太樹と大樹 ータイキとヒロキー 中編

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太樹と大樹 ータイキとヒロキー 中編

◆前回までのあらすじ◆

太樹(タイキ)と大樹(ヒロキ)は、一卵性の双子だ。

高校生の頃、大樹(ヒロキ)は左右対称の館を探索する夢を何度も見た。

夢が進むうち、どうやら自分は館の左半分を探索していて、右半分に太樹(タイキ)がいるらしいと気付く。

だが、左右を隔てる扉を開ける為、再び館の探索に戻ろうとする所で3度目の夢は終了してしまう。

大樹(ヒロキ)は、起きているうちに太樹(タイキ)と夢の話をしようとするが、太樹(タイキ)の反応は、以外なモノだった。

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ゆっくりと、重い息を吐き出して、太樹(タイキ)が語り出す。

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大樹(ヒロキ)が感じた通り、太樹(タイキ)も確かにあの建物の夢にいた。

双子には産まれた時から自然と、立ち位置というのが出来る。

大樹(ヒロキ)が当たり前に、左側を選んだ様に、太樹(タイキ)もまた当然と右側の外階段を上ったのだ。

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シンメトリーで築かれた館の構造は、基本的には同じ形をしている。

右側の太樹(タイキ)の場合は、通路の右側に部屋が3つ、左側が窓、突き当たりに扉と階段だ。

左側と大きく違っていたのは、部屋の中身だった。

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最初の部屋……

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真ん中の部屋……

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最後の部屋……

全ての部屋が荒れ果て、崩れ、そして廃れていた。

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建った当時の面影を、全く感じる事の出来ない部屋達を後に、太樹(タイキ)は廊下の奥へと進んだ。

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建物の3階、突き当たりの扉の前まで来た。

右には階下へと進む、階段がある。

大樹(ヒロキ)と同様、太樹(タイキ)も目の前の扉に興味を示した。

しかし、扉は開かない。

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ここで太樹(タイキ)は、フッと双子の弟の事を思い出した。

…………もしかして…居るんじゃないのか?

試しに扉に向かって、話掛けてみる。

「……大樹(ヒロキ)?そっちに居るのか……?」

返事は無い。

夢は……そこで途絶えた。

・・・・・

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2夜目……

太樹(タイキ)は、扉を前に立っていた。

どうやら、前回の続きらしい……そう理解した時、扉の右下に小さな異物を見付けた。

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それは扉と階段の丁度、狭間……死角にあたる場所にポツンと落ちている。

…………[鍵]だ。

直ぐにピンときた。

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拾い上げて、目の前の扉に差し込む。

………………………………………………開かない。

ワクワクした分、失望の大きさに肩をガックリと落として、手元の鍵を見た。

小さくて殆ど見えないが、“2”という数字が刻まれている。

脳の奥から、アドレナリンが噴き出す様な気がした。

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転げ落ちる様にして、階段を一気に駆け降りる。

“2”とは即ち、“2階”の事ではないか?

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……やっぱり!!

3階にあったのと同じ扉を見付けて、太樹(タイキ)の心臓が早鐘打つ。

妙にもたつく右手に苛つきながら、鍵を差し込んだ。

鍵は何の抵抗もなく、鍵穴に吸い込まれる。

……ここが開いたら、大樹(ヒロキ)と合流できる筈だ。

何故かそんな確信を持って、太樹(タイキ)は鍵を静かに回した。

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カチャンッ…

軽い音を上げて、ロックが外れる。

1度大きな深呼吸をして、扉を引く。

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……ィイィィ…

頑なに開放を拒んでいた扉が、力無い悲鳴と共に太樹(タイキ)に身を寄せてくる。

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中はボロボロの小部屋になっていて、太樹(タイキ)の正面…丁度、今しがた開けたばかりの扉と対になる様に、もう1つ扉が立っていた。

新しい世界が広がるとばかり思っていた太樹(タイキ)は、このオチにガッカリする。

しかしその失望は長く続かない。

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……ィイィィ…

正面の扉が、音を発てて『開いた』のだ。

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……コツン

床を鳴らして、男が1人…………姿を現す。

全身の筋肉を硬くして身構えていた、太樹(タイキ)の体から緊張が抜けていく。

目の前に現れたのは……………………大樹(ヒロキ)だった。

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「…よう、大樹(ヒロキ)!やっぱお前もいたのな?!」

テンションの上がった太樹(タイキ)の声は、やたらと明るい。

他人には理解できない繋がりで、通じ合ってきた

2人ではあるが、夢の中で会うのは初めてだ。

おかしな話だが、妙に照れ臭い。

だがそれは、お互い様の様だ。

大樹(ヒロキ)はニコニコと満面の笑顔を浮かべたまま、何も言わない。

照れて言葉が見付からないのだろう……太樹(タイキ)はそう思ったという。

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「……そういえば俺、まだ2階の部屋見てねーや!お前もちょっと付き合えよ?」

こっち見てから、左の方を見ようぜ……太樹(タイキ)の言葉に、大樹(ヒロキ)が勢い良く頷く。

子供がする様な、激しい首の振りだ。

……テンション高けぇなw

プクク…と笑って、太樹(タイキ)は元来た廊下に戻った。

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前回とは逆に、家の中央から2階の廊下を見渡す。

右に窓、左に3つドアが並んでいる。

違うのは、突き当たりに外階段へと出る、扉が無い事だ。

手前から中を見ていく。

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「ココも駄目かぁ…向こうはどうなってんの?やっぱ廃墟?」

大樹(ヒロキ)はニコニコと笑って、頷く。

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「どーしたんだよ、大樹(ヒロキ)?何か言えよ?」

大樹(ヒロキ)はニヤニヤと笑って、首を横に振る。

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「……え?何だ?ココ……」

2階の3室目…最後の部屋は、太樹(タイキ)がこの館で初めて見る、部屋の原型を留めた場所だった。

但し、家具や装飾の類いは、何もない。

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在るのは部屋の真ん中に置かれた、時代遅れの黒電話だけだ。

「へぇ~!懐かしいなぁ…」

太樹(タイキ)の家にも、まだ幼い時分にはあったと記憶している。

懐かしさに受話器を持ち上げて、ダイヤルに指を掛けた。

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ふと思い出したのは、テレビドラマで見た、黒電話のもう1つの使い方だ。

確か、ダイヤルを回さずに、受話器を置いてある頭の白い突起を、何度か叩く。

うろ覚えだが、内線だったか何かで、通話が出来た筈だ。

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試しに何度か叩いてみる。

耳に受話器を当ててみたが……ツーッとも言わない。

良く見ると、コードが付いていなかった。

自分1人なら苦笑いで済むイージーミスだ。

しかし後には大樹(ヒロキ)がいる。

ちょっと恥ずかしくなって、無駄に大きな声で背後の弟に話し掛けた。

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「なぁ、俺らさぁ…もう2回もこの夢見てんじゃん?」

大樹(ヒロキ)からの返事は無い。

「“次”にこの夢見たらさぁ、俺ら“会え”た状態からスタートすんのかなぁ?」

大樹(ヒロキ)はニタニタと笑っている。

「……何だよ…ヒロ……お前、何だか……」

『怖いよ』

口にしてから、猛烈に後悔した。

今の一言は、絶対に言ってはいけない言葉だった……気がする。

産まれた時から誰よりも知っている筈の弟が、知らない生き物に変わってしまう気がして、太樹(タイキ)は大樹(ヒロキ)から目を背けた。

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その拍子に、自分がまだ受話器を握ったままである事に気付く。

「……もう出ようぜ…」

何事も無かった様に取り繕い、受話器を元に戻した所で…………夢は終わった。

・・・・・

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次にこの夢を見た時、太樹(タイキ)は心の底から後悔した。

大樹(ヒロキ)に夢の話をしておけば良かった……そう思ったのだ。

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2度目の夢から目覚めた後、まだ時間に余裕があったので遂、2度寝した。

その時に巨大生物と闘う夢を見て、屋敷の夢を忘れてしまったのだ。

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だが、今この時に背後に“居る”大樹(ヒロキ)に話し掛ける事は、憚られた。

口では上手く説明出来ないが、何故か話したくない。

双子特有の、シンクロしている感覚はある。

感覚はあるのだが……同時に、得体の知れない恐怖があった。

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いつもの廊下だ。

右に扉が3つ、左に窓……突き当たりに、扉が見える。

後方は壁……という事は、外階段側の部屋の前だ。

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前回の続きかと思ったが、窓から見える景色が違う。

大地が近い事から、ここが1階なのだと悟った。

目の前の扉を開ける。

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そこは小さなホールの様な場所だった。

但し、半分は崩れた瓦礫が積み重なり、原型を留めていない。

ぐるりと見渡したが、特別何かがある訳でもない。

何より……後に居る大樹(ヒロキ)の存在が気になって、探索する気になれない。

太樹(タイキ)は、ホールを後にした。

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次の部屋へ進もうと、廊下に出た時、『ゴトンッ』という音を聞いた。

体が強張り、動きを止める。

音の出所を探ろうと、廊下の奥に目を向ける。

…………突き当たりの扉から聴こえた……気がした。

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扉の前まで進む。

……ガタッ…………ゴトッ…

微かだが、扉の向こうから聴こえてくる様だ。

向こう側からドンドンと扉を叩く音が聞こえたので、ドンドンと叩き返してみる。

少し音が止んだ。

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扉に耳を押し当てると、誰かが何かを話している。

「……何だ?」

………………知っている声の様な気が……

もう一度扉を叩こうと腕を振り上げた時、背後からガッとその腕を掴まれた。

ハッとして振り返る。

目の前に大樹(ヒロキ)がいた。

額と額が、ぶつかりそうなくらいに距離が近い。

先程までの満面の笑みは消え失せ、無表情に目を見開いて、太樹(タイキ)を見ている。

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『ドン!』

驚いて身を引いた太樹(タイキ)の背に、扉がぶつかる。

背中に何者かの気配が遠ざかるのを感じながら、太樹(タイキ)の意識は暗がりへと落ちていく。

3度目の夢の……終わりだった。

・・・・・

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「…………何だよ、それ……」

話を聞き終えた、大樹(ヒロキ)の声は震えていた。

それ以上、言葉が見付からない。

太樹(タイキ)に至っては、顔色が真っ白だ。

2人の話を合わせると、分かった事がある。

太樹(タイキ)と一緒にいる“大樹(ヒロキ)”は、大樹(ヒロキ)では無い。

では何者なのか……それは分からない。

分からないが、絶対に良くない者だと2人の勘が告げている。

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「………………計画を練ろうぜ…」

押し黙っていた太樹(タイキ)が、ポツリと呟く。

「これは勘だが……次で“最後”な気がするんだ…。」

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何が最後なのか……太樹(タイキ)は語らない。

この夢なのか……

太樹(タイキ)なのか……

「……絶対に、助けに行くからな……!」

大樹(ヒロキ)の言葉に力が籠る。

お互いの意思を確かめ合うように、2人は強く頷き合った。

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続く……

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