皆さんこんにちは。
一向に文章が上達しないふたばです。(´・ω・`)
己の練習に他人を巻き込んでやろうと、掲示板を建ててみました。
以下、ここでのルールを説明します。( ᴗ ̫ ᴗ )
↓
🌱ここは、短編の練習をする為の掲示板です。
🌱毎月単語を3つ、お題として出しますので、短編の「三題怪談」を募集します。
🌱「三題怪談」とは、1つのお話に決められた3つのお題のワードを入れなければならないという“縛り”で御座います。
🌱お話の長さの目安は、原稿用紙2枚分(800字)程度。
(あくまでも目安です、越えてしまってもヨシとします)
文字数カウント↓
https://phonypianist.sakura.ne.jp/convenienttool/strcount.html
🌱お題は毎月一日に更新されます。
🌱提出期限は毎月28日までとします。
🌱お話はいくつ投稿しても構いません。
🌱初心者大歓迎。実際私もほぼ読み専なので、文章が下手っぴです。軽い気持ちでご参加下さいませ。
🌱ここで投稿されたお話は、“ご自身で書かれたお話ならば”怖話の通常投稿にあげても構いません。
寧ろ、多くの方に見ていただけるよう、ここで試し書き、本投稿で完成品といったように使って下さいませ。
何なら他サイトでも投稿されている方は、そちらへあげるのも問題御座いません。
(※他の方の掲示板でも同じとは限らないので、その都度そこの掲示板主へご確認下さい)
🌱題名も付けて頂けると助かります(題名は文字数には含みません)。
🌱感想だけのご参加も大歓迎です。
🌱明らかな荒らしコメントは即刻削除致します。慈悲はありません。
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【11月お題】
「黄泉」「狐」「エレベーター」
投稿期間 11/1 0:00〜11/28 23:59
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ですがまぁ…建ててみたは良いものの、私が独りで短編を書き続ける寂しい場所になりそうな気がします……
そこで!ちょっとした特典代わりと言っては何ですが、ここで投稿されたお話は、私ふたばが朗読させて頂きます。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ
具体的に言うと、YouTubeにてその月に投稿されたお題の回答を、纏めとして朗読してアップします。
素人の朗読ですのでレベルは低いですが、創作意欲の糧になれれば幸いです。( ᴗ ̫ ᴗ )
※朗読されるのが嫌だという方は、お手数ですが文末に「※否朗読希望」とお書き下さいませ。
📚過去のお題アーカイブ
【9月お題】「彼岸」「ぶどう」「ネジ」
https://youtu.be/DlNJ68yKIfA
【10月お題】「十五夜(月のみでも可)」「図書館」「菊」
(※お題提供:あんみつ姫さん)
https://youtu.be/iA4spsQlSMA
【11月お題】「りんご」「子ども」「落ちる」
https://youtu.be/UMVBBrycZqU
【12月お題】「肖像画」「塩」「M」
(※お題提供:むぅさん)
https://youtu.be/MJmFrqUqvj0
【1月お題】 「ウシ」「晴れ」「厄」
https://youtu.be/N0tX10EOJoE
【2月お題】 「僧」「遊泳」「踊り」
Extraお題「怪僧」「宇宙遊泳」「阿波踊り」
(※お題提供:嗣人さん)
https://youtu.be/9j2vK_kKzhE
【3月お題】 「風」「証」「波」
https://youtu.be/zZoV2ce7poU
【4月お題】「サクラ」「窓辺」「人形」
https://youtu.be/kZzfmq8cNvM
【5月お題】「母」「鬱」「川」
https://youtu.be/RNqUE92-K2k
【6月お題】「クラゲ」「雨」「失踪」
https://youtu.be/BM0ataca42E
【7月お題】 「天の川」「亀裂」「写真」
https://youtu.be/RcXTXfzfKUk
【8月お題】「手を振る」「扉の向こう」「呼ばれる」
(※お題提供:ラグトさん)
https://youtu.be/omL3byV-eF0
【9月お題】「アリス」「スープ」「ハサミ」
https://youtu.be/w20FnRK-bQQ
【10月お題】「バラ」「時計」「たばこ」https://youtu.be/g_zxwy1H73I
【11月お題】「無人探査機 」「提灯鮟鱇 」「地引網 」
(※お題提供:ロビンⓂ︎さん)
【12月お題】
「プレゼント 」「空席」「信号 」
【1月お題】
「トラ」「階段」「玉」
【2月お題】
「ネコ 」「チョコレート」「箱」
【3月お題】
「ウメ 」「日記」「歌声」
【4月お題】
「駅 」「看板」「ポスト」
【5月お題】
「灯り」「公園」「針」
【6月お題】
「カッパ」「アジサイ」「自転車」
【7月お題】
「浜辺」「貝」「欄干」
【8月お題】
「ニセモノ」「蝋燭」「指」
【9月お題】
「帰り道」「ビン」「コスモス」
【10月お題】
「先生」「空腹」「筆」
【11月お題】
「橋」「ゾンビ」「忘れ物」
【12月お題】
「足音」「雪」「吐息」
【1月お題】
「ウサギ」「獣道」「目」
【2月お題】
「鬼」「酒」「身代わり」
【3月お題】
「都市伝説」「ピアノ」「ボタン」
【4月お題】
「絵本」「珈琲」「霞」
【5月お題】
「シミ」「地下」「蝿」
【6月お題】
「ダム」「悲鳴」「カエル」
【7月お題】
「夏草」「鏡」「プラネタリウム」
【8月お題】
「漂流」「雲」「ラムネ」
【9月お題】
「神隠し」「お米」「カバン」
【10月お題】
「皮」「警告」「お札」
【11月お題】
「1週間」「影」「オレンジ」
【12月お題】
「ケーキ」「透明」「チャイム」
【1月お題】
「 」「 」「 」
【2月お題】
「穴」「遅刻」「節」
【3月お題】
「足跡」「惑星」「メッセージ」
【4月お題】
「卵」「楽園」「嘘」
【5月お題】
「人混み」「電話」「花瓶」
【6月お題】
「墓場」「毒」「待つ」
【7月お題】
「海」「境界」「糸」
【8月お題】
「打ち上げ」「ライト」「未練」
【9月お題】
「借りもの」「バス停」「斜陽」
【10月お題】
「骨董」「ピエロ」「姉」
※追記:ここのお話を本投稿へもアップされる方へのお願い
🌱先に述べた通り、ここに書いたお話は一般の怖い話にも投稿して頂いて構いません(そもそも著作権は作者のものですから)
🌱一般投稿分は掲示板のレギュレーションから外れますので、文字数を気にせず加筆修正しても何も問題御座いません。
🌱ですが、投稿の際には題名に“三題怪談”の文字を付けないで下さい(同じ企画系列の題名が並ぶとうんざりしてしまうユーザーが現れ、揉める為。実際、過去にそういう事がありました)
🌱また、お題の単語をお話の解説欄に載せると、その単語に気を取られて純粋な短編として楽しめないので、読者的には解説欄には“掲示板より”とだけ書いて頂けると助かります。
(コメントにお題の単語をネタバレ防止で公開するのはアリです)
(ここのページのURLは貼っても貼らなくてもいいです)
🌱代わりに、投稿作のタグ欄に、お題の単語タグ3種と“毎月お題の短編練習枠”タグが知らぬ間に付いております。十中八九私ふたばが犯人なので怖がらないで下さい。
企画というより常設となるこの場所は、細く長く続けていきたいので、何卒、ご理解下さいませm(_ _)m
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今月はちょっと毛色を変えて書いてみました。
かなり字数がオーバーしてしまいましたが。
尚、登場人物は実在の某芸(能)人とは無関係です。
単に書き手のイメージ作りですので・・・
***************
【井戸の底】
今年は空梅雨の上に夏に入り猛暑の日が続いている。
「なあ、女貝川上流にあるダムの水が干上がって、爺さんが子供の頃に沈んだ村が顔を出してるんだってよ。見に行かねえか?」
大悟が遊び友達のノブに声を掛けた。
「おお、なんか面白そうじゃな。」
ふたりは女友達のゆめと麻貴を誘い、車で山の中のダムへと向かった。
「なんでも、爺さんが言うには村の外れに井戸があったんだと。もしその井戸を見つけても、絶対近寄るなってよ。」
大悟が車を運転しながら、脅かすように話すと後部座席のゆめと麻貴は顔をしかめた。
「え~、それって幽霊か何かが出るってこと?怖ーい。」
ゆめがそう言うと助手席のノブが笑いながら振り返った。
「何が怖いじゃ。ゆめなら幽霊の方が怖がって近づいてこんわ。」
「え~、何それ。ひどーい。」
照りつける日差しの下、ダムの水の枯れ方は想像以上に酷く、用意していた長靴が必要ない程に湖底のヘドロも乾き切っていた。
ダムに沈んだ村は、既に何十年も経過しているはずだが、建物の残骸はかなり残っている。
しかしその下部三分の一は泥に埋まっており、とても中を探索できる状態ではない。
「おい、あれを見ろ。井戸じゃないか?」
不意に大悟が声をあげて前方を指差した。
そこには乾いた泥の上に二十センチほどの高さで丸く積み上げられた石が顔を出していた。
「行ってみようぜ。」
ノブと麻貴が井戸の方へ歩き始めた途端、ゆめがそれを制した。
「やめなよ。大悟のお爺さんが近寄るなって言ったんでしょ。」
「大丈夫よ。昔の話でしょ。」
麻貴は笑いながら井戸の傍に寄ると、しゃがんで井戸の縁に手を掛け、井戸の中を覗き込んだ。
「うわ~すごい。」
小さな声で驚きの声をあげ、更に頭を突き出した麻貴は、次の瞬間、ぎゃーっと凄まじい悲鳴を上げて後ろにひっくり返った。
「どうした?」
何事かとノブが同じように井戸の中を覗き込んだ。
井戸の底には、水を求めて逃げ込んだと思われる大量のカエルがぐじゃぐじゃと蠢いていた。
「なんだ、単なるカエルじゃ。」
「ち、ち、違うのよ。よく見てよ!」
ノブがもう一度井戸の底を覗き込むと、蠢くカエルの中に何か丸く、青白いものが見えた。
「何だ?・・・・うわ~っ!」
それを見たノブは麻貴の腕を掴んで一目散に逃げだした。
それは老婆の顔であり、ノブの顔を見上げて歯のない口でにやりと笑ったのだ。
*************
おしまい。
皆様ご無沙汰です🌱 💦
季節の変わり目は仕事柄ドタバタしておりますが、お題くらいは出さなきゃですね(꒪𖦹ࡇ𖦹꒪)
それでは、今月のお題です⊂( っ*´ω`*)っ📝
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【6月お題】
「ダム」「悲鳴」「カエル」
投稿期間 6/1 0:00〜6/28 23:59
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皆様は大雨の影響は大丈夫でしたでしょうか。
今年も益々梅雨入りが早く、このままだと去年のように前梅雨と後梅雨がありそうですね☔🐸
書き手の方も読み手の方も、雨天の時にはお家で怪談を楽しみましょう( ᜊº-° )ᜊ(ᜊ ・・ )ᜊ
ふたば様
お元気でいらっしゃいますか。
6月になりました。
掲示板企画
三題お題 お忙しい中すみません。
今月のお題を教えてください。
書けるかどうかわからないのに、ご無理申し上げてすみません。
なんとか800字にまとめられるように頑張ります。
しばらく書いていないから、こんな駄作しか出来ませんでした。
すみません。
珍しく、どちらも「ヒトコワ」話になりました。
もやもや感と、後味の悪さを楽しんでいただければ嬉しいです。
本作は、本編には揚げません。
ではでは、この辺で。失礼させていただきますね。
「シミとハエ」
「ごめん、ハエが付いてる。」
さゆりは、なつみの右頬を軽く払った。
「やめて。」
なつみは、さゆりの手を振り払うと、眉間にしわを寄せて俯いた。
「ごめん、痛かった。」
「ううん。大丈夫。大丈夫だから。もう私に構わないで。」
なつみは、さゆりを一瞥もせず、その場を立ち去った。
なつみは、その日一日、顔をあげようとはしなかった。
夏休み、うだるような暑さの下、部活を終えたなつみは、ひとり体育館の地下にある部室の鏡に右頬を映し出した。
なつみの目には、ハエを貼り付けたような黒いシミが 右頬にくっきりと浮き出て見えた。
そのシミは、なつみの右頬から、今にも飛び出してあたりを飛び回りそうな気がした。
なつみを小さい頃から知っている人たちは、このシミが生まれつきだから、ハエとまちがえたりはしない。
でも、この4月に転校してきたさゆりには、本物のハエにしか見えなかったのだろう。
その時、部活を終えたさゆりが、体育館の地下にある部室に着替えにやってきた。
なつみの姿を見つけると、
「さっきはごめんね。でも、大きなハエが なつみさんのきれいな肌に付いていたので 思わず払ってしまったの。気を悪くしないでね。」
謝罪の言葉をかけながら、笑顔で語りかけるさゆりに、なつみは、返事もせず、冷たい顔をしてその場を通り過ぎた。
(さゆりさん、これは、ハエじゃないんだ。生まれつきのシミなんだよ。)
心のなかで叫びながら、涙をこらえて家路を急いだ。
帰宅してから、なつみは、右頬にカットバンを貼り、ハエの姿に似たシミを隠した。
夕食の時、母に、「どうしたの。まだ、気になるのシミ?」
「うん。ハエがついているって露骨に話す人がいたの。」
「まさか。そんな人いるわけないでしょ。」
母は、困惑した表情を浮かべ、父に同意を求めた。
「気にするな。シミなんてないものと思え。」
いつになく、冷たい反応に なつみは酷く傷ついた。
その日は、朝から、今季最高気温38度を記録した。
夏休みの部活も、早々に中止となり、すぐに帰宅するように決まった。
エアコンも切られ、部室は、蒸し風呂のようになっているはず。
なつみは、朝のうちに、さゆりのカバンを部室に隠した。
猛暑の中、紛失したカバンを汗だくになって探しているさゆりに、
「さゆりさんのカバン、地下の部室にあったよ。」と告げた。
「見つけてくれてありがとう。」
首を傾げながらも笑顔でお礼を言うさゆり。
なつみは、ほくそ笑んだ。
なつみは、さゆりが、部室に入ったのを見届けると、外から鍵をかけ、その場を後にした。
その夜、さゆりに捜索願が出されていた。
塾にも行っていない、いつもの時間に帰宅していない。
学校中騒然となった。
翌日、熱中症で倒れていたさゆりが発見された。
たまたま、エアコンを切り忘れたらしく、酷い脱水症状になってはいたが、幸い命に別状はなかった。
なつみは、警察にいた。
警察では、全ての罪とその動機を 切々と訴えていた。
「こんな可愛い顔をした子が。怖ろしいことを思いつくもんだね。」
警察官は、思わずため息をつく。
「私は、可愛くなんかないです。現に、ほら、ここに、黒いハエのようなシミが こんなにはっきり・・・。」
なつみは、叫びながら右の頬を指差してみせた。
「シミなんてどこにもないよ。ほら、もう一度、よ~く鏡を見てご覧。」
「あるの。私があるって言ったら、あるのよ。」
「お気の毒ですが。・・・させていただきます。」
別室でやりとりを視聴していた なつみの両親は、その場に泣き崩れた。
5月のお題 締切日に間に合わせることができました。
お久しぶりです。
できれば、もう一作、アップする予定です。
タイムアップに間に合えばの話ですが。
その節は、よろしくお願いします。
さすがに、800字にまとめるのは難しいですね。
本作は、倍以上の1600字超えとなってしまいました。
次回作は、チャレンジしてみたいと思います。
「謎」
中田さんは、地元商店街にある不動産屋で働いていた。
その日も近くの定食屋で昼飯を済ませ、デスクに戻ると、事務の佐藤さんから正午過ぎに、クレームの電話があったと告げられた。
「3丁目のYハイツの203号室の戸田さんからなんですが、また、浴室の壁に人型のシミが滲み出てくるっていうんですよ。」
中田さんは、眉をひそめた。
つい2週間前にも、同じクレームを受けたばかりだった。
あの時は、中田さんも付き添って現場を確認し、オーナーの斎藤さんと交渉し、翌日には壁を塗り替えた。
にも関わらず、一ケ月も経たずに壁にシミが浮き出るとは、どういうことだ。
「Yハイツのオーナーの斎藤さんに連絡した?」
「それが・・・何度連絡しようと電話に出ないんです。というか・・・通じないんです。」
佐藤さんは、困惑した表情を浮かべ、番号をプッシュした後、そっと受話器を差し出した。
「この電話は、現在使われておりません。」
かすかに漏れ聞こえるアナウンスに、佐藤さんは、肩を小刻みに震わせ、怯えながら、こう付け加えた。
「それから、戸田さん、地下室からハエがたくさん飛んできて困っていると。大声で怒鳴っていました。中田さん、Yハイツに、地下室ありましたっけ。」
「いや。」
間取り図をみても、地下室などどこにも書いていない。広告にも謳ってはいない。ありえない。
「とにかく、これから出向いてみるよ。」
中田さんは、そう応えるのが精一杯だった。
〇〇○
Yハイツは、築3年にも満たないメゾネットタイプの賃貸住宅だ。
一階と二階がロココ風の内階段で繋がれており、人目を引くモダンな作りが売りの高物件だった。
駅から徒歩8分。この商店街にもほど近い。程なく満室となったのだが、何故か203号室だけは、この春まで借り手がつかなかった。
〇〇○
203号室の前に立ち、数回玄関脇のチャイムを鳴らしたが、返事がない。
ドアノブを廻すと簡単に開き、その瞬間、ぶ~んとけたたましい羽音を振動させた数十匹のハエが吐き出され、狂ったように飛び回った。
あたりに、むせ返るような異臭が漂い、中田さんは、吐き気を堪えながら開け放たれたドアの先を見た。
薄暗いダイニングキッチンの前に置かれたテーブル。その足元に凭れるように、顔中血だらけの戸田さんと思しき男性が、白目をむいて座っていた。
一階の壁には、赤黒いシミが埋め尽くすように滲み出ている。
「怖さが頂点に達すると、声なんて出ないんですよ。」
眼の前の状況を把握し、気持ちを落ち着かせるのに数分を要した中田さんは、こうしてはいられないと、震える手で携帯を取り出し、救急車と警察に電話をかけた。
その間、両隣り、同階に在宅中の住人がいないか、声をかけてみたが、応答はなかった。訝しく思いつつも、中田さんは腰の痛みに堪えながら、203号室の中にそっと足を踏み入れた。
う“ゔゔゔゔゔゔ
戸田さんから声が呻き声が溢れた。
意識がある 助かるかもしれない。
「戸田さん、今、救急車呼びましたから。がんばってください。」
中田さんは、項垂れる戸田さんに声をかけ・・・た。
ふと、心に湧き上がる違和感に、愕然とする。
「さ、斎藤さん。オーナーの斎藤さんじゃないですか。こ、これはいったい。戸田さんは、戸田さんは、どこですか。」
「・・・ち、か、し、つ・・・」
戸田さんだと思っていたのは、オーナーの斎藤さんだった。
「地下室、地下室にいるんですか。どこですか。地下室。」
赤黒い血糊にまみれた右手の先に、ぽっかりと開いた穴があった。
幅にして1メートル四方の空間、だが、それは、地下室などではなかった。
井戸 それも、底は、枯れて汚泥の詰まった円形の井戸。
その中に、背中を向け、項垂れている男性の姿があった。
愕然とし立ち尽くすしかない中田さんの前に、救急車と警察が到着した。
「ここからは、私達が。事情は、後から詳しく伺います。」
パニック状態に陥った中田さんも、救急車の同乗者となってしまったという。
病室を訪れた私を前に、
「何が怖いって、人間が一番怖いです。」
中田さんは、これ以上は勘弁してくださいと言って口を閉ざした。
Yハイツは、今でもあるらしい。
203号室が、その後どうなったのかは、わからない。
戸田さんとオーナーの斎藤さんの関係も、203号室の床下にあった枯れた井戸も。
中田さんは、不動産屋を辞め、今は、奥さんの実家で農業を営んでいるそうだ。
今月は少し早めですが。
もろに前回の続きとなってますが、もちろん今月のお題は入れてます。
前回のあらすじを入れての800字は結構きつかった。
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【続 霞町耳袋】
麻布にある古本喫茶『かすみ』で、『霞町耳袋』という奇妙な絵本を見つけた風子と舞香。
店のマスターもその絵本が店に置かれていることを知らなかった。
旧霞町界隈の奇談を集めた本なのだがその最後の頁には、この古本喫茶が掲載されていた。
その絵に描き込まれた、この絵本を抱え店の前に立つ老婆。
風子と舞香にこの本について聞かれたマスターは、この老婆に見覚えがあると言った。
昔この近所にひとりで住んでいた老婆で、怖い話が大好き。
この近辺の怖話テラーとして子供達に、怖がられながらも人気があった。
ところがある日、この老婆がふっつりと姿を見せなくなったのだ。
子供達の間では、幽霊に連れ去られたとか、妖怪に食べられたとか、根も葉もない憶測が流れていた。
「それはヨシエ婆さんのことだな。」
突然、隣のテーブルで静かに本を読んでいた老紳士が口を挟んできた。
この老紳士も昔からこの辺りに住んでおり、その老婆の取り巻きの子供のひとりだったという。
この絵本は、霞町という地名がなくなるのを惜しんでヨシエ婆さんがしたためた本らしい。
しかしこの絵本は表に出ることはなく、ヨシエ婆さんは自宅の畳の上で心筋梗塞によりこの絵本を抱えたまま亡くなっていた。
独り暮らしだった彼女の死は、十日以上経ってから、臭いと妙に多い蠅により近所の人が気づいたのだ。
遺体はすでに腐敗しており、この本も腐敗した体液によりシミだらけになっていたはずだが、と老紳士は首を傾げた。
その後、地下鉄の駅の再整備に合わせた麻布、六本木再開発で老婆の住んでいた家は取り壊され、この古本喫茶の入っているビルが建ったのだ。
その話を聞いていた霊感の強い風子が突然立ち上がり、店の出入り口の方へゆっくりと進んで立ち止まった。
「その絵本は、この店に置いておけば多くの人に見て貰えると思ったってヨシエお婆さんが言ってるにゃ。」
マスターと老紳士はそれを聞いて神妙な顔で頷いた。
そしてその後、ふたりはこの絵本を自費出版することにしたらしい。
********************
さて、この絵本の最後の頁に登場する古本喫茶『かすみ』が開店した時、ヨシエ婆さんはもうこの世の人ではありませんでした。
さてこの最後の頁。
死後追加されたものか、婆さんの予言か。
そして何故かシミひとつないきれいな絵本。
この位のなぞかけは残すのが粋ですかね。
ついでに、自費出版された霞町耳袋を舞香ちゃんは買うでしょうか?
彼女は怖がりなんですよね~
新しい月となりました🌱
今日はゴールデンウィークの間の平日ですね。この日に休みをとって9連休を錬成している方がいると聞きますが、片腕くらい代償として支払っているのでしょうか。まさに都市伝説ですね(-.-;)
それでは、今月のお題です⊂( っ*´ω`*)っ📝
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【5月お題】
「シミ」「地下」「蝿」
投稿期間 5/1 0:00〜5/28 23:59
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地下が出てくる系の話は、場面転換が挟まるからか長編になるイメージなのですが、そこをどう短編へと纏めるのか、個人的に興味がありますね🕳🪜👀
側から見ていても学ぶもののある当企画、お話を書かない方にも、もっとお目通ししてもらえたらなと思います🌱
@芝阪雁茂 さん、飛び込みでもちゃんと書けているのが何よりも偉いです👏✨
本との出逢いも一期一会とは言いますが、そういう出来事が、お客と一期一会の喫茶店で繰り広げられる事に、そこはかとないエモーションを感じます☕️(´∀`*)
結局小太りおじさんの正体は不明ですが、絵本が未来予知をしたのか、はたまた絵本に書かれた事が無理やり現実になったのか、どちらかによっては本の作者の悪意まで透けて来そうですね……
@天虚空蔵 さん今月もご参加有り難う御座います( ᴗ ̫ ᴗ )
一昔前と言いますか、江戸時代あたりの絵本といえば、『絵草紙』或いは『草双紙』なんて呼ばれるものが挙げられますが、『草双紙』は特に妖怪もののお話が多いんですよね🌱👻
東京の地理に疎い田舎葉っぱの私は、麻布、六本木界隈が“霞町”という名前だったというのも初知りでした。草双紙は江戸の文化なので、その当時は今より妖怪と心理的に近しいのかな、などと妄想を広げておりました(。-∀-)
5月のお題には、「五月」という単語をお題に入れてみようかなどと画策しておりましたが(五月◯◯みたいな言葉って案外多いので面白そうかなと)、もう少しやりやすそうなお題にしますね。笑
『喫茶店の本棚に』
****************
ああ、俺だ。熊竹久六(くまたけ・ひさむ)って言うんだが。
行き付けの喫茶店の本棚に有る、新聞や雑誌を借りて目を通すんだが、見た事の無い絵本が有ってな。
「マスターの親戚の子どもでも置いてったんかな」なんて思いながら、面白半分でめくった訳だが。
*****************
「いかんなあ」「おかしいな、おかしいな」「まわりのおとなたちがパトカーにつぎつぎのせられる、あのおとなたち、なんでこっちをにらむのかな、こぶとりのおじさんがぼくをなでなでしてくれてるよ。でもぼくはみちゃったんだ、おじさんがパトカーにのせられたおとなたちをにらみながら、くちだけがわらったのを」
******************
「………何なんだコレは」
少年とおぼしき主人公を保護したらしい小肥りの男の横顔の挿し絵が太陽に照らされた感じで優しく見えるのだが、ページを繰(く)った瞬間、霞の掛かった………と言うよりは灰色の霧に包まれた様な、黒く邪悪な笑みの物体が目に飛び込んで来る。
「んんぅっ!!」
驚いた私は次の瞬間、その絵本を取り落としてしまう。
咄嗟に珈琲の残ったカップを手で触ってしまい、パっと手を離す。
「………はー」
カップも落としそうになったが、こちらは間一髪で落とさずに済む。
「大丈夫ですか」
驚いたマスターが飛んで来てくれて、俺は絵本を拾い上げようとする。
「………はい、あれ?」
「どうされました」
俺の取り落とした筈の絵本が見当たらない。
落とした場所で無い椅子の蔭(かげ)も卓子(テーブル)の下も探したが、一向に出て来ない。無論、本棚にも。
「又ですか」
マスターが怪訝(けげん)な顔をする。
「又、とは?」
「いやね、絵本を無くしたって子が、昔訪ねて来たんですよ。探させて親御さんも来てくれて諦めさせてはくれたんですけど、その子も親御さんもそれっきりだったのに、絵本がたまに本棚に出没するって、他の御客さんもね………別に悪さしてる訳で無いから、特段困る事も無いんですけど」
「そうでしたか」と言ってからマスターに有難うと伝えて、何と無く外を見た私は凍り付いた。
柄の悪い連中の集団が護送車に詰め込まれる所を、子どもの手を繋ぎながら、小肥りの男が連中を鋭い目付きで口角を上げているのが目に入ってしまったのだから………
*********************
御疲れ様であります(礼)。
最終日に急に浮かんで、一気に打ち上げまして御座います。
間に合ったのは良いけど、「何で早く浮かばんのか(汗)」なんて頭を掻いております次第で(汗)。
今月は、花言葉もケモ耳もギブアップしました。
それではこんな噺を…(綿貫一さん風)
【霞町耳袋】
****************
三波風子と石田舞香は、麻布十番辺りで買い物を楽しんでいた。
そこでちょっと古風な雰囲気のブックカフェを見つけ、休憩がてらお茶にすることにした。
「へえ、ここって古本専門なんだにゃ。」
珈琲を注文し、周囲の本棚を見回して風子が呟くと、舞香は早速立ち上がって本棚を物色し始めた。
「ねえ、風子、この本、何だか面白そうだよ。」
本のタイトルは、『霞町耳袋』。
神社仏閣巡りが趣味の舞香はこのような本にも興味があるのだろう。
厚手の表紙でかなり古そうな本だが、真っ黒な表紙に赤い流れ文字で書かれたタイトルの上に”絵本”と書かれている。
「とても絵本には見えにゃい。」
風子はその本を見た途端に眉をひそめた。何かを感じたのだろうか。
昭和六十年頃まで、この麻布、六本木界隈は霞町という名だった。
この地域で噂される、怪しげな話をまとめた本なのだろう。
表紙にも裏表紙にも作者名も出版社名の記載がない。
ちょうどふたりの珈琲を運んできたマスターに聞いてみると、マスターはその本を手に取って見ていたが、首を傾げた。
「何処にも書いてないね。それにこの本どこにありました?仕入れた記憶がないんだけど…」
「じゃあ、誰かが黙って置いていったのかもね。」
舞香はそう言ってマスターの手から本を取り返すと、テーブルに置いてその絵本を開いた。
最初の頁には、お寺の境内で子供が遊んでいる絵。
まるで水木しげるを思わせるようなタッチの絵だ。
右隅には、『麻布山善福寺境内』と妖しげな文字で書かれている。
そして次の頁は、韓国大使館を背景に怪しげな女が坂道に立っていた。
『幽霊坂』だ。
マスターも背後から興味深げに覗き込んでいる。
そして『青山霊園』、『麻布トンネル』とこの辺りの怪しげな場所とそこに現れる物の怪の絵が続く。
そして舞香が最後の頁を開いた。
「ほえっ?」
マスターがいきなり奇妙な声をあげた。
『古本喫茶 かすみ』
その絵はこの店の入り口であり、店の前には腰の曲がったお婆さんが黒い表紙の本を大事そうに抱えて立っていた。
*******
あ~、このような終わり方は天虚空蔵的には不快です。
決着をつけたい。
来月のお題でこの続編を書きます!(ふたば様のお題次第ですが…)
え?続きの話なんか書くと、800字の短編練習にならない?
すみません。まだまだ未熟者です。
新しい月となりました🌸
4月1日はエイプリルフールですが、無理に嘘を吐こうとしても案外難しいですね。
ふたばのリアル職業は営業なのですが、今朝お客さんとの電話で、挨拶代わりに一瞬でバレそうな嘘をと、同業他社を名乗ったところ、他社に転職して乗り換えたのだと、相手先の会社で噂が広まり、その話が上司の耳まで届いてしまいました🌱💦
人事異動の季節なのが悪かったですね(´・ω・`)
それでは、今月のお題です⊂( っ*´ω`*)っ📝
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【4月お題】
「絵本」「珈琲」「霞」
投稿期間 4/1 0:00〜4/28 23:59
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折角吐いた嘘が、嘘認定されなかった原因のもうひとつが、普段から嘘を吐かなかったからだという点でした。オオカミ少年の逆ですね📣🐺
“作り話”なら得意なんですけどね。例えばそう、会社での失敗談だとか。笑
そんなこんなで、皆様のお話もお待ちしております。勿論、嘘偽り無い実体験も大歓迎で御座います(っ`👅´c)
……ちなみに、ふたばが土曜日の今日も営業のお仕事をしていたのは嘘偽りの無い事実です……(ᐡ ̥_ ̫ _ ̥ᐡ)🌱
@ふたば様
さすがですね。
想定した回答は②でした。
もし少女の霊が店長に恨みなどを持っていれば、風子ちゃんが穏やかに見守っていないでしょう。
そしてご推察通り、店長にちょっかいを出そうとした常連は彼女の怒りを買って痛い目に遭うということでした。
いやいや、文章の裏に埋め込んだところを読み取って貰えると嬉しいですね。
また来月楽しみにしています。
@芝阪雁茂 さんこんばんは( ᴗ ̫ ᴗ )
主催の私が1番怠惰な掲示板なので、参加して下さるだけでも感無量で御座います🥹
明らかに異質なトイレ…、そんなものに出会ってしまったら触りたくも無いですが、その中にもし花子さんがいるのだとしたらどんなレア花子さんが出て来るのか気になってしまいますね│・_・)
そう考えてみると、この禍々しい光も、ピックアップ花子さんガチャのSSR確定演出のように思えて来ました。笑
午後4:44に1度だけ引ける七不思議ガチャ……
これが現代版都市伝説なのかもしれません✞👻✞
@天虚空蔵 さん、今月もご参加有難う御座います🌱
めちゃくちゃ返信したつもりでしたが、全然そうじゃありませんでした…申し訳御座いません( ꜆ᵒ̴̶̷̥́ㅿᵒ̴̶̷̣̥̀ )꜆💦
本編の方でも言われておりましたが、風子さんの訛りは、山形弁の範疇を超えておりますね。名古屋弁もわりと「みゃあみゃあ」言うのですが、ソース顔のおっちゃんぐらいしかみゃあみゃあ言わないので、若い方にももっと方言も含め地元愛を持って欲しいですね(*ΦωΦ*)
そして3択問題の回答ですが、この3択は一見どれも理由として有り得そうで、且つ全てが同時に当て嵌る可能性すらあるので難しいですね。しかし、だからこそそこにクイズを解くヒントがあると考えます。
この問題には、3択問題という性質上、絶対条件として『答えはこの内の1つのみ』というものがあります。(“数の指定なく選べ”では無く“択”であるため)
これは裏を返せば『正解は全部でしたw』オチは無いという事であり、『その選択肢が答えである時、他の選択肢は当て嵌らなくなる』という事です。
そこを起点に考えを進めると、他の選択肢と同時に理由として成立しうる『① 彼女を拉致、殺害した犯人が店長だったから。』 が正解の候補から1番遠い事が分かります。
少女が幽霊になったという事は、この世に未練があったという事であり、その未練を仮に、「私を忘れないで欲しい」とした場合は①と②が、「あなたを恨んでいる」とした場合は①と③が同時に成立しうる事になります。
逆に②と③を同時に成立させようとした場合、少女の霊が求める(未練としている)のは“愛”なのか“お金”なのか、という矛盾が発生します。
霊は思念体であり、本質は願いや想いですから、愛もお金もとブレている状態で存在出来るとは思えません。つまり、独立した理由になり得る可能性が高いのは②か③に絞られます。
そして、次にこの2択で考えるとなると、判断基準は『死んだ少女は店長を恨んでいるのか』になるかと思います。
恨んでいるのならば③が正解であり、恨んでいないのならば②が正解です。
「幽霊の様子がわからないのに、恨んでいるか判断なんて出来ない」と思われるかも知れませんが、これに関してはちゃんと文中にヒントが有ります。
それが、店長の『ピンピンしてる』発言ですね。
店長は『少女の霊を見ていないから』という意味でこのセリフを発しておりますが、少女が店長を恨んでいる場合、姿が見える見えないに限らず少女霊は店長に悪影響を及ぼす筈です。
しかし実際のところ、店長に悪影響は無く、むしろその他の人達に障りが起こっております。
という事はつまり、死んだ女子高生は店長を恨んではおらず、選択肢の③が除外されるので、残った『② バイトをしていた頃、ずっと店長のことが好きだったから。 』
が答えになります。
ちなみに、店長以外の人たち(おそらく少女の霊を目視した方々)が尽く事故や病気など不幸な出来事に遭遇した理由ですが、これも2パターンくらい考えられます。
一つ目は「店長と2人きりで居たい少女が、邪魔者を排斥しようとした結果」というものです。
この場合、店長が霊の姿を見ていないのは、単純に霊感が無いからという事になります。
2人きりになりたいくらい好きなのに、想い人が自分を認知してくれない、とぷりぷりしている姿が想像出来て可愛らしいですね。排斥される側からしたらいい迷惑ですけれど。
二つ目は「霊を見た者達が、その悍ましい見た目に精神的ショックを受けた結果」というものです。
個人的には、こちらの方が可能性が高いと考えております。
というのも、先のパターンだと、がっつり霊を見ている風子さんに何も起きて無いのが不自然だからです。
また、このパターンの場合、店長が少女霊を目視していないのは、霊の方が姿を見せないように“目を塞いでいるから”という可能性が高いです。
「店長の事は好きで一緒に居たいけど、死に姿が惨過ぎて、店長には見られたく無い」そんな乙女心から、店長にだけは姿を見られないようにしたのだと私は考えます。
風子さんは霊媒体質で、エグい見た目の霊には慣れっこだから、彼女だけは影響が無いのでしょう。
こうなってくると、風子さんが霊の外見を一切語らなかった理由も「そういう見た目だから伝えるに伝えられない」という事かも知れませんね。
いやぁ、乙女心って難しいですね(ゝ’ᜊ’)💓
御無沙汰致しております(礼)。
先月後半に急に忙しくなってしまって、投稿に間に合いませんで、今月はどうにか間に合いました(汗)。
学校の定番の怪談を駆け足で完成させまして御座います。
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『奥から三番目』
あっ、どうも。冴本謙斗(さえもと・けんと)って言います。
都市伝説と申しますか、学校七不思議ってのが何故か付いて回りますが、存在しない筈の場所が出現したら、貴方はどうされますか。
そんな話を、今回は致しましょう。
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やれ特定の時刻か誰も居ない時に音楽室で、ピアノが鳴り始めたり、音楽家の肖像画を見ると目が動くだの、理科準備室に居たら人体模型が襲い掛かって来るだの、言ってしまえばその手の本や他校の模倣みたいな話は、僕の学校にも少なからず存在した。
然し、奥から三番目のトイレ………男子トイレしか入った事は無いから分からないのだけど、少なくともマンモス校以後に建てられた比較的新しめの校舎だった事から、男子トイレに関して言えば、小用は4つから5つだったのに対して、大だと2つ、3つのドアは有っても、残り1つは御察しの通り、掃除用具入れなので奥から三番目は存在しない訳だ。
だが………
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クラブ活動が終わって、暗くなり始める時間に、たまたま忘れ物をした後に催(もよお)して、用を足した直後に水を流すボタンを押して後ろを振り向いた僕は、大のトイレのドアの数を数えて違和感を覚える。
「………あれ?3つ?掃除用具のドアで4つ?」
奥から三番目、掃除用具の隣にもう1つ、本来無かった筈の………
ドアが有った、と言うより出現した。
しかも、本来の白に黄色がかった色味よりも何だか異様な………紫色でフニャフニャ光っている様に見える。
手を伸ばすと戻れそうに無いと、その時に変に冷静な判断力の働いた僕は、その場を離れる。
「………うー」
廊下に出た瞬間、何者かの悔しそうな声がして、「ああ、連れ去る獲物でも探していたのか」と今でこそ考えられるが、無意識に目の前の教室の時計を見上げるしか、僕は出来なかった。
16:44。
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数日後、騒がしい男子と女子数名が行方不明になる出来事が起きて、そのトイレから上履きが見付かったらしいけどまさかな………やれ、その子等はこっくりさんだ、言い返せない生徒を冷やかして、耐え切れずに転校した生徒に謝罪せずにのうのうと過ごしていたと、悪い噂が絶えなかったから、冷やかしで又やらかしたろうと言えば、それ迄かも知れないが。
それでは今回も三題+三題怪談で行きますね。
花言葉を入れるので「ボタン」は当然「牡丹」になります。
やっぱり"ケモ耳"が厳しい。
『英雄ポロネーズを弾く彼女』********
「ふう、今日も忙しかったにゃ。」
閉店一時間前だがぷっつりと客の途切れたレストランのフロアで、三波風子はカウンターのスツールに腰を下ろした。
先ほどまでほぼ満席に近かったのだが、潮が引くように客がいなくなった。
「今日は三月十五日だからね。常連客はみんな知ってるんだよ。」
カウンターの向こうでグラスを拭きながら店長が店の奥にある小さなステージに置いてあるグランドピアノを指差して、風子に語ってくれたのはこんな話だった。
今から七年ほど前、ある高校生の女の子がこの店でバイトをしていた。
今はメイド風の制服なのだが、その頃は薄いピンクに大きなぼたんの花をあしらったチャイナドレス風の制服で、見た目の可愛い彼女は客の人気を集めていた。
彼女はピアノが得意で、客足が少なくなる夜遅い時間などには客のリクエストに応えてよくピアノを弾いていた。
可愛い子ぶりっこが板についていた彼女は、猫耳のカチューシャを着け、制服の柄であるぼたんの花言葉の”壮麗”という言葉にちなんで、ショパンの『英雄ポロネーズ』をよく弾いていた。
そんな彼女がある日突然、仕事帰りに行方不明となったのだ。
質の悪い店の客に拉致されたのではないかと憶測が飛び交ったが、彼女の行方は今でも分からないままだ。
そしてその翌年から、彼女がいなくなった三月十五日の深夜になると、誰もいないステージから『英雄ポロネーズ』が聞こえるという噂が流れ始めた。中には、ピアノの前に座る彼女の姿を見たというものが現れ、尽く事故や病気など不幸な出来事に遭遇したと言う。
そんな噂は都市伝説として瞬く間に常連達の間に広がった。
「そして三月十五日は毎年このありさまさ。」
「店長は見たことあるにゃ?」
「いや、一度もないよ。だからこうやってぴんぴんしてるのさ。」
「ふ~ん。でもその子はさっきからずっとピアノの前に座って店長の事を見てるにゃ。」
風子はそう言って、ニヤッと笑いステージを指差した。
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文字数制限によりここで終わりにしましたが、さあ、三択です。
何故女の子の幽霊は店長の事を見ていたのでしょうか?
① 彼女を拉致、殺害した犯人が店長だったから。
② バイトをしていた頃、ずっと店長のことが好きだったから。
③ 行方不明になる直前のバイト料が未払いのままだったから。(給料日は毎月十五日)
新しい月となりました🌱
今年はどうやら花粉が多いそうですが、植物そのものの私は花粉をアレルゲンとは思わないのでノーダメージです。笑
皆さんも植物と友達になれば、きっと花粉症にはならないかも知れません🌲🤝
それでは、今月のお題です⊂( っ*´ω`*)っ📝
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【3月お題】
「都市伝説」「ピアノ」「ボタン」
投稿期間 3/1 0:00〜3/28 23:59
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近頃、怖い話で考察系のお話がよく色々あがっておりますが、流行っているのでしょうかね。私も乗ってみようかしらん( ˙꒳˙ )???
『ボタン』ってカタカナ表記にすると、留め具なのか、スイッチなのか、或いは花の名前なのか、意外と同音異義語が多くてどんな使われ方をされるのか楽しみですね(*ฅ́˘ฅ̀*)🌸
皆様のご参加お待ちしております( ᴗ ̫ ᴗ )