【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

毎月お題の短編練習枠(🌱初心者歓迎)

皆さんこんにちは。
一向に文章が上達しないふたばです。(´・ω・`)
己の練習に他人を巻き込んでやろうと、掲示板を建ててみました。
以下、ここでのルールを説明します。( ᴗ ̫ ᴗ )

🌱ここは、短編の練習をする為の掲示板です。

🌱毎月単語を3つ、お題として出しますので、短編の「三題怪談」を募集します。

🌱「三題怪談」とは、1つのお話に決められた3つのお題のワードを入れなければならないという“縛り”で御座います。

🌱お話の長さの目安は、原稿用紙2枚分(800字)程度。
(あくまでも目安です、越えてしまってもヨシとします)
文字数カウント↓
https://phonypianist.sakura.ne.jp/convenienttool/strcount.html

🌱お題は毎月一日に更新されます。

🌱提出期限は毎月28日までとします。

🌱お話はいくつ投稿しても構いません。

🌱初心者大歓迎。実際私もほぼ読み専なので、文章が下手っぴです。軽い気持ちでご参加下さいませ。

🌱ここで投稿されたお話は、“ご自身で書かれたお話ならば”怖話の通常投稿にあげても構いません。
寧ろ、多くの方に見ていただけるよう、ここで試し書き、本投稿で完成品といったように使って下さいませ。
何なら他サイトでも投稿されている方は、そちらへあげるのも問題御座いません。
(※他の方の掲示板でも同じとは限らないので、その都度そこの掲示板主へご確認下さい)

🌱題名も付けて頂けると助かります(題名は文字数には含みません)。

🌱感想だけのご参加も大歓迎です。

🌱明らかな荒らしコメントは即刻削除致します。慈悲はありません。

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【11月お題】

「黄泉」「狐」「エレベーター」

投稿期間 11/1 0:00〜11/28 23:59

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ですがまぁ…建ててみたは良いものの、私が独りで短編を書き続ける寂しい場所になりそうな気がします……

そこで!ちょっとした特典代わりと言っては何ですが、ここで投稿されたお話は、私ふたばが朗読させて頂きます。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ
具体的に言うと、YouTubeにてその月に投稿されたお題の回答を、纏めとして朗読してアップします。
素人の朗読ですのでレベルは低いですが、創作意欲の糧になれれば幸いです。( ᴗ ̫ ᴗ )

※朗読されるのが嫌だという方は、お手数ですが文末に「※否朗読希望」とお書き下さいませ。

📚過去のお題アーカイブ
【9月お題】「彼岸」「ぶどう」「ネジ」
https://youtu.be/DlNJ68yKIfA
【10月お題】「十五夜(月のみでも可)」「図書館」「菊」
(※お題提供:あんみつ姫さん)
https://youtu.be/iA4spsQlSMA
【11月お題】「りんご」「子ども」「落ちる」
https://youtu.be/UMVBBrycZqU
【12月お題】「肖像画」「塩」「M」
(※お題提供:むぅさん)
https://youtu.be/MJmFrqUqvj0
【1月お題】 「ウシ」「晴れ」「厄」
https://youtu.be/N0tX10EOJoE
【2月お題】 「僧」「遊泳」「踊り」
Extraお題「怪僧」「宇宙遊泳」「阿波踊り」
(※お題提供:嗣人さん)
https://youtu.be/9j2vK_kKzhE
【3月お題】 「風」「証」「波」
https://youtu.be/zZoV2ce7poU
【4月お題】「サクラ」「窓辺」「人形」
https://youtu.be/kZzfmq8cNvM
【5月お題】「母」「鬱」「川」
https://youtu.be/RNqUE92-K2k
【6月お題】「クラゲ」「雨」「失踪」
https://youtu.be/BM0ataca42E
【7月お題】 「天の川」「亀裂」「写真」
https://youtu.be/RcXTXfzfKUk
【8月お題】「手を振る」「扉の向こう」「呼ばれる」
(※お題提供:ラグトさん)
https://youtu.be/omL3byV-eF0
【9月お題】「アリス」「スープ」「ハサミ」
https://youtu.be/w20FnRK-bQQ
【10月お題】「バラ」「時計」「たばこ」https://youtu.be/g_zxwy1H73I
【11月お題】「無人探査機 」「提灯鮟鱇 」「地引網 」
(※お題提供:ロビンⓂ︎さん)
【12月お題】
「プレゼント 」「空席」「信号 」
【1月お題】
「トラ」「階段」「玉」
【2月お題】
「ネコ 」「チョコレート」「箱」
【3月お題】
「ウメ 」「日記」「歌声」
【4月お題】
「駅 」「看板」「ポスト」
【5月お題】
「灯り」「公園」「針」
【6月お題】
「カッパ」「アジサイ」「自転車」
【7月お題】
「浜辺」「貝」「欄干」
【8月お題】
「ニセモノ」「蝋燭」「指」
【9月お題】
「帰り道」「ビン」「コスモス」
【10月お題】
「先生」「空腹」「筆」
【11月お題】
「橋」「ゾンビ」「忘れ物」
【12月お題】
「足音」「雪」「吐息」
【1月お題】
「ウサギ」「獣道」「目」
【2月お題】
「鬼」「酒」「身代わり」
【3月お題】
「都市伝説」「ピアノ」「ボタン」
【4月お題】
「絵本」「珈琲」「霞」
【5月お題】
「シミ」「地下」「蝿」
【6月お題】
「ダム」「悲鳴」「カエル」
【7月お題】
「夏草」「鏡」「プラネタリウム」
【8月お題】
「漂流」「雲」「ラムネ」
【9月お題】
「神隠し」「お米」「カバン」
【10月お題】
「皮」「警告」「お札」
【11月お題】
「1週間」「影」「オレンジ」
【12月お題】
「ケーキ」「透明」「チャイム」
【1月お題】
「 」「 」「 」
【2月お題】
「穴」「遅刻」「節」
【3月お題】
「足跡」「惑星」「メッセージ」
【4月お題】
「卵」「楽園」「嘘」
【5月お題】
「人混み」「電話」「花瓶」
【6月お題】
「墓場」「毒」「待つ」
【7月お題】
「海」「境界」「糸」
【8月お題】
「打ち上げ」「ライト」「未練」
【9月お題】
「借りもの」「バス停」「斜陽」
【10月お題】
「骨董」「ピエロ」「姉」

※追記:ここのお話を本投稿へもアップされる方へのお願い
🌱先に述べた通り、ここに書いたお話は一般の怖い話にも投稿して頂いて構いません(そもそも著作権は作者のものですから)
🌱一般投稿分は掲示板のレギュレーションから外れますので、文字数を気にせず加筆修正しても何も問題御座いません。
🌱ですが、投稿の際には題名に“三題怪談”の文字を付けないで下さい(同じ企画系列の題名が並ぶとうんざりしてしまうユーザーが現れ、揉める為。実際、過去にそういう事がありました)
🌱また、お題の単語をお話の解説欄に載せると、その単語に気を取られて純粋な短編として楽しめないので、読者的には解説欄には“掲示板より”とだけ書いて頂けると助かります。
(コメントにお題の単語をネタバレ防止で公開するのはアリです)
(ここのページのURLは貼っても貼らなくてもいいです)
🌱代わりに、投稿作のタグ欄に、お題の単語タグ3種と“毎月お題の短編練習枠”タグが知らぬ間に付いております。十中八九私ふたばが犯人なので怖がらないで下さい。

企画というより常設となるこの場所は、細く長く続けていきたいので、何卒、ご理解下さいませm(_ _)m

『かささぎとカラス』
私には、書きあぐねている話がある。
今から6年前にアップした「カラスの子」という実話怪談である。
このサイトの作家様たちが、自発的に立ち上げた イベント企画に参加したのがきっかけで書き始めた話だった。
当初、長編として「上・中・下」に分けてアップする予定だったが、未だ「序」にあたる「上」しかアップできていない。
それというのも、ある日を境に、私はこの話を全く書けなくなってしまったのである。
この話に取り組もうとすると、何故かきまって「かささぎ」の夢を見るのである。
いや、正確には、「かささぎのふりをしたカラス」の夢だ。
夢の内容とは、概(おおむ)ね こんなものだ。
バサバサバサ
羽音とともに、鼻先に微かな風圧が吹きかかる。
やがて、ねっとりと湿り気を帯びた女の声で、
「ねぇ、〇〇ちゃん。起きて。」
と「呼ばれる」のだ。
私は、白い壁に覆われた正方形の小部屋に寝ている。
その視線の先には、紫色の扉がある。
扉には、ドアノブはない。
つまり、こちら側からは、出られないというわけだ。
窓はなく、出るも入るも、その扉一枚だけ。

一羽、二羽、三羽… 
紫色の扉の向こうから、湧いて出てくるように、次々と鳥が入って来る。
「かささぎだから。大丈夫。」
「心配しないで。」
「か、さ、さ、ぎ だから。だいじょうぶ。」
同じ言葉を繰り返し、くるくると狭い部屋の天井すれすれに旋回している。
その声は、呪術のように身体にまとわりつき、私は、毎回耳を塞ぐ。
「かささぎ」について後日調べてみるも、夢に出てくる鳥は、姿形といい、明らかにカラスだ。古(いにしえ)より歌人たちに愛され、古歌に詠まれることで知られる「かささぎ」とは全く違う。

「かささぎ」を名乗る「カラス」は、扉の内と外を自在に行き来しては、私の鼻先や頭上を掠めるように飛び回る。
あまりのおぞましさに、左手で顔を覆い、右手で激しく「手を振る」私。
「お願い。あっち行って。かささぎなんて嘘。あなた方は、カラスなんでしょう。」
大声で叫ぶ、自分の声で目が覚める。

日によって若干の違いはあれど、夢の内容は、いつもこんな感じだと思ってくれればいい。
後味の悪い夢だが、せめて、年内に「中」だけでもアップしないことには、約束を交わした購読者様たちに、不誠実なことになってしまう。私は焦っていた。残っている有給を利用し、資料探しに奔走し、遂に、念願の「下」まで書き上げた。
応援してくれる目に見えないネット上の読者様たちに、私は、「やったー。遂に書き上げましたよ。」と両手を振り拳を挙げた。
その翌日、仕事からの帰宅途中、私は、一羽のカラスの死骸と遭遇した。
カラスは、体中の血が吸い取られたかのようにカラカラに乾燥し、仰向けにされたまま放置されていた。よく見ると、左の胸の心臓に当たる部分が500円玉くらいの楕円状にくり抜かれている。
「ひ、酷い。誰がこんな事を。」
嫌な予感がした。
私は、大急ぎで帰宅し、すぐにパソコンを開いた。
「そんなばかな。」
書いて、保存したはずの「中」「下」の原稿がファイルごと全て消失している。
「カラスの子」関連で、唯一残っているのは、以前使っていたパソコンから取り出した「上」の下書きだけである。途方に暮れる一方で、まぁ、「上」だけでも 残ってくれてよかったと思う。
夢判断でいえば、かささぎの夢は、「吉」 カラスは、真逆で「凶」なのだという。
カラスが、話しかけてくるなどは、最悪の事態に相当するらしかった。

ただ、最近、よく眠れない。
この話をアップしてから、
深夜、耳元で、バサバサと音がする。
うるさくて、よく眠れないのだ。
「ねぇ、最近、影が薄くなったんじゃない?」
と職場でよくからかわれる。
ZOOMでリモート会議するときも、
「あなただけ、画像がはっきり映らないんだけど。」
と苦情を言われるようになった。
私、大丈夫ですかね。

この話、一笑に付してくれて構わない。
いや、むしろ、そうしてほしいと願う。
気にするなと、言ってもらえないと。
今夜も眠れないのだ。

返信

「盆の舟」

旧盆の13日、私は生後6ヶ月の息子を車に乗せ、夫の実家へ向かうため東北自動車道を北上していました。
案の定、かなり渋滞しており、このまま ノロノロ運転を続けていては、着くのが深夜になってしまうかもしれない。そう思った私は、高速を降り、一般道を走ることにいたしました。
ナビの指示通り走行しているうちに、いつの間にか、海沿いの県道を走っていました。初めて通る道。初めて通る町でした。既に日は落ちて、海と空の区別がつかないほど真っ暗で、私はだんだん心細くなってきました。
緩いカーブに差し掛かった時、ふと沖に目をやると、一艘の屋形船が停泊しているのが見えました。
舟の周りには提灯が灯り、海面をゆらゆらと明るく照らしていました。
見たことのない幻想的な光景に、私は思わず車を止め、窓を開けました。
すぅと湿り気を帯びた生ぬるい風とともに、
「おーい。」という微かな声が聞こえてきました。
見ると、黒い人影のようなものが、こちらに向かって手を振っています。
「おーい。」
「…来いよぉ。」
黒い影は、身体をゆらし、こちらに向かって手招きしています。
私と息子、呼ばれているの?
全身が泡立つような怖気と悪寒に襲われ、私は大急ぎで窓を締めました。
その時、後部座席に寝ていた息子が、ギャァァァと声を上げ、激しく泣き出したのです。
振り返ると、海側の扉の向こうに、真っ黒い人影が数体立っているのが見えました。
私は、これ以上ないというくらいアクセルを吹かし、その場を走り去りました。どこをどう走ったのかよく覚えていません。
やっと、夫の実家にたどり着いた時、既に、深夜1時を回っておりました。玄関先では、夫と舅が心配そうに気をもみながら到着を待っていました。
「どうしたの。携帯は通じないし。何かあったんじゃないかって心配したよ。」
私は夫に、高速が渋滞して一般道に降り、気づいたら海沿いの県道に出たこと。沖に屋形船が停泊していたこと。船の中から人らしきものが手を振って声をかけてきたこと 慣れない道だったから、ナビの通りに走ってきたらこんな時間になってしまったことを涙ぐみながら告げました。
夫は、顔面蒼白になり、
「なんてこった。よりによって・・・。」
とつぶやくと、転がり込むように家の中に入り、
「来てくれ、ゆかりちゃんが、盆の船に魅入られた。」
と大声で叫びました。
「なんだって。」
仏間から姑の怒声が聞こえ、次に舅の
「今日は、盆だぞ。それも迎え盆だぞ。」
と叫ぶ声が奥から聞こえてきました。
「それで、船以外に何か見たのか?」と聞いてきましたので、
「黒い人影を見ました。それから、『おーい。こっちへ来ないか?』と誘うような声を聞きました。」
「子どもは、見てないのね。」
「わかりません。ただ、黒い人影が車のそばに来て、ドアを叩いて。」
言い終わるか終わらぬうちに、舅は、その場に崩れるように膝を付きました。
「なんてこった。なんてこった。」
舅と姑の嗚咽が辺りに響き渡りました。
「こうなったからには、こうしてはいられない。じゃあ、俺たち行くから。もう、間に合わないかもしれないけど。逃げる。ふたりとも、元気で暮らせよ。」
夫は、唇を噛み締め、舅と姑の肩を強く抱き、
今生の別れをするかのように、大粒の涙を流しました。
それから、呆然と立ちすくむ私を無理やり後部座席に押し込み、長距離ドライブに疲れて眠る息子をチャイルドシートに乗せた夫は、涙を拭いながら車を走らせました。
「いいか、これから、山を通って、都心に有る自分たちのアパートに一旦帰ることにする。君とT(息子の名前)は、海や川に絶対行くな。生涯行くな。訳は、後から話す。」
私と息子は、たった今着いたばかりの夫の実家を後にしました。
この日を最後に、私達は、夫の実家へ行っていません。
もちろん、海にも川にも行きません。

ちょうど、今から一年前。盆の入りの13日。義弟から夫の携帯に電話があり、舅と姑、ふたりが海で亡くなったことを知らされました。
「父さんと母さんは、盆の舟に乗ったんだ。君とT(息子)君の代わりにね。」
夫は、小さくつぶやいた後、その場でひとり合掌していました。

盆の舟とは、この世とあの世の渡し船のようなもので、お盆の入りの13日。海に日が落ちて辺りが暗くなる頃に、忽然と沖に現れ、死者を現世に送り返すのだそうです。それから、送り盆の16日の夜明け前に、戻ってきた死者を乗せ、再び、あの世に帰るのだと。
舟に乗る人の人数は、決まっていて、それより多くても少なくてもいけない。舟から出ていった人数と戻ってくる人数が合わないと、その舟は、永遠にあの世には行けず、この世を彷徨うことになる。
それは死者にとって、大罪なのだそうです。
ただ、中には、この世に未練を残し、どうしてもあの世に帰りたくない死者たちが、必ず毎年いる。その者たちは、盆中、海に近づくこの世の者たちの命を奪い、自分たちの身代わりに舟に乗せようとするのだそうです。
以前は、海難事故と見せかけて殺していたようですが、最近では、陸に上がることを覚えたのか、交通事故死を引き起こすようになったのだとか。あの黒い人影が立った場所は、夫の地元では有名な事故多発地帯なのだそうです。
地元の人は、お盆中、夜は、沖を見ないのだそうです。
舟に魅入られないように。
身代わリを立ててまでも、現世に未練がある者たちの手によって、
盆の舟は、今もどこかの海を漂っているとのことです。
2021年08月28日 23時47分
2021年08月28日 23時55分

2021年08月30日 18時19分

返信

@ふたば 様
すみません。私の掲示板の投稿作のうち2作に、あきらかに誤りと思われる箇所が数箇所ございます。
一度投稿した「カササギとからす」「盆の舟」です。内容の変更ではないので、一部、加筆削除訂正 要するに直してもよろしいでしょうか。
これでは、ふたば様が、朗読できません。
すみません。一旦、削除させていただき、新たに字句 誤字、脱字を訂正し、再度掲示板に本日中に出しますので、朗読いただくときには、こちらをお読みいただきたく存じます。
わがまま申し上げてすみません。

返信

わああ、締め切りを間違えていました。
昨日までだったんですね、確認不足で月末までだと勝手に勘違いしていました。

おまけに、お題あんまりうまく使えなかったかも、「呼ばれる」に関しては「コール」ということでかなりこじつけ感があります。
ああ、お題を出した本人が締め切りオーバーとか、本当に皆様申し訳ございません。

返信

『ナース・コール』

交通事故の怪我での入院中、夜中にトイレに行った時のこと。

便座に座ってしばらくするとトイレの照明が落ちた。どうやら動くものがないと自動で消灯する仕様のようで、面倒とは思いながらも私は頭の上で手を振って照明を再点灯させた。
初めに何だろうと思った。
個室の扉の隙間から向こう側に誰かが立っている。
扉の向こうから女性の呟き声が聞こえてきたが、人が入ってくる足音は聞こえなかったし、そもそも照明は反応していない。
私がその人影を普通じゃないと思ったのは身長が異常に高く、頭の上部が扉の上から見えるほどだったことだ。
驚いて固まっていると再び照明が落ちて暗闇の世界に戻った。
暗闇の中でも女の呟き声は響いてくる。このままだとここから出られない。震えながら悩んでいると壁に病院特有の呼出ボタンがあるのを見つけた。
女の影を見るのも怖かったので、照明がつかないようにそっと手を動かして呼出ボタンを押してみた。

暫く待ったが、外から何の反応もない。何回か押してみたが短い電子音が鳴るだけでトイレに看護師さんが来てくれる様子はない。
絶望的な状況のまま動けないでいると突然照明が点灯し、大丈夫ですかと扉の上から声をかけられた。
ようやく看護師さんが来てくれたのかと上を向くと目が飛び出した灰色の顔が上から覗き込んでいる。よく見るとその女は宙に浮かんでいるのだった。おそらく首吊り用のロープによって。
恐怖で呼吸が止まり、叫び声もあげずに動けないでいると、トイレの扉の鍵がガチャンと開く音がした。
ゆっくりと正面の扉は開いていく。
もう終わりだと思ったその時。

「面倒なんだよ、何回もコールしやがって、大人しく成仏しとけ!」

それはトイレの入り口近くから中に向かって放たれた声のようだった。
その女性の声が響くのと同時に扉は開け放たれた。
そこにいたのは首を吊って宙に浮かんでいるナース服に身を包んだ女性だったが、その姿を確認した瞬間に照明が落ちる。
暗闇の中で女の声は消え、照明が再点灯しても首吊りの看護師の姿は消えていた。

私が外に向かって、助けを求めると今度こそ若い女性の看護師さんが私のいる個室を覗きに来てくれた。
私が先ほど見た首吊りナースのことを尋ねると、気のせいですよと暗に釘を刺された。

「でも、彼女、多分トイレから出てこない私の容体を心配してくれたんです」

彼女の最後に放った大丈夫ですかという言葉のことを告げると、看護師さんは哀しそうな表情になった。

「……そんな彼女が、自分自身を殺してしまったのよ」

その言葉は自分のことこそ案じてほしかったという彼女の悔しさをにじませているようだった。

返信

@ふたば 様
ありがとうございます。
後から気が付きましたが、私、今月は2作ではなく、3作も駄作拙作を投稿してしまいました。
自作品にも関わらず、ろくに推敲もしないままアップするものですから、失念してしまうのですね。なんとも体たらくなことでございます。
特に三作目は、地元に伝わる話にも関わらず、ちっとも怖くない話になってしまい、地元の怪談を愛する人達に半殺しにされそうです。
字数は、もう数えるのも恐ろしくなり、一体朗読したら、何分になるのかすら考えておりませんでした。
もっともっと勉強しなくては。
職場の人達に、最近 影が薄くなったと言われ、リモート会議では、ちゃんと映らない、どうしたの?と言われます。
早いものでもう9月。
今度は、お彼岸を目処にがんばります。
よろしくお願いいたします。

返信

@あんみつ姫 さん
初めましての猫又さんもですが、2作も有難う御座います( ᴗ ̫ ᴗ )

朗読は長くて大変というより、今月は内容的にどう読めばいいのか悩むお話が多くて苦労しそうです… (;'∀')
しかしラグトさんのお陰で久しぶりに10作以上もお話が集まったので、頑張って朗読していきたいと思います(л・▽・)л💦

返信

御免なさい時間の都合上ここまでで投稿します。
2000文字超えてしまっておりますが許して下さいorz
後日ちゃんと書き直して本投稿します…

返信

『駐車場にて』

Aさんから聞いた話。
Aさんは突発的に車で遠出をするのが趣味の人で、その日もふらふらと気紛れにドライブをしては、ノープランで2つ隣の地方都市まで来てしまった。
当然そのつもりでは無かったので、宿泊の用意なんて無く、大して手持ちも無かったので、その日は車中泊をする事にした。
近頃はいくら地方でも、その辺に適当に車を止めておけば、直ぐ様邪魔だと警察へ通報されてしまう。コンビニやスーパーの駐車場だって勿論アウトだ。
だからAさんはこういう時にはよく、コインパーキングを利用していた。
余程田舎では無い限り駅の周辺には大抵あるし、都会では考えられない程価格も安い。
そうやって、その日もAさんは住宅街の有料駐車場に車を止め、そのままシートを倒して眠りについた。

◯◯◯

どれくらい経った頃だろうか、Aさんはふと、人の気配で目が覚めた。
まだ寝ていたいAさんが、眠気目を薄っすら開けてみると、仰向けに寝ている自分を覗き込む何かが居た。
しかも、まるで見えているのか反応を伺うように、こちらの顔の前でひらひらと手を振っている。
それを認識して、Aさんは固まった。
確かに車には鍵を掛けた筈だ。
だとしたら、これはなんだ?
当然の疑問が頭を過ぎる。薄目に開けた瞼は、何故だかそれ以上はっきり開くのが危険なように思えた。
覗き込んでいるのは子供のようだった。ぼさついたおかっぱ頭で、白磁のように肌が白い。
その両目には白目が無く、黒曜石のように艶やかでひたすらに黒かった。
…生きている人間じゃない。
そう思い至ったAさんだったが、初めて対峙する幽霊に、恐怖で何も出来なかった。
子供の霊は何かを呟いているようだった。
音は何も聞こえないが、ぱくぱくと口が動いている。
もう手は振っていない。代わりに、ずいっと顔面が近づいて来ていた。既に起きていると気付かれてしまっているのかも知れない。
それでもAさんは寝返りを打つフリをして視線を外したかったが、恐怖で身体が動かない。
やがて、幽霊の口の形が解ってきてしまった。
最初は母音だけ何となく、オ、オ、ウ、ア、ウ…、と言ったような言葉が繰り返し呟かれているのだと解った。それが、だんだんと何と言っているのか正確に理解してしまう。
そして、その言葉が完全に理解出来た瞬間、
「――お父さん……」
子供の霊の口から、確かに音が聞こえた。
先程までは聞こえなかった筈の声が、唐突に耳に届いた。
もう、Aさんは訳が分からなかった。
Aさんには子供なんて居ないし、過去に女性を妊娠させた記憶も無い。
だから、この子に「お父さん」と呼ばれる覚えなんて無いのだ。
しかしこの幽霊は構わずに同じ言葉を繰り返す。
「お父さん」「お父さん」と……
酷く怯えた様子で、震えた声色で。
さっきまではわからなかった表情も、今ではハッキリと認識出来た。
黒い相貌から流れる涙も、バケツに墨汁を溢したように汚い色で流れている。
そして、
「お父さん…、お父さん…、
扉の向こうに、お母さんが……」
そう、少女が言うのが聞こえた。
その瞬間だった。
「アアアァァァァアア゛ア゛ア゛ア゛ーー」
悲鳴のような、叫び声が聞こえた。
今度は車の外、大人の女性の声だった。
Aさんはその声に驚き、「ひっ」と、自身からも少しの悲鳴が漏れてしまった。
跳ねるように上半身を起こし、運転席の窓をみると、枝のように細い手足を振り回して悲鳴をあげる女性が、すぐ外にいた。
長い髪を振り乱し、少女の霊とは対照的な花崗岩のような白みがかった灰色の目をしていて、黒目が釘を刺したように小さかった。
こちらも、当然生きた人間では無いことは分かりきっていた。
鬼女と呼ぶに相応しい女は狂ったように叫びながら、車のドアを叩いた。
その音は何故か木製のドアを激しく叩く音のように聞こえ、およそ1人の人間が叩いているとは思えない程激しく豪雨のように乱れ打つ音が車内に五月蠅く響いた。
運転席の窓を見る背後では、先程の少女の霊が助手席のシートで小さくなって震えていた。
両耳を押さえて、涙を流して泣いていた。
その口からも、外の女性の霊とは違う悲鳴が聞こえる。
「お父さん…お父さん…助けて、助けて……
扉の向こうにお母さんがいるの…、助けて、お父さん、たすけて……」
直ぐにまた窓の外からも悲痛な叫びが聞こえて来た。まるで酷い暴力を受けて悲鳴を上げているかのようだった。
思わず見ると、外の女性の霊の腕がへし折られたように不自然に曲がっているのが見えた。その頭も力ずくに折られたようになっていたが、この車に背を向けているのかそれとも別の理由なのか、見えるのは後頭部だけで表情までは分からなかった。
しかし未だ車内には木製の扉を蹴り破らんばかりの音がなり、そして、少女の霊が外の女の霊のように痛みに悶える叫び声を上げ、そしてその身体も同じように……

◯◯◯

Aさんはそこで気絶したのか、記憶にあるのはその状況までだったという。
朝になって逃げる様にコインパーキングをあとにし、その時の事がトラウマとなり、今では絶対に有料駐車場で眠るなんて事はしなくなった。

返信

またまた、ギリギリセーフです。
今宵は、間に合いましたよね。
何とか、2作アップしました。
素敵なお題でした。
ラグト様 ありがとうございました。
ふたば様、大変ですが、朗読頑張ってくださいね。

返信

すみません、ちょっと手を入れました。

返信

「別れ」

 おーい、A。オーイ。

 親友Bの声がする。
 呼ばれて振り返ると、そこは、夕陽に照らされた一面のひまわり畑だった。
 遠くで、Bが手を振っている。俺たちの間には、幾重にもひまわりの壁が立ちふさがっていた。
 ああーーここは以前、Bと一緒に旅行した時たまたま立ち寄った、どこかの田舎町のひまわり迷路だな、と俺は思った。 
 ひぐらしの輪唱が聞こえる。
 Bの声がする。

 おーい、A。オーイ。

 俺は声のする方へと走る。
 背の高いひまわりに囲まれた小径を、右へ曲がり左に折れて、行きどまってはまた戻る。

 おーい、A。オーイ。

 声がだんだん近くなる。
 Bは気の良い奴だった。ゼミの飲み会で知り合って意気投合し、それからいつもつるんでいた。
 やがてC子という後輩女子を取り合って険悪になったこともあったけど、それも今では笑い話だ。
 
 あの日。
 強い雨が降っていて視界が悪かった。
 俺たちの運転する車はとある峠で道を踏み外し、谷底へと転落した。
 全身を襲う激痛の中、俺は助手席のBを見た。
 Bは目を閉じたままで、その額からはおびただしい量の血が流れていた。
 
 おーい、A。オーイ。

 陽が山際に暮れかけて、薄闇に包まれたひまわり迷路の向こう。
 血まみれの顔で手を振る、Bの姿があった。

 ドン!ドン!ドンーー!

 何かを激しく叩く音に目を覚ます。
 しかし目の前は闇だった。
 身体は、動かなかった。
 目の前に木の板があることが気配でわかる。扉だろうか?
 扉の向こうに人の気配がする。
 
 おーい……Aぇぇ。オーイィィィ……。

 何故だ、B。あれは夢だったんじゃないのか?お前はもう死んだんじゃなかったのか?

 Aぇ……、Aぇぇ……、Aぇぇぇ……!
 やめてくれやめてくれやめてくれ!

 不意に目の前の闇が四角く切り取られた。
 光だ。
 光の中に逆光のBの顔があった。

「ーーごめんな、A!ごめんなぁ!」
 頭に包帯を巻いて、顔をくしゃくしゃにしたBがそこにいた。
「ありがとうね、B君。Aの運転のせいで大怪我をした貴方が、お葬式にまで来てくれて……」
 今度は俺の母親の顔が覗く。
「いえ、本当にすいませんでした!俺が運転を代わってやっていれば、こんなことには……」
 その言葉に号泣する母親。
「A君……なんでぇ……?嫌だよぅ……」
 震えるC子の肩を、Bの腕が力強く抱いている。
 おいテメエ、俺のカノジョになにしてんだ!

「皆様、そろそろお別れの時間となりました」
 誰かの声がそう告げて、俺の顔の前にある小さな穴ーー棺の小窓を閉じた。再び闇に包まれる。
「これから火葬場に向かいます。皆様、お車の方までーー」 
 
 おい馬鹿やめろ!俺はここにいる!やめろ、やめてくれ!
 テメエ、B!出せ!出せ!ここから出せぇぇぇ!

 俺は声の限り叫んだが、それは誰の耳にも届いていないようだった。
 小窓が閉まる直前に見た光景。
 Bの口元は確かに笑っていた。
 俺は深く絶望しながらも、誰にも聞こえない叫びを上げ続けるのだった。 

返信

ふたばです、一応ちゃんと生きてます
中々怖話に来れず申し訳御座いませんorz

今月のお題短編の締め切りは、本日28日の23:59までで御座います。
お忘れ無いようお気を付け下さいませ( ᴗ ̫ ᴗ )

投稿されたお話はさっと目は通せておりますが、ちゃんとはまだ読めていないので、ちゃんと読めたら感想も書かせていただきます(*´꒳`*)

今日は半休が取れたので先にお話も書かなきゃですね…_:(´ཀ`」 ∠):

返信

そんなに怖くないかもしれないです。ちょっと不思議なお話になりました。
【8月お題】
「扉の向こう」

それは悪夢だね。彼はそう言いました。
彼と言っても扉です。扉が喋るんです。
私は夢の中で沢山の扉を開け放ち、その度目の前にある別の扉を開けました。
いつ頃から見始めたのかと言うと怪しいのですが、きっと祖父の死をきっかけに見るようになったと思います。
起きたら何回目の夢、というふうに記録するようにもしてます。
毎晩一番初めに開ける扉が語りかけ、会話し、扉を開ける旅に出るという夢。
なぜ見るのかは分かりません。
でも確かに明確な理由があって開けるんです。
「どうして私は開けるのかな」
「扉の向こうへ行きたいんじゃない?」
「扉の向こうには何があるの?」
「無意識下のお前さんが望んでる場所かなあ」
そんな会話をして、私は旅をし、目を覚まします。
内容も鮮明に覚えていていつも姉に話すのですが、「心配性だなあ」と言うんですね。
何が心配なんだろう。と思いましたが、それ以上聞くことはありませんでした。
46回目。47回目。48回目。
49回目の夢で扉は「どうして向こうに行きたいの?」と聞いてきました。
私は「会いたい人がいると思うの」と答えました。
その後も会話は続きます。
「じゃあ、どうして扉を開け続けるのか分かる?」
「分からない…たぶん、いかせてくれないのかも」
「誰が?」
私は、誰が自分を引き止めているのか訊ねられ、ハッとしました。
思えば扉の声は姉の声質と同じだったんです。
「向こうなんて行っちゃダメ。だから開けたら扉を用意したんだよ」
「でも…じいちゃんと約束したのよ」
「フルートの音色ならお墓の前で奏でておやり」
そう言って半ば強制的に覚醒を促され、私は仏壇の前で目を覚ましました。
布団で眠ってたはずなのに。
ぼうっとする頭で外に出ると、丁度夜明けを迎えた空を見ました。
とても気持ちのいい朝に感動し、仏間に戻ると姉がいました。
姉は三本の線香とマッチを持っており、振り返るとこう言います。
「自分から彼岸に行こうなんてさ、それこそ悪夢だね」
扉は彼ではなく、姉で、毎晩私の夢に出てきていたのかと思うと、優しいのか怖いのかよく分かりません。

返信

今日ログインしたばかりですが、こちらの掲示板を伺い早速書いてみようという気持ちになり投稿させて頂こうと思います。
【8月お題】
「手を振る」

それは盆の日、田んぼの向こうに見えました。
丁度祖父の三回忌にいらしたお坊さまが帰ろうと仏間を出ようとした時です。
日当たりがいい南向きの部屋だったから、窓を開けていたんですが正座してると外の景色は見えないんですね。
だからお見送りに家族全員で立ち上がったら、私は窓際に座ってたからちょっと横に視線をズラせば見えるんですね。
青々とした稲の向こうに女の人が手を振ってるのが。
友達でもいるのかな。と思ってその時は特に気にすることもなくすぐ皆の後を追いかけて外へ出たんですが、ちょっと違和感を覚えたんです。
仏間と同じように玄関もまた南向きなので、窓から見える田園風景がそのまま目の前に広がってるんですが…それはいいんですよ。
なんて言うか、女の人との距離が縮まった感じがあったんです。
その人は変わらずこちらを向いて手を振り続けてまして、なんかおかしいなあ、と感じて家族の顔を見るんですけど全く気づいてないみたいなんですね。
お坊さまはというと、女の人に背を向ける形で祖母と話してました。
他の皆も会話に参加したり相槌打ったりして、私だけ女の人に釘付けだったんです。
だからまたすぐ気づいたんです。その女の人、田んぼの上に立ってるんです。
下半身が稲のところでボヤけていて、そこでようやっと「あ、この世のものじゃないんだ」って分かったんですね。
そしたらいきなりズズズズズ、と近寄ってきました。
段々その表情がはっきり見えてきまして、笑ってる訳じゃなかったんです。ただただ凝視してたんです。
だから凄く恐ろしくなって思わず般若心経を唱えました。
するとお坊さまが異変に気づいたのか、祖母との会話を打ち切って私の前に立ったんですよ。
「あれはね、気にしなくていいから。ただ盆が終わるまでお母さんから絶対離れちゃダメだよ」
そう言われて私は隣に立つ母を見ました。女の人はお坊さまの姿に隠れて見えませんでした。
母は軽く頭を下げると、自分の背に私を隠しました。
私は覗くなとも言われたのでぎゅっと目を瞑り、縋るように母の着ていたシャツを握り締めてました。
その後はお坊さまがまた念仏を唱えるのが聞こえ、終わるとすぐに帰られました。同時に私達も家の中に戻ってようやく目を開けられたんですね。
盆が終わるまであと三日、私はずっと母の傍に居ました。
何でも、私の母はとても霊感が強く霊の方が近づけないらしいんです。
娘の私はというと逆に引き寄せやすいらしくて、わざわざお盆明けにまた来て下さったお坊さまから「何があってもお母さんの傍にいたら大丈夫だから」と話を聞かされ、祖父の三回忌以降あの手を振る女の人を見ることはありませんでした。

返信

お久しぶりです_( :⁍ 」 )_
こちらは盆と大雨でてんてこ舞いでしたが、皆様のお住みの地域は、災害の被害は出ていませんでしょうか。

月も既に半分過ぎてしまいましたが、こちらに7月のお題短編の朗読を上げさせて頂きました(л・▽・)л
https://youtu.be/RcXTXfzfKUk

なんだか全体的に早口になってしまっておりますが、朗読化されるとこんな感じになるんだなと参考になれば幸いです( ᴗ ̫ ᴗ )

皆様御参加下さり有難う御座います(*ฅ́˘ฅ̀*)

返信

あんみつ姫様

ありがとうございます!
怖い、という感想がやはり一番嬉しいです。
まだまだ暑いですが、細々とでも創作を続けたいです。

返信

ラグト様のお題とあっては参加しないわけにはいきません。(訂正版)
「彼女は死神」

 水墨を垂らしたような鉛色の雲が果てしなく広がっていた。湿り気を含んだ冷たい波風が浜辺に吹き付けて、青紫の閃光が走っては轟音を残していく。
「人は皆、忘却の海に帰る運命なのよ」
風に煽られた髪に顔半分を覆われながら、彼女は淡々と告げる。その青い瞳は、深い海を思わせる冥さを湛えていた。

 彼女から目をそらした僕は、無言のまま海辺に目を向けた。紺碧のうねりが白い鉤爪を繰り返し振り上げては、未練がましく足元にその痕跡を残していった。まるで僕を捕えようとするかのように。
「誰も時を戻すことは出来ない。起きたことを消すこともできない」
「──────そうね。でも───────」
何かを言いかけた彼女は僕の決意をくみ取ったのか、海とは反対側を指さした。灰色の浜辺に、ぽつんと木製の扉が立っていた。扉の向こうからは、僕の名を呼ぶ声が聞こえる。愛しい人に名を呼ばれる、これほど嬉しいことが他にあるだろうか?
「行くよ」
「────そっちは地獄へ続いているとしても?」
僕は答えず背を向けた。地獄がなんだ。僕は愛する人と、苦しみすら共にしたいのだ。扉を押し開けたところで振り返ると、軽く手を振る姿が見えた。死神と名乗った彼女の胸元で、青い宝石が濡れたようにきらりと光った。深呼吸を一つして、僕は一歩を踏み出した。

§

 僕が目を覚ますのを見て、妻の顔が強張る。人工呼吸器に繋がれた僕は、首から下が全く動かない。こうなる前に情報は掴んでいた。深い仲の妻と親友(笑)が、遺産目当てに何か企んでるってことを。
こんなことになっても、僕は君を愛している。だからこそ、裏切られた僕の悲しみは計り知れない。インターネット万能のこの時代、徹底的に社会的破滅に追い込んでやる。それこそが僕の愛の証なのだ。

「ごめんね、あなた」
ほころんだ僕の顔を見て全てを察した妻が、無表情に、当たり前のように人工呼吸器を取り外した。

返信

【母の思い出】

母が死んだのは、梅雨が明け、夏の日差しが強くなり始めた頃だった。

お酒が好きで、口にするのは下世話な話ばかり。金銭感覚も適当で、進学や日常生活で随分と頭を悩ませたものだ。

1つだけ良い所があるなら…私達にいつも笑顔を向けていた事くらい。

父は「病的に明るいだけ」と言っていたが…中学時代、些細な理由で苛めまがいの事をされていた私にとって…それはある意味、救いだった。

テレビのしょーもないお笑い番組を見ながら、ゲラゲラ笑う姿を見ていると、学校で起きた嫌な事全て、「くだらない」と、振り切る事が出来たのだ。

でも、母はもう笑ってくれない。ぐいっと缶ビールを煽って、「最高!」と言う事も無い。

棺桶の中、花に埋もれて…静かに眠っている。

「疲れただろう、ちょっと部屋で休みなさい」

父が、私の肩を叩いた。母に起因する経済的な理由から、長らく離れて生活していたが…久々の再会が葬式だなんて。

「ごめんね」

思わず、口からこぼれた。高校生とはいえ、父にもっと気が利いた事が言えたら良かったのに…今はこんな言葉しか出てこない。

父は何で、母と結婚しようと思ったんだろう?

結婚して子供を持っても、あんな体たらくなのだから、結婚前だって、多少隠していても何かしら兆候は見えた筈なのに…

1人悶々としながら、葬儀場から待合室へと続く廊下を歩く。

古びて軋む床を進み、給湯室を抜けると、「お客様用」と書かれた扉が3つ。その一番奥が、私達家族にあてがわれていた。

古い匂いが立ち込める狭い和室に入るなり、私は畳の上に寝転んだ。

そして、轟々と音を立てる空調機の冷風を浴びながら、ふと湧いた眠気に身を任せようとした…

その時だった。

「ミイちゃん」

§

扉の向こうで、聞き覚えのある柔らかな声がして、ハッと意識が覚めた。

まさか、と思って起き上がると、再び、

「ミイちゃん」

と…私を呼ぶ、懐かしい声。やっぱり、やっぱりそうだ…!それは…私が昔から慕う、チカエさんの声だった。

母の妹で、私が幼い頃から可愛がってくれて、親身に話を聞いてくれる…朗らかで、とても素敵な人。

失礼だと分かっていながら、「ほんとに血の繋がった姉妹なの?」…と、密かに思うくらい、美しいのだ。

そして、会えばいつも笑顔で迎えてくれる。優しく褒めてくれる…

そんな、数少ない身内の中で一番甘えられた人が、仕事の関係で遠方に行ってしまうと聞いた時は、かなりショックだった。

だが今、私の目の前には、叔母が居る。…夢じゃない。

乱れた髪を整えるよりも先に、私は部屋の扉を開けた。

「チカエさん!」

「ミイちゃん、久しぶり…」

包み込むような優しい声。キラキラと光る黒髪に、陶器のような白い肌。スッと通った鼻筋に、奥二重の瞳と、ふっくらした唇…

この顔になりたい、と…どれだけ憧れただろう。そして、どれだけ会いたかったか…

寂しさが堰を切ったようにぐっと込み上げ、気が付くと泣いていた。

「うん…会いたかった!」

悲喜が入り交じった涙。叔母は、それを細く白い指で拭うと、微笑みを浮かべて言った。

「傍に居るからね」

澱んでいた心が、その一言で晴れ渡る。

葬儀が終われば、父はまた赴任先へ戻ってしまう。私1人で、果たして心の整理が出来るだろうか…

初夏の疲労よりも何よりも、その不安が、私の心を支配していた。

しかし、チカエさんがいるとなれば、こんな心強い事は無い。それに…積もる話も山程有る。葬儀が終わったら、目一杯話を咲かせよう。

「ありがとう!嬉しい!」

いつの間にか、さっきまでの疲労はどこかに消え、私は再び葬儀場へと向かった。

父の手伝いをしなきゃ…私を呼んでる…遠くで…

…ぉ、みぉ…みお…

§

「美緒!!」

突然響いた声で反射的に体を起こした。辺りを見ると…叔母の姿は無く、代わりに父が、汗をハンカチで拭いながら、扉の前で立っていた。

「夢…?」

「寝てる所悪いな、向こうの婆ちゃん達、もう帰るっていうから…」

「そう…そうか…」

夢オチに凹みつつ…私は父と共に葬儀場へ戻る。

入り口に着くと…父方の親戚が、タクシーの前で、冷めた表情で待っていた。

「あらやだ、遅いわねぇ、だらしないったらもう…」

「実の母親が死んだっていうのに、涙一つ見せないんだもの…不愛想ね!」

「ご霊前、返して欲しいわ~」

「そのくらいにしとけ、まあ、そう言われても当然だな?」

父の親族は、いつもこうだ。

怒りが吹き出すのをどうにか堪えて、私は父と一緒に礼をした。しかし頭を上げると…既にタクシーは走り去った後で、道行く人が不思議そうに私達を眺めている。

父は、終始無言だった。こんな時ですら言われ放題なのに、何も言い返さない。

私は1人、言い様の無い寂しさと不安で、心が潰れそうになった。

チカエさんがいてくれたら。夢じゃなかったら、どんなに良かっただろう。

そんな、モヤモヤした感情を抱えながら夜を迎え…私は、明日の朝早く荼毘に臥されてしまう母に、最後の挨拶をした。

「本っ当、酒ばっかり…、あの世でも、たらふく飲みなよ!」

こんな穏やかな顔は、後にも先にも無い。

せめて最後くらいは…と、私は母の頬に優しく手を添えた。

が…次の瞬間、異様な感触に、違和感を覚えた。

皺。

年相応ではない皺が、母の頬に刻まれていたのだ。

訳が分からず急いで手を離し、今一度、母の顔を上からまじまじと眺める。薄暗がりの中…私の目に、その輪郭が映し出され、気のせいではないと確信した。

母の顔は、おばあさんのように皺くちゃになっていた。

それも…明らかに、自然に歳を取ったかのように。

まだ、50半ばだ。ここまで急速に容姿が老化する事なんてあるのか?…今までに参列した葬儀を思い出す。が、そのどれも、生前と大して変わらない死に顔だった。

だとしたら、何で?一体どういう事?

その困惑のさなか…今度は、混乱する頭を追い詰めるかのように、葬儀場の照明が点滅したかと思うと、一気に暗転した。

辺りが一瞬で、黒い絵具を塗りたくったような暗闇と化し、さっきまでの、外の明かりも入って来ない。

まるで閉じ込められたかのように、あたりが静まり返っている。

思ってもみなかった事態に、私はその場で固まったまま、茫然と立ち尽くした。手探りはおろか、体を動かすことすら、怖くて出来なくなっていた。まるで、「何か」に追い立てられ、押し潰されそうな感覚…

動転し、呼吸だけがどんどん荒くなり…声も出せず、心の中で叫んだ。

何で?何が起きてるの?お父さん、チカエさん…!助けて…

お母さん!!!

「はいよ!」

§

「えっ…」

「ほれ、起きろっ!」

バサッ!と、母が勢いよく掛布団を剥がす。

そして手際良く畳むと、もう片方の手を障子に掛け、戸を開け放った。

「私…えっ?」

起き上がり、母の顔を見る。50半ば…所々に小皺のある、年相応の顔立ちだ。

「…ぉいしょっと。さ、敷布団も干しちゃうから、どいたどいた!…随分険しい顔して寝てたけど、なんかあった?」

「や、な、んでもない…」

「ま、いいけど…あ、さっきね、チカエも来たから!」

…チカエさん…!

足早に朝食を済ませ、喪服に袖を通す。夏のお盆。祖父母の法要があるからだ。

大酒飲みだったという祖母は、まだ学生だった母やチカエさんを残して亡くなった。お金遣いは雑で、バラエティー番組やゴシップが大好き。だが、底抜けに陽気な人だったという。

祖父は私が3歳の時にこの世を去ったのだが…祖父方の親戚は、祖母の死から間もなく、全員が災害や事故に遭い、「祟り」を理由に葬儀にも顔を出さず…結果、祖母方の家族が継いで、何とか続けていた。

でも…それも今日で最後。弔い上げというらしい。

時間が経つにつれ、長く深い夢だったと納得出来るようにはなったけど…あの皺くちゃの顔や、空気感。全て、私の記憶には無いものばかりだった。

だからきっと、あれは母の思い出。

…母の、祖母の葬式での出来事を、私は自身のフィルターを通して、夢に見たのだ。

最後の日に。

「ミイちゃん!やだも~久しぶりっ!」

居間のテーブルから、私に向かって、笑顔で手を振る姿…今度こそ、夢じゃない。

夢で見た時より、所帯染みて歳を取っているが…変わらず美しいチカエさんが、そこに居た。

「うん、会いたかった…!」

返信

失礼致します(礼)。

今回も三つの御題を拝借致しまして、変な話を打ち終わりまして御座います(中編になるかと踏んで、先に向こうに掲載致しました………)。

『或る意味幸せ?』
カラオケボックスの一室にて、数ヶ月前に亡くなった俳優で作曲家の姿に似ている男が、歌謡曲を気持ち良さそうに熱唱する姿を、私は見ている。

声優兼歌手のファンから、急にフォークソングミュージシャンに惹かれたりと良く分からない男だが、彼の取り上げる話題が何故か政治から昭和の裏話等独特なのと、辛口ながら嫌味では無い為、友人としていつの間にやら長い付き合いになっていて、たまに休みになると、こんな風に出掛けている。

「?」

或る歌手の代表曲を選んだ彼が熱唱している時、違和感を覚える。

彼の歌い方も異常は無いし、カラオケの機械も止まったりする事無く動いているのだが、彼が棒立ちでマイクを持つ後ろ───ソファと壁がピッタリくっ付いている筈なのに………

「/~アアア~、アアア~、アアア~っ♪」

「????」

彼の歌うフレーズに合わせて、手を振ると言うよりは横に揺れている白い群れ。

私が目を見開いていると、

「失礼致しまーす………」

コンコンと言うノックの音と共に、店員さんが現れる。入ろうとした直後、異様な光景を目撃したらしく、口をパクパクさせていた。
確かにそうだろう。扉を開けた向こうの客の後ろに、無数の白い手が有ったのだから………

「何かアタスに付いてます?」

怪訝(けげん)な顔をして、キョロリと彼は後ろを向くが、無数の白い手はその直前に消えた。

「あっ、烏龍茶とペコロスコーラです………」

我に返った店員さんは持って来た飲み物を説明して慌てて退出する。

「僕ちんがそんなに酷い顔なんだべか」

口を尖らす彼。

違う、違うんだよ………「〇〇っ!!後ろっ!!」と叫んだ所で、かの有名な長寿コント番組や、先刻(さっき)のと同じタイミングで、あの無数の白い手は引っ込んだんだろうけど。

そう言えば、こんな事も有ったのを思い出す。

彼は何故か学ラン姿で、海岸の岩に座って夜更けの海を眺めていたと言う。

が、「誰も来なかったし、呼ばれる声も聞こえなかったんだよなァ。大人しく部屋で深夜ラジオでも聴いてりゃ良かったって思うよ」なんて、日の昇った海岸沿いの道路を一緒に歩きながら、退屈そうに話してくれた。

───君ね、それも実は違うんだよ………

朝日に照らされながら、波打ち際から沖に向かう白い集団が、その時見えたんだよ………

「ムスコジャナイ、ダレダアイツ、アイツノウシロデ、ニラミツケルヤツガイルカラコワイ、ツレテケナイ、ヒッパルノ、コトシダケヤメル………ダレダアイツ、ダレダアイツ、ダレダアイツ………」

凄く不服そうな感じでうなだれていたのに………外出用の軍服と学ランで一瞬騙せたのかもだけど、結局見透かして、集団は白けて退却したのかな。

「見たいのに出て来てくれない」が彼の口癖だけど、「知らぬが仏」「見えぬが仏」も、有ると思うんだけどな。

短編に収まりましたが、恐らく文字数は多いかなと思われます(汗)。
この場を借りまして、トピック主であるふたばさんと御題を提供されました、ラグトさんに御礼申し上げます。
有難う御座いました。

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