中編4
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転校生

僕の名前はカイ。

ごく普通の何処にでもいる高校生だ。

いや、普通では無いかもしれない。

僕はとりあえず何事にも興味を示さない。

今、流行りの音楽やお笑い芸人。

それこそ、女性の話しにも興味を示さず、友人達が盛り上がっている中、いつも一人空を眺めている。

そんな人間だ。

かといって、仲間外れにされている訳でも無ければ友達がいない訳でも無い。

とにかく僕は、ありきたりな毎日を、ただありきたりに過ごせればそれでいい。

まぁ、言うなれば冷めた人間だ。

今日も何時もの様に、ありきたりな時間が過ぎ、下校前のHRの時間がやって来た。

何時もの様に教壇に立ち、何時もの様に話をする先生。

こんなありきたりな退屈とさえ思える毎日が、僕にとっては丁度良かった。

だが…。

僕のそんな期待を裏切り、今日のHRはいつもと少し違っていた。

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「よし!

ほなお前ら明日、プリントの提出忘れんなよ〜。」

先生の言葉にHR終了を察知した生徒達が帰り支度を始める。

「お〜い!

まだやて。

最後に大事な話しあるし、それ終わったら解散や。」

先生にそう言われ、席を立っていた数人の生徒が再び席につく。

「明日、このクラスに転校生が来ます。」

この転校生というフレ―ズは学生のテンションを一気に上げる魔法の言葉だと僕は思う。

急に騒がしくなる教室。

「先生!転校生て女の子??」

「えぇ〜!!

絶対、男子がいいよねぇ〜。」

クラス中がまだ見ぬ転校生の話題で盛り上がる。

まぁ、僕はそんな中でも流れ行く雲を眺めていたけど。

「ちょっと静かにせぇて!」

テンションの上がりきった生徒達を先生が抑える。

「先言うとくわ、転校生は男や。」

先生の言葉に男子生徒は溜め息をつき、女子生徒は色めきだっていた。

「まぁ、男でも女でもどっちでもええねんけど、転校生が来るにあたってお前らに一つ守って貰いたい事があんねん。

ええか?

よぉ聞けよ?」

転校生が来るにあたっての守り事??

この余りにも不可解な先生の発言に、流石の僕も耳を傾けた。

「転校生な…ちょっと変わっとんねん。

いや、性格がとかちゃうで?

その…容姿がな。

で、お前らに守って貰いたいんは、その容姿について絶対に触れるなって事や。

あっ!それについての質問、反論は一切受付へんからな!

ほな解散!」

一方的に話を切り上げ、教室を後にする先生。

いつもならすぐに誰もいなくなる筈が、今日に限っては誰一人帰ろうとはせず、先生の不可解な発言について議論を続ける。

そんなクラスメイトを横目に僕は一人教室を後にする。

まだ見た事も無い転校生に、何をそんな語る事あんねん…。

僕はそんな事を考えながら、学校を後にした。

そして次の日。

今日は朝から教室内がざわついている。

皆、余程転校生の事が気になるのだろう。

特に女子達はいつもに増して目力が半端ない…。

教室のあちこちから聞こえて来る転校生の話題。

もうじき会えるっちゅうねん!

いい加減、嫌気が差して来た僕が心の中でツッコミを入れた時、ガラガラと教室の扉が開かれた。

一瞬で静まり返る教室内。

そして扉一点へと集中する皆の視線。

「はい、お早うさん!」

教室へと入って来る、見慣れた中年男性。

だが、彼には誰一人見向きもしない。

クラス中の視線は、彼の次に訪れるであろう人物に集中していた。

「おぉ〜!!」

「わぁ〜!!」

教室に響き渡る歓声。

その声につられ、窓の外を眺めていた僕は教壇へと目をやる。

?!

僕が目をやったその先に転校生はいた。

が、外国人か??

僕は彼を一目見てそう思った。

教室に備え付けられた蛍光灯の灯りに照らされ、キラキラと輝きを見せる銀髪。

透き通る様な白い肌にはっきりとした顔立ち。

そして、黙ってクラスメイト達を見つめる、青く染まった瞳。

言われなければ女性と見間違う程の美少年。

既にクラス中の女子達の目は彼に釘付けになっていた。

「え〜彼が今日からこのクラスに転校生して来た、神楽 来夢君や。」

日本人なのか?!

先生は彼を、かぐら らいむと言った。

てっきり外国人だと思っていたクラスメイト達がまたざわつき始めた。

「静かにせぇ!

ほな、来夢君?

自己紹介しよか?」

先生にそう促され、転校生は静かに頷いた。

「今日からこのクラスでお世話になります。

神楽 来夢です。

宜しくお願いします。」

簡単な自己紹介を済ませた来夢。

その話し方から、やっぱり彼が日本人である事が感じとれた。

だが、同じ日本人でここまで容姿に差が出来る物か?

クラスメイト達もそう感じたのだろう。

隣席に座る友人と彼を見比べ、その違いに腹を抱えて笑っているヤツもいる。

女子達は目をハ―ト型にして彼を見つめている。

はぁ〜…。

休み時間、うるさなりそうやなぁ…。

僕は騒がしくなるであろう休み時間を考え、少し憂鬱になっていた。

「ほな来夢君。

え〜と、あそこ!

カイの横の席に座ろか。」

?!

再び窓の外を見ていた僕は、先生の言葉に高速で首を動かし、教壇を見た。

俺の隣?!

嘘やろ…。

勘弁してくれよオッサン!

めっちゃ邪魔くさいやん…。

僕のありきたりな毎日に突如侵入して来た非日常。

この時の僕にとっては迷惑以外の何者でも無かった。

そう…。

あの時までは…。

Concrete
コメント怖い
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溜まった作品をどんどん読み進めたいのでコメント端折ってますが、これだけは言わせて。
面白い!ぐいぐい引っ張られます。次回も楽しみ。

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セレ―ノ様。

また被せて来た?!Σ(゜Д゜)

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一ノ瀬様。

大丈夫です!
貴方ならすぐに寝れる!(笑)

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ふたば様。

いや…暇潰し程度で結構ですよ?
まったりと読んで頂ければ(^^;

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むぅ様。

毎日はちょっと…(^^;
それに、毎日読む程の物でも…。

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はと様。

また調子に乗りやがって!と叱って頂いて結構です!
調子に乗っちゃってますから(笑)

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物語の書き方がすっごい好きです…!

続きがきになって
夜も眠れない感じがします꜀(.௰. ꜆)꜄”

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月舟様。

またアホな事を!と思ってらっしゃいます?(笑)
否定は致しませんぞ!

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珍味様。

毎回お読み頂いて本当にありがとうございますm(__)m

この先、何が起こるのやら…私にも検討がつきません(^^;

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