短編2
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影ってのは光が物にあたればどこにでもできますよねぇ。普段気にした事なんて無いのですけど。

昔の本とか文献を漁っているとね、影にまつわる面白い記述が結構あるんですよ。

とある国では「影を売った男」っていう伝説がありまして。本当にあった事かどうかは知りませんが。

男は一時的な大金を得たものの結局、影が無いことを理由に人間社会じゃ生きられなくなって、森に潜んで仙人みたいな生活をしたそうです。え、影をどうやって売るのかですって?

じゅうたんみたいにクルクル丸めてしまうんですよ。その発想が面白いですよね。

牛鬼、って知ってますか?これは妖怪辞典を調べればすぐ出てくるようなメジャーな妖怪です。私はあまり人様の書いた物を引用したくないんですがね。影をなめて影ごと人の命を取る、恐ろしい妖怪です。田舎の海岸、山に出没するみたいで‥会わない事を願いましょう。

影法師って言葉がありますよね。なんで法師なんでしょうか。遠い昔にね。坊さまがお侍に切り殺されそうになって。まあ坊さまはそこで殺されてしまうんですけど、影だけが逃げていった‥こんな事もあるんですよ。

俗説では死期が近くなった、もしくは生気がすいとられてしまった人間は、影が薄くなったり消える事があるとか‥やっぱり影は人間の魂、みたいな物を反映しているのでしょうかねぇ。影を踏まれた女の子が「痛い!」と叫んだ‥なんてちょっとした怪談みたいになりませんか?

さて。なぜ私がこんな話をつらつら書いてきたのか。そのわけを話しましょうかね。さっき部屋で一人で作業をしていたのですが、突然私の影がなくなったんですよ。それからどうやっても

私の影だけ出来なくって。机とか本の影はちゃんと映るのにねぇ。なんだか眠くなってきたから寝ますけど、私はちゃんと目を覚ますのでしょうか。

あぁ、真っ黒な人達が笑っています。顔も真っ黒なのになぜ笑っているのがわかるのでしょうか。

やだねぇ。おおこわ。

Concrete
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