中編3
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マバタキ

大学の都合で県外へ引っ越した友人から、久しぶりに遊びにこいとの誘いがあった。

郊外にあるせいか、安い家賃の割には比較的綺麗なマンションで、ほかの友人も含めた俺たち四人は遅くなるまでそこで盛り上がり、ありがちな女の話や、将来の夢などについて語り合った。

そんな中でふと話題が途切れた一瞬に、家主である友人がこんな話をした。

「おまえらは信じねえだろうけど、俺こないだ、信号がマバタキするのを見ちまったんだ」

詳しく話を聞いてみれば、友人が横断歩道の信号待ちをしていると、突然対面の赤信号がゆっくりとマバタキをしたという。

そんなのただの点滅だろうとか、作り話だろうとか好き好きに彼を冷かしたが、当の本人は絶対にそんな事はないと俺たちの意見を突っぱねる。

しかも、この町では割とそういう目撃例や噂があり、マバタキが目撃された交差点では近いうちに何かしらの事故が起こるだなんて補足も付け足してきたもんだから、暇な俺たちは歩いてものの数分の距離にあるその信号機を、酒類の買い出しも兼ねて今から見に行こうかという流れになった。

ほろ酔いの四人がしばらく並んで信号機をながめていたけれど、当たり前だが信号は至って普通で、やはりただの点滅をマバタキと見間違えたのだろうという結論になり、俺たちは近くのコンビニへ寄ってマンションに引き返した。

それからは俺たちの中であの信号機の話が出る事はなかったけれど、俺はその後に交わした話は一切覚えていない。

俺も見てしまったのだ。

コンビニに寄った帰り道、ふと見上げた交差点の赤信号が、上から下へ、ゆっくりとまるでマバタキをするかのように瞼を閉じた。

そのとき気づいている人は俺以外にいなかったみたいだし、俺の見たマバタキもその一回だけだったから、たぶん俺の勘違いだろうという事にして誰にも言わなかったけれど、地元に帰ってからもあの異様な光景がどうも頭から離れなくて、数日後に友人に電話でそれとなくあの信号機の話をふってみた。

すると友人は待ってましたとばかりに、一昨日、あの信号機のある交差点で死者さえ出なかったものの、バスと乗用車の交通事故があったのだと教えてくれた。

友人は信号のマバタキは事故を予兆している怪現象だなんてえらく興奮していたけれど、マバタキを実際に目撃した俺はそうは思わない。

友人が住んでいる区域には昔、何かの処刑場があったという話は知っていたが、あの悪意に満ち満ちた目は、どちらかと言えば事故を予兆しているというよりも、まるでこれから起こる事故を誘発しているようにとしか思えないのだ。

もちろん軽々しく昔の因縁とそれとを結びつけてしまうのは違うかもしれないが、少なくとも俺が今後あの町へ行く事も、ましてや車で通りかかる事など絶対にないだろう。

もしかするとアレは、今日もあの町の至る場所に設置されている信号機をスイスイと移動しながら、あのマバタキを繰り返しているのかも知れない。

Concrete
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猫次郎様、blue様、ふたば様、コメントべりべりサンクスです。

このお話はふと、仕事帰りの信号待ちで思いついたのですが、話の筋書きを考えながら運転していたせいか信号無視でお巡りさんに切符を切られてしまいました。せっかくゴールドだったのに…ひ…

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