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どうも、水場の主を書いたものです。稚拙な文でしたが、励まされるコメントがあり、とても恐縮です。怖話だけに(笑)
いまから話すのは、五年前のこと。ちょうどAと知り合い始めたころのこと。
当時、知り合ったばかりのAと中学からの付き合いのあった友人(B、Cとおく)とオレの部屋で遊んでいた。
Aとは妙に馬が合い、知り合ったばかりなのによくつるんでいた。
オレ「それでさ~、○○と△△がいい感じなんだよ~。ちきしょう。いいなぁ」
B「ははは、お前モテないのか~。どうせ、今年もチョコゼロだろ?」
オレ「いや、義理で2個もらえた」
B「ちっきしょう!俺だけかよ!0はッ!」
A,C「ぶッ、まじか(笑)」
そんな他愛もない話をしていた。
ドタタタタタ。
誰かが階段を下りてくる音がする。上の居間でテレビを見ていた兄だろうか。
オレ兄「うお!結構人数いるな。心霊スポットでもいかね?」
オレ「なぜに(笑)」
オレ兄「心霊特集やってたんだよ。でさ、心霊スポットでも行こうかと思ったんだよ」
オレ「俺は賛成だな、暇だし」
B「おぉ~、いいじゃないすか」
C「賛成で」
オレや友人はおおかた賛成した。しかし、なぜかAだけは猛烈に反対した。
A「やめときましょうよ!心霊現象なんてある実証ないですから!」
B「おいおい、ビビってるのか?」
オレ兄「Aにそんな一面があるのか、意外だな(笑)」
Bとオレ兄に無理やり抑え込まれた形で、Aも賛成した。
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オレ兄の車で市街地を出て、森のほうに進む。森の手前のコンビニで車を止め、そこからは徒歩。俺たちが向かってるのは、廃病院。この前、オレ兄の友人が見つけたらしい。しかし、誰も入ろうとはしなかった。要因は、廃病院の入口にある忌々しい鉄柵だ。でかでかと立ち入り禁止が書いてある。
俺たちはペンチなどを駆使して、小さい穴を大きくして廃病院に入った。
A「ここは・・・・やばいな・・・・・」
Aがそんなことをつぶやいていた。だがオレ達は気にしなかった。
田舎の病院としては結構大きい。三、四階建ての建物が3つくらい並んでた。
俺たちは一号棟、病室や手術室があるところに入った。
中は想像通りの荒れよう。ソファは何個も倒れてたり、テレビが落ちてたり、表札が落ちてあったり。足場がぎりぎりあるような状態だった。
オレ兄「進みにくいな」
B「廃病院なんて、こんなもんっすよ!」
Bの底なしの明るさは、緊張をほぐしてくれた。
病室を一つずつ回っていく、やはり、こちらもひどい荒れよう。シーツは散乱し、カーテンは全て落ちている。
2階のとある病室に入った。こちらも、他と同様の荒れよう。しかし、ひときわ目を引くものがあった。ぬいぐるみだ。しかも、きれい。新品のようだった。
オレ「あれだけ、なんで新しいんだ?」
A「先客とかが忘れてったんじゃねいか?・・・・・だといいけど」
オレ「ん?」
A「いや、なんでもない」
ぬいぐるみ以外は特になにも無かったので、病室を出た。
他の病室や、いろいろな検査室に入ったが、特に何もなかった。
残すは手術室と、地下一階だけだとなった。
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ここまで特になにもなく、手術室に来た。さすが、手術室といったところか、異様な雰囲気を醸し出していた。
オレ「こえー(笑)」
C「やべーな(笑)」
オレ兄「だな(笑)」
B「中ボスはさすがですな(笑)」
と、ここまでなにもなかったからかオレ達は余裕の表情で、会話していた。
オレはAに振り返って、冗談でも言おうかと思ったが、Aはそれどころじゃなかった。
顔が青ざめていて、今にも吐きそうになっていた。
オレ「だ、大丈夫か?」
B「よかったな、俺エチケット袋あるぞ。はいよ」
Aはエチケット袋を受け取る。
A「ありがとう・・・」
Aはそれを折りたたんで、ポケットにしまった。
オレ兄「さ、行くぞ!」
オレ兄は勢いよく、手術室のドアを開けた。
やはり、中は散々な荒れよう。床には大量の薬品が落ちていて、血で黒ずんだメスまで落ちている。やはり、手術室。めっちゃこわい。
B「ん?なんでこんなところに紙が?」
しばらく探索していると、Bがなにかを見つけたようだ。
みんなBに駆け寄る。
オレ「なんだ?」
Bはオレ達に紙を見せてくる。
オレ兄「それはカルテだな。写真はみくいけど、どうやら男の子だな」
確かに、写真はところどころ消えて見えにくいが、男の子には見えた。
ぺタ。ぺタ。
!何かが歩いて近づいている?!
全員が誰かが近付いていることを悟った。そして、音の主の方向に振り向いた。
視線の先には、カルテの男の子と輪郭が似ている男の子がそこにいた。腕にはあのぬいぐるみが握られている。
男の子が視線を向けている先にいるのは、Bだった。
目をそらせ!とBに言おうとしたときには遅かった。ちょうどBが男の子に振りかえったところだ。
その瞬間、男の子はニタリと笑う。背筋が凍るような不気味な笑顔だった。
B「うわあああああああああああああああ!!!!」
Bが急に発狂しだして、手術室を猛烈なスピードで出て行った。
オレ達は唖然とした。気づいたら、男の子もいなくなっていた。
オレ「どうしたんだ?あいつ。ってか、さっきの・・・・」
C「わかんない」
オレ達は、さっきの現象に恐怖感を感じずにはいられなかった。
オレ兄「とりあえず、Bを探そう」
オレ兄の一言で、オレ達は動く。そして、オレ達は手術室から出た。
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今まで回ってきたところを、全て回ったが特になにもなかった。Bもいないし、男の子もいなかった。
行きたくはなかったが、さっきの手術室も行った。特に何もなかった。
とうとう、地下一階を探索することになる。オレ達の緊張も頂点に達していようとしてた。
地下一階には、見たところ手前に二つ奥に二つの、4つの部屋で構成されていることが分かった。
地下一階自体、手術室よりも異様な雰囲気を放っていた。しかも、表札がないからか、霊安室がどこかちっともわからない。それが、俺たちの恐怖を掻き立てた。
オレ「とっととBを連れ出して、この病院をでるぞ!」
恐怖でどうにかなりそうだったからか、ほぼ怒鳴り声で言った。そして、なぜ手前の方のドアを開けず、奥のドアを開けたのだろう。
オレはドアを開け、中に入る。
周りを懐中電灯で照らしてみる。なにもない。
オレのちょうど右90度のところを照らすと、足が見えた。靴はBの物で間違いない。
オレ「おいB!なにがどうし・・・」
そのあとの言葉が続かない。Bを照らすと、Bは頭から血を流していた。そして、Bの向こう側には、あの男の子がいた。
Bと男の子は何か喋っていた。
パニックで走りたくなった。しかし、体が動かない。立ったまんま金縛りにあった気分だ。
オレ「・・・・・ッ・・・・・ッッ・・・・・」
言葉を発そうとしていても、言葉にならない。
Bがこっちを振り返る。やはり、顔も血だらけだった。
聞こえなかったが、何をいってるかわかった。
B「お前も加わるか?」
そこでオレは引っ張られ、部屋を出た。引っ張った主はオレ兄だった。
そして、Aが勢いよくドアを閉める。そして、Aは鬼の形相で。
A「ここを出るぞ!」
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オレ達は、全力疾走で病院をでた。
オレ「なんなんだよ。あれはよ・・・・・」
オレの目には、血だらけでも談笑しているようなBが焼き付いて離れない。
恐怖とBを失った悲しみからか、涙が止まらなかった。
AもCも同じだった。あんな奴でも、オレ達を笑わせてくれた大事な仲間だったから。
オレ兄は、ここに連れてきたことに罪悪感と解放された恐怖からか、うつむきながら泣いていた。
そんな、オレ達に近づいてくるひとつの光が、森林の中で輝いていた。
いままでの現象から、オレ達はその光にさえも警戒心を抱いた。茂みの中に隠れ、やり過ごそうとする。
その光は、オレ達の近くを煌々と照らしていたが、やがてその場から離れようとした。
そのとき、急いで茂みに隠れたCが大勢を崩して、近くの枝を折ってしまった。
パキッ。という乾いた音が森に響く。
その音に反応して、光は止まる。
頼む。気づかないでくれ。
しかし、その願いは儚くも消えた。
その光は、Cのもとへ近づいた。もう、終わりだと思った。
?「くらぁ!お前らここで何をしている!」
その声は紛れもなく人だった。
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その声は、オレ達に安堵をもたらした。
改めて光の主を見ると、懐中電灯を持った坊さんだった。
坊さん「お前ら、ここで何をしている。まさか、あの病院に入ろうとしたんじゃないんだろうな?」
オレ「いえ、あの病院に入って、出てきたところです」
オレが、そういった瞬間。坊さんの顔が、青ざめる。
坊さん「お前ら、なんてことをッ・・・・・」
青ざめた顔が怒りの顔になる。
坊さん「ちょっとこい!」
オレ達は坊さんに連れられ、オレ達が来た方とは違う道にあった寺に来た。
そこの仏間に通されて、坊さんから事情を聞かされた。
動機と、廃病院でのことについて全て話した。坊さんがBのくだりで険しい顔になったのを、オレは見逃さなかった。
坊さんは、落ち着いて告げた。
坊さん「お前らは、大変なことをしてしまった。だが、わしが救ってやる。こっちへきなさい」
オレ達は何が何だか全く理解できなかったが、黙って坊さんについていけばなにかわかるような気がした。
また違う部屋に連れてこられた。
その部屋は、ろうそくでぼんやり明るい。中には、人数分布団が用意させられていた。
坊さん「ここで寝なさい。そして、この部屋のふすまを開けてはならない。絶対にだ」
寝てふすまなんか開けられるの?
と、疑問を持ったが、坊さんの剣幕で言うことができなかった。
とりあえず、オレ達は布団に入る。それを確認すると、坊さんはふすまをぴしゃりとしめた。
いきなり寝ろといわれても、寝れない。しばらくすると、周りからお経が聞こえてきた。最初はうるさいと感じてた。
オレ「はッ!?」
どうやら寝てたらしい。俺が起きたところは、さっきと同じ部屋だった。
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C以外全員いる。
オレ「みんないるんだな」
A「ああ、みんないる。坊さんが言ってたふすまを開けてはならないの意味が分かった。ここは夢の中だ」
オレ「そうなのか?!」
そう言えわれてみれば、お経が聞こえない。そして、ふすまからあの病院の霊安室と同じくらいの異様さを感じた。
オレ「やべぇな・・・・」
A「ああ」
オレ兄「何をやっても覚めそうにないから、しゃべってようぜ」
オレ「おう」
A「ですね」
しばらくは何事も無かったかのように談笑を続けた。だが、みんなBがいなくなったことによる不安はぬぐい切れていないようだった。
B「あけてくれ~」
突然、ふすまの向こうから聞こえた。その声はB似ているどころか。本人だと思う。
C「Bか?!Bなのか?!」
B「ああ、そうだよ。早くあけてくれ~」
Cはその声に反応してふすまを開けようとするが、Aがとっさに止めた。
A「ふすまを開けるな!俺達がどうなるかもしらねぇんだぞ!坊さんのあの剣幕見ただろ?!」
C「う。ご、ごめん」
突然なBの出現によって、俺たちは困惑した。それらは全て精神的にくる。
それからも談笑を続けようとするが、Bがふすまの外から「あけてくれ~」とか催促してくる。
何十分、何時間続いたのだろう。
Bの声は明らかに変わっていった。
B「あけろよッ!開けろって!俺だよ、俺もわからないのか?!」
Bに完全に焦りが見え始めている。
だんだん、あれは本当にBなんじゃないか?って考えが浮かぶ。しかし、オレはその考えが浮かぶたんびに、首を振って否定した。
C「もしかしたらBじゃないのか?」
Cが立って、ふすまを開けるべく、ふすまに近づく。
オレ「やめろッ!」
そんなCをオレは後ろに投げ飛ばし、ふすまから遠ざけた。そして、オレはふすまの外からオレ達を誘ってくる何かに、オレは言った。
オレ「お前はBなんかじゃない!この化け物がッ!消えろッ!消えろおおおおお!」
バンッ!
ふすまに何かが当たる。ふすまが破けんばかりの衝撃だった。
shake
B「あの時殺しておけばよかったな・・・・」
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そこで、目が覚めた。ふすまが開いている。そこから漏れる光は間違いなく朝を示していた。
そして、坊さんが開いたふすまの前に立って、これ以上にない優しい表情で、優しい声音で、泣きながら「良かった、良かったッ!」とつぶやいていた。
オレは今までの恐怖から解放されたという安心感からか、また泣いていた。
オレ兄や、Cもそうだった。Aだけは脱力して、壁に身を預けていた。
坊さんの後ろでは、オレの両親を含めた親たちが「本当によかった!」などとつぶやいて泣いていた。
坊さんはオレ達を連れて、またあの仏間に入った。
坊さんに座るよう指示され、人数分用意された座布団にそれぞれ腰かけた。
坊さん「ともかく、お前さんたち。よく帰ってきた。誘惑に負けなかったのは、お前さんたちの絆と底なしの根性だ。本当に、よく帰ってきた」
坊さんはそういうと、残った涙を指でぬぐった。
坊さん「お前さんたちに、話さなければいけないことがある。それは、Bのことだ。Bは鉄柵にへばりついておって、お前さんがたの名前を呼んで、こっちこーいと叫んでおった。その姿をみた何人かの弟子が気をくるわせた。今は大丈夫だがな」
オレ「つまり、Bは生きてたってことですか?!」
坊さん「ああ、そういうことだが」
オレ「けど?」
坊さん「あれは、もう人外になっておる。ここじゃ祓うことができないから、もっとよい寺に搬送してある。Bのご両親もそこに引っ越すそうだ」
オレ「そうなんですか・・・・」
オレ兄「すいません!俺なんです!ここにBもこいつらも連れてきたのは!俺なんです!本当にすいません!」
オレ兄は罪悪感からか、坊さんに謝り始めた。
坊さん「わしに謝っても意味がないし、もう過ぎてしまったことだ。Bの分まで精いっぱい生きなさい」
オレA「・・・ッ・・・うッ・・・・ありがとうございますッ」
オレAは泣きながらも、坊さんに感謝した。
坊さん「さてと、次にあの廃病院のことだ。あの廃病院はな、結構最近まで普通に営業していたんだ。だけどな、そこの外科部長がある男の子を術死させてしまってから、おかしくなってしまったんだ。男の子を手術から1週間で、外科部長が自殺した。
しかも、死に顔が満面の笑みだったそうな。そのあと、男の子の手術のスタッフが自殺していった。外科部長と同じようにな。その他にも死んでいった。院長は病院の近くにあったこの寺に来て、この地を誰も来させないように、中の霊を閉じ込めてくださいって言ってきた。
それから数日後、院長が死んだんだ。でな、地下一階の四つの部屋はすべて、病院スタッフと男の子の霊安室になっておる」
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オレ兄はそれぞれの親に謝り、オレ兄の車で帰った。公園を通ったあたりで、なにかのつぶやきが聞こえた・・・・さびしげだった・・・・。
後日談。二年後、Aから連絡がきた。
オレ「お、久しぶりだな!大学受験で一年くらいあってないよな!」
A「おう、実はな・・・・」
大学受験のためそれぞれ一年間会わずに準備してたんだが、Aの声がこわばっていた。
オレ「どうした?」
A「実は、Bを見かけたんだよ。病院で。いや、ひどく似てたからそうだと思ったんだけど」
オレ「まじか、あいつ正常に戻ってこの町に戻ってたんだな」
Aは一呼吸おいた。
オレ「どうしたんだよ。ますます怪しいぞ?」
A「いや実はな、Bもどきが一人の子供にぬいぐるみをあげてたんだよ。そのぬいぐるみ、あの病院にあったやつと同じだったんだよ」
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