12月の怖話アワード受賞作品に対するオカルト研究家・ホラー作家でもある山口敏太郎氏による動画書評が公開されました。上位8作品全てをレビューしています。

受賞作品の面白いポイントを詳しく解説してくれますので、レビューを見た後は、よりその作品を楽しめるようになります。また今後作品を作るにあたって、描写方法やストーリーをより盛り上げるための参考にもなりますので、是非ご覧ください。

▶ 怖い話グランプリ 12月書評 - YouTube

動画を文字に起こしました。

山口敏太郎です。怖話の12月の書評を行いたいと思います。今回もいろんな力作が入ってきました。設定やキャラのたっている作品が全体的に上位に入っている。キャラ立ちが作品の作り方において要になっていると僕は思います。

8位:ピエロ~再来~【後編】

投稿者:upa

キラークラウンという犯罪者がいるのですが、それを彷彿とさせる非常に不気味な展開で僕はこの作品好きですね。ピエロが笑っているのか、怒っているのかよくわからない。この不安定で不鮮明な表情の中にこそ恐怖がある。作り笑顔の中に悲しみと苦しみと怒りが全部含有されているような気がして。ピエロの不気味さというのは、その辺りにあるんですね。

後半は視点が変わるという工夫がされてると思います。映画でもピエロものというのは分野としてあるんです。ホラー映画の1分野としてね。それを上手く日本的に味付けをして、ジャパニーズホラーと混合させたというのがポイントで非常に上手い作品だと思いますね。

7位:LINE

投稿者:欲求不満

LINEをつかった怪談というのは、今後増えていくと思います。創作怪談、実体験含めて増えていくと思います。

デジタルに霊的なものが憑きやすいという考え方があります。明治時代には電話という新しい最先端のものに霊がでるんじゃないかといわれ、その霊と人間を見極めるために電話では「もしもし」と2回呼んだ。妖怪とか幽霊は反復言葉が言えませんからね。それで反復言葉が広がったという話があります。今回はLINEという新しいものが使われています。今まで、電話に幽霊が憑き、車が昭和初期に一般に広がり始め、幽霊タクシーみたいなものが昭和中期ぐらいからうまれてます。幽霊自動車は昭和初期からありましたね。そのうち、写メやプリクラに霊が写るとか、パソコンのネット回線を使って霊が移動してくるとか、死者がチャットをするとか、死神がブログをやるとかいろいろありました。

今回はLINEというところが非常に新しいですね。非常にこれいいんじゃないですかね。携帯で何か不気味なことが起こるというのをLINEに置き換えている。オチはネタバレになるので詳しく言えないのですが、どんでん返しがきいていて素敵な作品だと思います。

6位:空き家

投稿者:龍悟

空き家という怪談ものでは定番の舞台設定なのですけども、うまく処理をしていますね。なんでしょうね。霊が人間に化けるという霊的ないたずらをしてくるところがあるのですが、そこが見事ですね。死者と生きとし生けるものの違いがわからなくっているところが面白いですね。

あとね、子供の霊が返してほしかったものが一体なんだろうなと読んだ瞬間思いましたね。一体、子供はなにを返してもらいたかったのか。単純におもちゃだったのか、それとも・・・というところがミソですね。僕が読んだ感想だと子供が返してほしかったものは、生きていた楽しいあの時間だったのではないかなと。今回、七海ちゃんがおとなしいキャラだったかなという感じがあります。亮介くんは不謹慎なわがままなキャラで自己中で自分勝手なところが面白いキャラクターですね。今後の絡み方が非常に楽しみです。

5位:Twitter 1

投稿者:リン

Twitter怪談というのは最近増えてきています。LINEより先行していたので、もう増えつつあるんですね。島田秀平くんはTwitter怪談をもうテレビで語ったりしています。

本当にTwitterでやりとりしている人が生きているのか、否かこれはわからないですよね。ひょっとしたら死者かもしれないというデジタル上の恐怖、オンライン上の友人の恐怖というものがありますよね。デジタル上の恐怖とリアルな隣人の恐怖、よくわからないアパートやマンションの隣の人、匿名の隣人の恐怖というものがあると思います。この2つの恐怖ですね。デジタル上の恐怖と隣人の恐怖を上手く合体させたところに、この作品のよさがあります。これは今後が楽しみな作品です。

4位:雨と月

投稿者:あんみつ姫

怪談サイトが舞台になっている作品ですね。怖話とリンクするような感じで非常に怖いですね。投稿者が死んでいたという話です。

実は僕も似たような経験があってですね。昔、「妖怪王」というホームページをやっていたのですが、まだインターネット創世期ですね。15,6年前ですか。いろいろコメントをいただいていたのですけども、突然投稿がなくなった。どうしたのかなと思って、以前教えてもらっていたメアドに連絡したらご主人が、ご主人はアメリカ人だったのですけども英文で「彼女亡くなりましたよ」といただいて非常にショックを受けたことがあります。オンライン上だとオンライン上で交流した友達というのは亡くなってもリアリティがないというか、実感として湧かないところが逆にショックですよね。そういった怪談サイトでの友人との関わりというのは非常に興味深いテーマだったと思います。

一部霊能者に話を聞くと、2chとかああいう投稿サイトで死人が書き込みをしているという説があるみたいですね。そういう書き込みは緑色に見えるという説があるみたいです。

3位:真っ黒い兄

投稿者:野中ひゆ

きもい動画を友達と集まっている時に見たら死者とリンクしてしまったという話ですね。たしかに、YouTubeには妙な動画が多いです。はっきり言えるのは、大部分が創作というか商業的に作られた動画です。カメラ目線の幽霊はいませんし、ターンしたら幽霊がいたとか、画面の見切りにいるとかそういうのよくあるんですけども、そんないいタイミングや構図で幽霊はこないです。というかカメラの方を向いていないですしね。

ただし、一部の動画は本当に霊が写っているということがあるんですね。そういう動画は見るのは非常に要注意かもしれないですね。

2位:勘違い。

投稿者:まめのすけ。

これね短いんですけど、上手いですね。なんていうんでしょうね。みんな幽霊とか霊に目がいっている時に人間を押し込んでくるのが非常に上手いですね。幽霊より生きている人間が怖い。心霊スポットとか私も大学生のころ行ったりしたんですけども。幽霊を見ちゃうのも当然怖いんです。でも、それより怖いのは暴走族とかヤンキーがいたりすると怖かったりしますよね。やっぱり幽霊よりもリアルな人間が怖いというのが1つのポイントですね。

非常に短い文章で強烈に落としてきています。このあたり上手すぎますよね。この結末の後、詳しいことは読んでいただければいいんですけども、主人公がどうなったのかなというのが気になりますね。長ければ良いというものではないということを、まめのすけさんは見事に証明してくれていますね。

1位:定期点検

投稿者:さとる

これね床下という異界を上手く使っていますね。妖怪たちはですね、ガマ妖怪が床下に潜んだり、天井なめが天井からおりてきたり。天井とか床というのは異界につながっているという考え方があるんですね。それでね、出てくる霊が首が逆さまになっていて這ってくるって嫌ですね。霊の出方が不気味っていいですよ。ただ単にでてくのではなくて、人とは違う方向に手足がむいているとか。歩いてくるんじゃ怖くないんですよ。這ってくるから嫌なんですよ。しかも床下という密閉空間で逃げ道がない。逃げ道がない密閉空間でこういうものと鉢合わせをしてしまう恐怖というものがありますよね。

ただですね、苦言を呈することを許していただけたなら、もうちょっと短くしてもよかったのかなという印象はあります。ちょっと後半がだれちゃう感じがあります。ただ、さとるさんの定期点検非常に面白いですね。はたして何を点検しにいったのか。死者だったのか、それとも自分の心の闇だったのか意味深なタイトルに僕は考え込んでしまいましたね。

12月も非常に面白い作品が集まってきています。常連が上位を固めていますけども、新人の人も何人か入ってきていますので、是非ベスト8に入れるようにがんばってください。短くても面白い作品はあります。そして新人でも上に入って来れる可能性があります。是非みなさん頑張ってください。ということで12月の書評を終わらせていただきます。