中編3
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御神竹の祟

神社の中には敷地内の大きな木を御神木として祀っているところがありますよね。

私の地元の神社ではなぜか竹が御神木ならぬ御神竹として大切にされておりました。

竹に詳しくない方も多いと思うので補足しますと竹という植物はたくさん生えているように見えても地下で根が全て繋がっています。なので竹林の中の一本一本の竹が全て一つの竹なのです。

また1本の竹の寿命は10〜20年程度です。

そのためこの御神竹は特定の竹が祀られているのではなく、その一帯の竹林が全て御神竹として扱われているのです。

さてこの御神竹は神社本殿の裏側、神主さんのご自宅に隣接しています。

竹は地下の根を横に横に広げて竹林を広げようとします。

なので放置しておくとドンドン広がってしまうので当然神社は竹林の周囲をコンクリで固めて根がこの範囲から広がらないようにしていました。

しかし自然の力はすごいものでどこか老朽化して弱った部分を突破したのでしょうか、ある年から神主さんの自宅の庭にまで竹が生えてくるようになってしまったのです。

流石に御神竹といえども放置はできないということで駆除することになったのですが神主の奥さんがこの機会に竹林の面積を削り、できたスペースに自宅を増築しましょうと強く主張したそうです。

奥さんは地元の人ではなくそれほどこの竹林に愛着がなく、むしろ日当たりが悪くなるし、虫も沸くということでどちらかというと疎ましく思っていたそうです。

また息子の縁談が決まっており今のままでは自宅が手狭になるので増築は必要なのだと奥さんに押し切られてしまい竹林の三分の一ほどを削ることにしたそうです。

その後竹林の一部駆除と自宅の増築の工事、さらに晴れて息子の結納も終わったころです。

ある夜神主さんは地元の集まりに参加して大層お酒を飲まれたそうです。

かなり酩酊している様子の神主さんを地元の人たちは家まで送ろうと言いましたが歩いて帰れると固辞しフラフラと帰っていったそうです。

何時になっても帰ってこない神主さんに奥さんも心配になり、集まりの関係者に連絡しますが数時間前には家に帰ったはずですけど・・・と誰も神主さんの行方がわからない。

ということで急遽会場から自宅までの間を地元の人たちで捜索しましたが全く見つかりません。

夜通し捜索は続きましたが日が登ってきたため各自一度家に帰って警察を呼ぶことも検討しようということになりました。

奥さんも疲れ果てた状態で家に帰りましたがふと竹林の方に目をやるとなんと竹林の中で神主さんが座り込んでいるのです。

そんなとこで何をしてるの?と話しかけながら近づきますが何かがおかしい。

神主さんは焦点の合わない様子ですし、また座っているその体勢もなんだか違和感があるのです。

神主さんのそばまで来て顔を覗き込むと、だらんと開いた口から吐瀉物が垂れており、いくら話しかけても反応はありませんでした。

神主さんはすでに亡くなっていました。

その後警察の調査の結果ですが、前後不覚になった神主さんは帰宅するつもりが誤って竹林に入ってしまい腰ほどの背丈の竹に身を預ける形で寝てしまった。

この季節の竹の成長は凄まじく1日で1m近く竹が伸びることもあります。

運悪く竹の先端がネクタイの内側に入り込んでしまったために寝ている神主さんの腰が浮くほどまでにネクタイで吊り上げるように神主さんの体を持ち上げてしまった。と結論付けられました。

警察としてはただの変死として処理するのでしょうが私としては祟りのような何かを感じられずにはいられません。

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