短編2
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呪詛の言葉

 姉が、旅行に行くからと、留守番を頼まれた。

 彼氏と同棲中のマンションには、趣味で熱帯魚を飼っている。そのお世話のため、2日間泊まりで留守番することになった。

 

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 2日目の夜、ベッドに入り、うとうとしていると、

 「プルルルル、プルルルル」と電話が鳴った。時計を見ると零時に近い。 

 自分の家ではないので、受話器を取るか迷ったがこの時間だ、何か緊急の連絡だったら大変だと思い、電話にでた。

 受話器を耳にあてると直ぐに声が聞こえる。こちらが話す前から何か喋っているようだ。

 「ねし......ぐ......すま......い」

 「はい? あの、どちら様でしょう?」

 「ねし......ぐ......すま......い」

 老婆のしわがれた声で繰り返す。

 何度もこちらから話しかけるが、相手は同じ言葉を繰り返すだけ、いたずらだろうと受話器を置きベッドに戻った。

 

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 翌日、姉と彼氏が帰ってきた。

 昨夜のいたずら電話の話をすると、ふたりは顔を見合わせ、そんな筈はないという。

 家の電話は、ほとんど使わないので、解約済みらしい。

 姉は、「ほら」と、抜けたモジュラージャックをぷらぷらとさせた。

 そんな訳はないと、食い下がる。

 納得いかない私を見かねて姉が、モジュラージャックを差し込み、電話を通電させた。

 電話に録音機能が付いているらしく、通話になってから30秒は自動で録音されるらしい。

 ボタンを押すと、

 「×月×日pm.11:56分デス」

 昨夜の通話が録音されている。

 姉と彼氏は顔を見合わせ、どういうことだ? と、不思議そうに音声に耳をやる。

 老婆の声で何度も繰り返す。

 「ねし......ぐす......ま......い」

 10秒程聞いた時だろうか、彼氏が口を開いた。

 

 「うわっ、気持ち悪いな......」と、顔をしかめて続ける。

 

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 「反対から聞くんだよ、これ」

 

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