中編6
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同居人

僕には少し変わった同居人がいる。

同居人達と言った方がいいのかな?

幼少の頃から人に見えないモノが見えていた僕は、始めはそんな彼等に怯えもしたし、他の子達にも見えているものと思って必死に訴え掛けたりもした。

でも、すぐに他の子達には見えていないと分かったんだ。

それ以降、僕は誰にも彼等の話をする事は無かった。

不思議な物でね?僕が社会人になる頃には、彼等に対しての恐怖心が一切無くなったんだよ。

慣れ?なのかな?

手足があらぬ方向にネジ曲がった男性を見ても、頭蓋骨が陥没し、そこから脳ミソを垂れ流している老婆を見ても僕は何も感じなくなっていたんだ。

それ処か、僕はそんな彼等に話し掛けたりもする。

ん〜…異常って言われればそうかも知れないけど、僕にとっては彼等も生きている人間と特に変わりは無いんだよ。

まぁ、この感覚は誰にも理解出来ないだろうけどね(笑)

え?話し掛けたりして危険は無いかって?

ん〜…。そこも他の人とは感覚が違うからねぇ…。

特に危害を加えられる事は無いんだけど、強いて言えば、話し掛けた彼等は憑いて来る。

だから、僕には同居人が沢山いるんだよ(笑)

でも気にはならないよ?

何て言うのかなぁ?

彼等は自分の存在をアピールしてくる?って言ったら良いのかな?

ただそれだけなんだよ。

まぁ、それが一般的に言う心霊現象なんだけどね。

彼等はあの手この手でアピールしてくるんだよ?

え?どんな事をしてくるかだって?

仕事から帰って玄関の扉を開けると目の前に血だらけの女性。

風呂で頭を洗っている時、不意に上を見ると、天井に貼り付く老婆。

冷蔵庫を開けようと取っ手に手を伸ばすと、取っ手に重なる様に浮かび上がって来る目の無い男性。

まぁ、この程度だよ(笑)

あっ!後あれも良くあるね。

君達も良く耳にすると思うけど、定番中の定番。

深夜に突然目が覚めると、仰向けに寝る自分の足元から這い上がって来る女性。

どう?良く聞くだろ?

金縛りで動けない上に、足元から迫り来る女性。

君達にとっては恐怖以外の何でも無いんだろうね(笑)

でもね?這い上がっては来るんだけど、それだけ何だよ?

彼等は別に何もしないんだ。

足元から徐々に這い上がり、胸の辺りまで来た時に、それまで下を向いていた顔を上げるんだ。

無表情のモノ、笑っているモノ、僕の場合はその時に這い上がって来る同居人によって様々なんだけど、最後は顔を上げてこっちを見るだけなんだよ。

え?それで十分怖いって?

そうかなぁ??

僕はいつもそんな彼等の顔をじっと見るんだよ。

何故かって?

だって意味が分からないだろ?

深夜にわざわざ起こしておいて、何がしたいんだ?って思わないかい?(笑)

でね。僕がそうすると決まって彼等は何もせず消えて行くんだよ。

それもちょっと恥ずかしそうにね(笑)

おかしいだろ?(笑)

幽霊が恥ずかしそうにしてるんだよ?(笑)

って、まぁ前置きが長くなってしまったけど、僕にはそんな同居人達が沢山いるんだよ。

僕は彼等に対して、一切の恐怖を感じない。

…………………………。

でもね…?

そんな僕がこの間、恐怖を感じたんだよ。

叫び声を上げる程にね…。

本当につい最近の話なんだけどね。

いつもの様に仕事を終えて帰宅したんだ。

でも、何かおかしい…。

先にも言った様に、いつもなら玄関の時点で同居人の誰かがアピールしてくるんだよ。

でもその日は誰も何もしてこない。

それ処か、部屋に入っても誰の姿も無いんだよ。

不思議だろ?

まぁ、だからと言って彼等を探したりもせずに、僕はいつもの様にリビングで服を脱いでたんだ。

そこでようやく、違和感に気付いた。

リビングには、ベランダに通じる窓があってね。

カ―テンを閉じてあるんだけど、そこから視線を感じるんだよ。

それで僕は彼等がそこにいると思ってね?カ―テンを開けたんだよ。

いやぁ驚いたよ(笑)

ベランダと言っても洗濯物を干せる程度の小さな物だよ?

そこに彼等がズラリと並んでるんだよ。

男性も女性も老婆も子供も。

九体だよ?九体の幽霊が狭いベランダでギュウギュウ詰めで僕を見ているんだ。

僕は思わず、そんな所で何してんだ?って聞いてしまったよ(笑)

でもね?何かがおかしい…。

どう表現すればいいのか分からないけど、彼等の顔色がね?青いんだよ。

勿論、彼等はこの世のモノじゃないからね。

顔色が青くて当然何だろうけど、なんか…こう…いつもと違うんだよ。

まるで何かに怯える様な…その何かにベランダへ追いやられた様な…。

おかしいなぁ?って僕が思っているとね?

ガン!って頭に衝撃が走ったんだよ。

そりゃ痛かったよ。

思わず僕はその場に倒れ込んでしまったんだ。

いや、気を失ってはいなかったよ?

ただ、意識は朦朧として、視界は霞んで見えていたね。

何が起こったのか勿論、僕には理解出来なかったよ。

とにかく、頭が痛かったなぁ。

それでね?

声を出す事も体を動かす事も出来ずに、ただ床の上に倒れていた僕の襟首を誰かが不意に掴んだんだ。

そしてその誰かは僕をそのまま引き摺りだしたんだ。

一度体を起こす様に持ち上げられて、そのまま後ろ向きに僕を引き摺って行く誰か…。

意識はあったけど、体に力が入らないから抵抗も出来ない。

僕はただ、引き摺られるしか無かった。

リビングを出て、廊下を引き摺られ、遂には玄関から外へと連れ出される僕。

そしてその誰かは僕を引き摺ったまま非常階段を昇り始めたんだ。

裸足だったからね。

階段を引き摺られる度に、僕の踵が角に当たるんだよ。

地面に擦れて血が流れている踵に規則正しく衝撃が加えられるんだよ?

痛いなんてモンじゃ無かったよ。

でね?ここからが本当に不思議なんだけど、結局僕はそのまま屋上まで引き摺られて行ったんだよ。

で、屋上から放り投げられた。

え?大丈夫だったのか?だって??

今ここでこうして話してるんだから、大丈夫だったんだろうね(笑)

話を戻すよ?

訳も分からず、屋上から放り投げられた僕は、タイミングの悪い事にここで意識がはっきりとしてしまうんだ。

恐怖だったよ?

放り投げられた時は、朦朧としていたから周りの景色もそこまではっきりとはしていなかった。

でもはっきりと意識を取り戻した今は違う…。

耳に届く風の音も、もの凄い早さで近付いてくる地面も、全てが鮮明に伝わってくる。

僕は叫んだよ。

こんなに出るのか?って位大声でね。

でも、もう遅かった。

グワシャ?ゴリュ?どう表現していいか分からないけど、今までに聞いた事の無い音を立てて、僕の体は地面に激突したんだよ。

痛みは無かったよ?

体中に微弱な電流が流れた感じかな?

自分の体がビクビクと痙攣しているのが伝わって来たからね。

そして、地面へと川の様に流れて行く自分の血を眺めながら僕は意識を失った。

どうだい?怖くないかい?

え?気持ちは悪いけど、同居人の方が怖いって?

どうせ夢だろう?だって?

やっぱりそう思うよね。

僕も始めはそうだったからね。

でも…夢だとはどうしても思えない。

その後、僕は目を覚ましたんだ。

あぁ、屋上から落ちて意識を失った後ね。

そこは、自分の部屋のベッドの上…。

じゃ無かった。

そこはマンションの前。

つまり僕が落ちた場所だったんだ。

それも落ちた体制のままで…。

これを夢と言い切れるかい?

僕はどうしてもそうは思えないんだ。

不思議に思いながらも自分の部屋に戻った時、同居人達はまだ、ベランダで何かに怯えていたからね。

この世にはね?

僕達なんかじゃ想像も付かないモノが存在するんだよ。

それこそ、幽霊でさえも怯える程のモノがね。

その日の内に僕は引っ越したよ(笑)

彼はそう言って笑った。

Concrete
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むぅ様。

何となく…な〜んとなくですよ。
モヤっとボ―ル、あと一つ頂きたい!

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