短編2
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隣宅

俺んちのアパートさ、壁が薄くて結構隣の生活音とか聞こえてくるのよ

まあお互い様だし、俺も夜とかはできるだけ静かにしようと気をつけてた訳

一ヶ月くらい前かな、俺んちの隣、一階の角部屋なんだけど、そこに家族連れが越してきたんだよ

夫婦と男の子二人の四人家族、正直なんでこんな狭いアパートに引っ越してくるんだと思ったよ

それがやっぱりうるさいんだよ、小さい子供がいるからかな、ドタバタ走り回る音とかが凄い響くの

でも引越しの挨拶もきちんとしてくれたし、外で会っても愛想が良いから我慢してたんだよ

でもある日ダメだった、俺ちょうどその家族の部屋の壁際にベット置いて寝てるんだけどさ

もう十二時前だってのに子供特有の奇声とか聞こえてきちゃって寝れないんだよ

その日、俺彼女にフラレちゃってさ、イライラしてたんだよね

つい壁殴ってうるせえっ!何時だと思ってんだ!って、まあ怒鳴っちゃったんだ

そしたらすぐシーンとなってさ、腹の虫も収まったからその日は寝たんだ

次の日起きてから、ああやっちゃたなーって、顔合わせづらいなーって思ってたらさ

玄関のチャイムが鳴ったから出たらその家族全員がいて、頭下げてくるの

申し訳ございませんでしたって、俺もう恐縮しちゃってさ、こちらこそ怒鳴ったりしてすみませんでしたって平謝りよ

お詫びにお菓子の詰め合わせなんかくれたしさ、良い人達でよかったな、俺も大人気なかったなって反省したんだ

その日の夜も静かでさ、ああ、今日は静かに寝られるぞってベットに入ったんだ

そしたらなんていうのかな、人の気配っていうか、うまく説明できないんだけど落ち着かなくてさ

ほら、子供の頃キャンプとか行ってみんなで雑魚寝した時みたいな感じがして

もちろん部屋には俺しかいないからそんなわけないんだけど、気になって寝付けなかったんだ

そしたら隣の部屋が気になりだしてさ、いくら前の日にあんな事があったからとはいえ

妙に静かなんだよ

いくら気をつけててもさ、子供が二人もいたら多少の音は聞こえてきそうじゃん

でも全く音がしないの、異常なくらい

いつも遅くまで起きてたのに今日はもう寝たのかなって思ってさ

悪いとは思いつつベランダの仕切りの隙間からこっそり顔だけ出して覗いてみたんだ

そしたらさ

起きてた

一家四人、縦に顔並べてさ、俺の部屋側の壁に耳付けてじーっとしてた

部屋の中だし、うるさいわけじゃないから文句も言えないんだけどさ

引っ越したほうがいいのかな

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コメント怖い
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こより様
ご感想ありがとうございます。
自分の話を怖いと言っていただけるのは何よりも嬉しいものですね。
これからも精進致します。

あんみつ姫様
初めまして、末人と申します。
私の拙作にコメント並びに「怖い」を頂き、ありがとうございます。
近くて遠い存在、隣人への恐怖は今も昔も変わらないのかもしれませんね。
あんみつ姫様もご自愛下さいませ。

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読んでくださった方、ありがとうございます。

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