中編5
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猫のお医者さん

咲「さて、記念すべき一話目は私から」

舞「ちょっと待て。お前に先に話されて話のハードル上げられても困るし、あたしからでいいか?」

咲「あら珍しい。そういう事なら聞かせてもらおうじゃないの。」

舞「まぁな。これは‥」

この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人とも女子高校生である。

いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓

少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞

オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。 

この物語は、その3人による会話劇である。

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舞「これはある高校生の兄弟が廃墟に肝試しにいった時の話だ。元々その廃墟は個人が経営する病院だったんだけど、経営者が夜逃げしたかなんかで道具や設備がそのまんまになってたんだよ。誰も管理せずにな。一応そこそこ大きな病院だったから、夜は絶好の肝試しスポットになっててな。まぁ幽霊がでるだのなんだの、おきまりの噂が広がって。

んで、この二人は幽霊を録画してやる!とか息巻いてカメラを持って忍び込んだわけだ。いざ侵入して、二手に別れてそれぞれカメラを持って幽霊を探してるのはいいんだけど、弟の方はちっとも幽霊なんか出てきやしねぇ。何か動いたと思ったら野良猫だ。歩き回るのもいいかげん疲れて、もう帰りたいなとか思ってた訳よ。そしたら、遠くの方で話し声、正確に言えば独り言みたいなのが聞こえてきてな。ついに幽霊か?なんて考えながら、こっそりその声がする部屋に近づいてカメラを構えて、中を覗いたわけだ。」

楓「幽霊が呟いてたの?」

舞「いや、なんてことはねぇ。ちょこんって座ってる黒猫に向かって兄が独り言呟いてたんだ。はい、よろしくお願いします。ってな。」

楓「何それw可愛い。」

咲「‥」

舞「弟はホッとしたのと同時にがっかりして、「兄ちゃんなにしてんの?」って声かけたわけよ。そしたら、猫は急にどっかいっちまってな。周りに結構他の猫もいたみたいだ。まぁ人が来たから当たり前だろうけど。そんで兄さんのほうも驚いたみたいで、「お前そこにいたのか。あれ‥猫は?」なんて言うんだ。まぁその後は幽霊に出会うこともなく、普通に家に帰った。次の日に、いきなりその兄さんが「俺ちょっと医者行ってくるわ。」なんて言いはじめて。健康が取り柄の兄がなんてこと言うんだなんて驚いて話を聞くと、どうやらあの廃墟で猫と会話したらしい。

兄「部屋に入ったら猫がいて、その猫が、「患者さんですか。どうぞどうぞ。」なんて言い始めたんだよ。こりゃ面白いって思ってカメラを構えて、そうです、なんて適当に受け答えしてたら、「うーん。これは胃に悪いものが出来てるね。手術しなきゃ駄目だよ。手術しましょう。そこに横になって。」って言われたんだよ。そしたら、弟がいきなり入ってきて、猫はどっかいっちまった。それからどうも不安でな。だから一回医者に見てもらいたいんだって。」」

楓「なんか可愛い。猫がしゃべるなんて。お医者さんのまねかな?」

咲「‥」

舞「んで、実際医者にいったら本当に胃に悪い出来物が出来てて、まぁ小さかったから大した事はなかったんだけど、医者曰くほっといたら悪くなったでしょうって。早期発見出来て対処も簡単だったらしい。兄さんの方は猫に感謝して、今度お礼にキャットフード持って廃墟行くか、なんて言ってるっていう話。まぁ不思議な猫もいるもんだ。因みに兄が録画したビデオには、目の前の無言の猫に独り言を呟く兄の姿とその猫の回りにうろつく猫の姿しか映ってなかった。あんまり怖くないだろうけど、最初はこんなもんだろ?」

楓「すごいね。猫のおかげで助かったんだ。あんまり怖くなかったけど。猫がかわいいからわたしはそれで満足!」

咲「‥」

舞「どうした咲。さっきから黙りこくってよ。あたしの話だから、あんまり怖くないのはしょうがねえだろ?」

咲「いや、そうじゃなくて。ちょっと考えてたの。まぁ喋る猫はかわいいかもしれないけど、そんな廃墟に猫が集まるものかしらね?」

舞「まぁ廃墟によく野良猫とかいるから、それはそんなに珍しくはないんじゃね?」 

咲「それに猫の発声器官は人の声は出せないって知ってる?そんな声をはっきり聞き取れるのはおかしいわ?」

舞「お前は相変わらず夢がねえなぁ。多分夢でもみたんじゃねえの?猫が兄さんを助けてくれたんだよ。」

咲「本当にそれならいいのだけれど。」 

楓「?どういうこと?」

咲「猫がお兄さんに言った言葉、確か、「手術しましょう。横になって。」じゃなかったかしら?その猫の言う「手術」って、本当に私達が考えてる手術で合ってるのかしらね?更に言うならば、「横になって」というのはその場でなにかをしようとしていた、ということじゃない?ろくに動く機材もない。勿論電気も水道もない。刃物だって薬だって録なものが無いはずよ。

そんな状態で、お兄さんを取り囲んだ猫達は一体何をしようとしていたのかしら。お兄さんが本当に感謝するべきなのは、そこから助けてくれた弟さんだと思うけれど。以上よ。」

舞「‥何であたしの話を変えてくるんだよ。しかもそんなオチをくっ付けやがってよ。」  

楓「猫ちゃん‥」

咲「悪いわね。でもあたしはこういう解釈の方が好きだわ。」

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咲「舞、中々の話だったわよ。次も期待してるわ。」

舞「うるせえ。どの口がいいやがんだ。決めた。次はお前が話持ってこい。覚えとけよ。(ちっくしょう。この話猫が可愛いくてそんなに怖くないからお気に入りだったのによ)」

楓「まぁまぁ舞ちゃん。機嫌なおしてよ。お腹減ったし、ご飯でも食べにいこうよ。」

咲「私も行くわ。私の話の前に空気を変えておきたいしね。あ、食べたいものは舞が決めていいわよ。」

舞「めちゃくちゃ辛い鍋食べてえな」

咲「ちょっと、私辛いものにが」

舞「うるせえ。これでチャラだ。」

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感想

今回の話はちょっと猫のイメージかわったなぁ‥そういえば、この学校で猫みたことないなぁ。昼間は人がいるからかな。あ、そういえば結局悪態つきながら鍋を食べてる二人を見ると、なんだかんだ二人は仲がいいんだなぁって思った。明日はどんな話がきけるんだろう。わたしも話考えないと。

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