ける。

耳許でサーッと雨の降る様な音が聴こえた。

…………何も…言わない…?

少しだけ、心臓の動悸が治まり掛けた。

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『………次…会え……』

受話器の向こうで、小さな声が聴こえる。

心臓が再びドクドク…ドクドク…と音を上げ始めた。

「え?何?!聞こえない!」

叫ぶ様に話し掛ける。

丸っきり、空元気だ。

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『怖いよ』

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今度はハッキリと聴こえた。

……というより、直接耳許で呟かれた。

その声は…………双子の兄である太樹(タイキ)のものだったそうだ。

夢はそこで終わった。

・・・・・

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3度目の夢を見た時、大樹(ヒロキ)は心の底から後悔した。

太樹(タイキ)に夢の話をしておけば良かった……そう思ったのだ。

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2度目の夢から目覚めた後、まだ時間に余裕があったので遂、2度寝した。

その時に巨大生物に押し潰される夢を見て、屋敷の夢を忘れてしまったのだ。

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だが、大樹(ヒロキ)は確信していた。

太樹(タイキ)もこの夢を見ている。

双子特有の、あのシンクロしている感覚が、ハッキリと感じられるのだ。

太樹(タイキ)はこの建物の何処かに居る。

少しワクワクしてきた。

夢で会うのは、初めてだ。

自分の意識がこんなにハッキリしているという事は、太樹(タイキ)も夢だと自覚しているだろう。

……さて、会ったら何を話そうか…そんな事を考えながら、辺りに目をやる。

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いつもの廊下だ。

左に扉が3つ、右に窓……突き当たりに、扉が見える。

後方は壁……という事は、外階段側の部屋の前だ。

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前回の続きかと思ったが、窓から見える景色が違う。

大地が近い事から、ここが1階なのだと悟った。

目の前の扉を開ける。

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飾り気の無い、棚の並ぶだけの部屋だった。

棚の中を確認すると、どうやら食料庫らしい。

林檎が赤々として旨そうに見えたが、“ヨモツヘグイ”なんて言葉を思い出し、手を出すのは止めた。

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次の部屋へ進もうと、廊下に出た時、『ゴトンッ』という音を聞いた。

体が強張り、動きを止める。

音の出所を探ろうと、廊下の奥に目を向ける。

…………突き当たりの扉から聴こえた……気がした。

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扉の前まで進む。

……ガタッ…………ゴトッ…

微かだが、扉の向こうから聴こえてくる様だ。

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「……太樹(タイキ)…?」

扉に向かって、声を掛けた。

……返事は無い……だが、気配は感じる。

産まれた時から隣にあった、太樹(タイキ)の気配だ。

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「太樹(タイキ)だろ?ココ、開けてくれよ?」

ドアノブを、ガチャガチャと回してみる。

…………駄目だ、開かない。

ドンドンと叩いてみると、向こう側からもドンドンと返ってくる。

少し安心した。

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「どっかに鍵が無いか探してくるわ、どっちが開けるか、競争しようぜ!」

叫ぶ様に話し掛けると、一際大きく『ドン!!』と、返ってきた。

俄然やる気が出てくる。

扉に背中を向け、いざ!探索再開……と意気込んだ所で、夢は幕を降ろした。

・・・・・

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「……って、所までなんだけど。」

語り終えた大樹(ヒロキ)は、お茶を啜る。

大樹(ヒロキ)の中では、太樹(タイキ)も分かっている事が前提だ。

シンクロのあの感覚が、間違っていた事は無い。

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「俺が思うにさ、あの建物って左右対称じゃん?」

「俺が左側にいて、お前が右側……あの真ん中の扉が、家の中心って事じゃね?」

自信満々に言って、双子の意見を求める大樹(ヒロキ)。

だが、太樹(タイキ)の反応は、予想を裏切るモノだった。

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太樹(タイキ)は大樹(ヒロキ)に背を向けて、ガクガクと体を震わせている。

不審に思った大樹(ヒロキ)が、顔を覗き込むと、顔面蒼白にして歯の間から、ウーウーと唸り声を上げていた。

「ちょっ、どうしたんだよ?太(タイ)……ッ!!」

声を掛けた瞬間、ガッツリ肩を掴まれた。

太樹(タイキ)の怯えた瞳が、大樹(ヒロキ)を捉える。

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「何で“開けて”ないんだよッッ!!」

太樹(タイキ)が怒声を放つ。

大樹(ヒロキ)は意味が分からず、ただひたすら呆然としていた。

太樹(タイキ)は肩で息をしながら、「クソッ」とか「何で…!」と独り言を吐き捨てている。

その様子にビビリ捲っていた大樹(ヒロキ)だが、余りの意味の分からなさに、段々と腹が立ってきた。

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「何なんだよ!ちゃんと話せよッ!!」

今度は逆に、大樹(ヒロキ)が怒鳴る。

しかし怒鳴った瞬間に、こんなに怒鳴り合いの喧嘩なんて、何年ぶりだろう……という考えが過り、少しだけ冷静さが戻ってきた。

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幸いな事に、その感情は太樹(タイキ)も伝わった様だ。

とても小さな声ではあるが、すまん…と呟いた太樹(タイキ)は、ズルズルとその場にしゃがみ込み、ポツリポツリと語り始めた。

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続く……

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ご感想を頂き、有り難うございます。
修行者様
嬉しいコメントktkr!!
本当に後半UPが、怖くなってきました(笑)
画像は、苦手を克服してやる~っ!っと息巻いて、空回りしております(笑)
この話が終わったら、いきなりシンプルに変身するかもですww
有り難うございましたm(__)m

ご感想を頂き、有り難うございます。
珍味様
毎度お世話になってるのは、此方の方ですよ!
褒められ慣れていないので、うへへへっwwって不気味な上擦り笑いを、やらかしてしまいました(笑)
頭の中を、全部曝け出す勢いで書いてしまうので、回りくどいと言われてしまっていた、僕の作品……
なんという事でしょう!
言葉の匠・珍味様に掛かれば、この通り!
作品の出来が、良かった様に思えてくるから不思議です(某リフォーム系TV風w)
有り難うございましたm(__)m

ご感想を頂き、有り難うございます。
りこ様
嬉しいお言葉、有り難うございます!
ただ、あまり期待しないでください(笑)
………え…?たかが、こんだけの話を引っ張ったの……?
って結果になったら当方、腹切りモンですから(笑)
メタボ警戒中とはいえど、中身はまだ仕舞っておきたいので、後半戦頑張りますw
有り難うございましたm(__)m

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