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長編11
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カルテ

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どうも、水場の主を書いたものです。稚拙な文でしたが、励まされるコメントがあり、とても恐縮です。怖話だけに(笑)

いまから話すのは、五年前のこと。ちょうどAと知り合い始めたころのこと。

当時、知り合ったばかりのAと中学からの付き合いのあった友人(B、Cとおく)とオレの部屋で遊んでいた。

 Aとは妙に馬が合い、知り合ったばかりなのによくつるんでいた。

オレ「それでさ~、○○と△△がいい感じなんだよ~。ちきしょう。いいなぁ」

B「ははは、お前モテないのか~。どうせ、今年もチョコゼロだろ?」

オレ「いや、義理で2個もらえた」

B「ちっきしょう!俺だけかよ!0はッ!」

A,C「ぶッ、まじか(笑)」

 そんな他愛もない話をしていた。

 ドタタタタタ。

 誰かが階段を下りてくる音がする。上の居間でテレビを見ていた兄だろうか。

オレ兄「うお!結構人数いるな。心霊スポットでもいかね?」

オレ「なぜに(笑)」

オレ兄「心霊特集やってたんだよ。でさ、心霊スポットでも行こうかと思ったんだよ」

オレ「俺は賛成だな、暇だし」

B「おぉ~、いいじゃないすか」

C「賛成で」

 オレや友人はおおかた賛成した。しかし、なぜかAだけは猛烈に反対した。

A「やめときましょうよ!心霊現象なんてある実証ないですから!」

B「おいおい、ビビってるのか?」

オレ兄「Aにそんな一面があるのか、意外だな(笑)」

 Bとオレ兄に無理やり抑え込まれた形で、Aも賛成した。

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 オレ兄の車で市街地を出て、森のほうに進む。森の手前のコンビニで車を止め、そこからは徒歩。俺たちが向かってるのは、廃病院。この前、オレ兄の友人が見つけたらしい。しかし、誰も入ろうとはしなかった。要因は、廃病院の入口にある忌々しい鉄柵だ。でかでかと立ち入り禁止が書いてある。

 俺たちはペンチなどを駆使して、小さい穴を大きくして廃病院に入った。

A「ここは・・・・やばいな・・・・・」

 Aがそんなことをつぶやいていた。だがオレ達は気にしなかった。

 田舎の病院としては結構大きい。三、四階建ての建物が3つくらい並んでた。

 俺たちは一号棟、病室や手術室があるところに入った。

 中は想像通りの荒れよう。ソファは何個も倒れてたり、テレビが落ちてたり、表札が落ちてあったり。足場がぎりぎりあるような状態だった。

オレ兄「進みにくいな」

B「廃病院なんて、こんなもんっすよ!」

 Bの底なしの明るさは、緊張をほぐしてくれた。

 病室を一つずつ回っていく、やはり、こちらもひどい荒れよう。シーツは散乱し、カーテンは全て落ちている。

 2階のとある病室に入った。こちらも、他と同様の荒れよう。しかし、ひときわ目を引くものがあった。ぬいぐるみだ。しかも、きれい。新品のようだった。

オレ「あれだけ、なんで新しいんだ?」

A「先客とかが忘れてったんじゃねいか?・・・・・だといいけど」

オレ「ん?」

A「いや、なんでもない」

 ぬいぐるみ以外は特になにも無かったので、病室を出た。

 他の病室や、いろいろな検査室に入ったが、特に何もなかった。

 残すは手術室と、地下一階だけだとなった。

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 ここまで特になにもなく、手術室に来た。さすが、手術室といったところか、異様な雰囲気を醸し出していた。

オレ「こえー(笑)」

C「やべーな(笑)」

オレ兄「だな(笑)」

B「中ボスはさすがですな(笑)」

 と、ここまでなにもなかったからかオレ達は余裕の表情で、会話していた。

 オレはAに振り返って、冗談でも言おうかと思ったが、Aはそれどころじゃなかった。

 顔が青ざめていて、今にも吐きそうになっていた。

オレ「だ、大丈夫か?」

B「よかったな、俺エチケット袋あるぞ。はいよ」

 Aはエチケット袋を受け取る。

A「ありがとう・・・」

 Aはそれを折りたたんで、ポケットにしまった。

オレ兄「さ、行くぞ!」

 オレ兄は勢いよく、手術室のドアを開けた。

 やはり、中は散々な荒れよう。床には大量の薬品が落ちていて、血で黒ずんだメスまで落ちている。やはり、手術室。めっちゃこわい。

B「ん?なんでこんなところに紙が?」

 しばらく探索していると、Bがなにかを見つけたようだ。

 みんなBに駆け寄る。

オレ「なんだ?」

 Bはオレ達に紙を見せてくる。

オレ兄「それはカルテだな。写真はみくいけど、どうやら男の子だな」

 確かに、写真はところどころ消えて見えにくいが、男の子には見えた。

 ぺタ。ぺタ。

 !何かが歩いて近づいている?!

 全員が誰かが近付いていることを悟った。そして、音の主の方向に振り向いた。

 視線の先には、カルテの男の子と輪郭が似ている男の子がそこにいた。腕にはあのぬいぐるみが握られている。

 男の子が視線を向けている先にいるのは、Bだった。

 目をそらせ!とBに言おうとしたときには遅かった。ちょうどBが男の子に振りかえったところだ。

 その瞬間、男の子はニタリと笑う。背筋が凍るような不気味な笑顔だった。

B「うわあああああああああああああああ!!!!」

 Bが急に発狂しだして、手術室を猛烈なスピードで出て行った。

 オレ達は唖然とした。気づいたら、男の子もいなくなっていた。

オレ「どうしたんだ?あいつ。ってか、さっきの・・・・」

C「わかんない」

 オレ達は、さっきの現象に恐怖感を感じずにはいられなかった。

オレ兄「とりあえず、Bを探そう」

 オレ兄の一言で、オレ達は動く。そして、オレ達は手術室から出た。

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 今まで回ってきたところを、全て回ったが特になにもなかった。Bもいないし、男の子もいなかった。

 行きたくはなかったが、さっきの手術室も行った。特に何もなかった。

 とうとう、地下一階を探索することになる。オレ達の緊張も頂点に達していようとしてた。

 地下一階には、見たところ手前に二つ奥に二つの、4つの部屋で構成されていることが分かった。

 地下一階自体、手術室よりも異様な雰囲気を放っていた。しかも、表札がないからか、霊安室がどこかちっともわからない。それが、俺たちの恐怖を掻き立てた。

オレ「とっととBを連れ出して、この病院をでるぞ!」

 恐怖でどうにかなりそうだったからか、ほぼ怒鳴り声で言った。そして、なぜ手前の方のドアを開けず、奥のドアを開けたのだろう。

 オレはドアを開け、中に入る。

 周りを懐中電灯で照らしてみる。なにもない。

 オレのちょうど右90度のところを照らすと、足が見えた。靴はBの物で間違いない。

オレ「おいB!なにがどうし・・・」

 そのあとの言葉が続かない。Bを照らすと、Bは頭から血を流していた。そして、Bの向こう側には、あの男の子がいた。

 Bと男の子は何か喋っていた。

 パニックで走りたくなった。しかし、体が動かない。立ったまんま金縛りにあった気分だ。

オレ「・・・・・ッ・・・・・ッッ・・・・・」

 言葉を発そうとしていても、言葉にならない。

 Bがこっちを振り返る。やはり、顔も血だらけだった。

 聞こえなかったが、何をいってるかわかった。

B「お前も加わるか?」

 そこでオレは引っ張られ、部屋を出た。引っ張った主はオレ兄だった。

 そして、Aが勢いよくドアを閉める。そして、Aは鬼の形相で。

A「ここを出るぞ!」

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 オレ達は、全力疾走で病院をでた。

オレ「なんなんだよ。あれはよ・・・・・」

 オレの目には、血だらけでも談笑しているようなBが焼き付いて離れない。

 恐怖とBを失った悲しみからか、涙が止まらなかった。

 AもCも同じだった。あんな奴でも、オレ達を笑わせてくれた大事な仲間だったから。

 オレ兄は、ここに連れてきたことに罪悪感と解放された恐怖からか、うつむきながら泣いていた。

 そんな、オレ達に近づいてくるひとつの光が、森林の中で輝いていた。

 いままでの現象から、オレ達はその光にさえも警戒心を抱いた。茂みの中に隠れ、やり過ごそうとする。

 その光は、オレ達の近くを煌々と照らしていたが、やがてその場から離れようとした。

 そのとき、急いで茂みに隠れたCが大勢を崩して、近くの枝を折ってしまった。

 パキッ。という乾いた音が森に響く。

 その音に反応して、光は止まる。

 頼む。気づかないでくれ。

 しかし、その願いは儚くも消えた。

 その光は、Cのもとへ近づいた。もう、終わりだと思った。

?「くらぁ!お前らここで何をしている!」

 その声は紛れもなく人だった。

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 その声は、オレ達に安堵をもたらした。

 改めて光の主を見ると、懐中電灯を持った坊さんだった。

坊さん「お前ら、ここで何をしている。まさか、あの病院に入ろうとしたんじゃないんだろうな?」

オレ「いえ、あの病院に入って、出てきたところです」

 オレが、そういった瞬間。坊さんの顔が、青ざめる。

坊さん「お前ら、なんてことをッ・・・・・」

 青ざめた顔が怒りの顔になる。

坊さん「ちょっとこい!」

 オレ達は坊さんに連れられ、オレ達が来た方とは違う道にあった寺に来た。

 そこの仏間に通されて、坊さんから事情を聞かされた。

 動機と、廃病院でのことについて全て話した。坊さんがBのくだりで険しい顔になったのを、オレは見逃さなかった。

 坊さんは、落ち着いて告げた。

坊さん「お前らは、大変なことをしてしまった。だが、わしが救ってやる。こっちへきなさい」

 オレ達は何が何だか全く理解できなかったが、黙って坊さんについていけばなにかわかるような気がした。

 また違う部屋に連れてこられた。

 その部屋は、ろうそくでぼんやり明るい。中には、人数分布団が用意させられていた。

坊さん「ここで寝なさい。そして、この部屋のふすまを開けてはならない。絶対にだ」

 寝てふすまなんか開けられるの?

 と、疑問を持ったが、坊さんの剣幕で言うことができなかった。

 とりあえず、オレ達は布団に入る。それを確認すると、坊さんはふすまをぴしゃりとしめた。

 いきなり寝ろといわれても、寝れない。しばらくすると、周りからお経が聞こえてきた。最初はうるさいと感じてた。

オレ「はッ!?」

 どうやら寝てたらしい。俺が起きたところは、さっきと同じ部屋だった。

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 C以外全員いる。

オレ「みんないるんだな」

A「ああ、みんないる。坊さんが言ってたふすまを開けてはならないの意味が分かった。ここは夢の中だ」

オレ「そうなのか?!」

 そう言えわれてみれば、お経が聞こえない。そして、ふすまからあの病院の霊安室と同じくらいの異様さを感じた。

オレ「やべぇな・・・・」

A「ああ」

オレ兄「何をやっても覚めそうにないから、しゃべってようぜ」

オレ「おう」

A「ですね」

 しばらくは何事も無かったかのように談笑を続けた。だが、みんなBがいなくなったことによる不安はぬぐい切れていないようだった。

B「あけてくれ~」

 突然、ふすまの向こうから聞こえた。その声はB似ているどころか。本人だと思う。

C「Bか?!Bなのか?!」

B「ああ、そうだよ。早くあけてくれ~」

 Cはその声に反応してふすまを開けようとするが、Aがとっさに止めた。

A「ふすまを開けるな!俺達がどうなるかもしらねぇんだぞ!坊さんのあの剣幕見ただろ?!」

C「う。ご、ごめん」

 突然なBの出現によって、俺たちは困惑した。それらは全て精神的にくる。

 それからも談笑を続けようとするが、Bがふすまの外から「あけてくれ~」とか催促してくる。

 何十分、何時間続いたのだろう。

 Bの声は明らかに変わっていった。

B「あけろよッ!開けろって!俺だよ、俺もわからないのか?!」

 Bに完全に焦りが見え始めている。

 だんだん、あれは本当にBなんじゃないか?って考えが浮かぶ。しかし、オレはその考えが浮かぶたんびに、首を振って否定した。

C「もしかしたらBじゃないのか?」

 Cが立って、ふすまを開けるべく、ふすまに近づく。

オレ「やめろッ!」

 そんなCをオレは後ろに投げ飛ばし、ふすまから遠ざけた。そして、オレはふすまの外からオレ達を誘ってくる何かに、オレは言った。

オレ「お前はBなんかじゃない!この化け物がッ!消えろッ!消えろおおおおお!」

 バンッ!

 ふすまに何かが当たる。ふすまが破けんばかりの衝撃だった。

shake

B「あの時殺しておけばよかったな・・・・」

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 そこで、目が覚めた。ふすまが開いている。そこから漏れる光は間違いなく朝を示していた。

 そして、坊さんが開いたふすまの前に立って、これ以上にない優しい表情で、優しい声音で、泣きながら「良かった、良かったッ!」とつぶやいていた。

 オレは今までの恐怖から解放されたという安心感からか、また泣いていた。

 オレ兄や、Cもそうだった。Aだけは脱力して、壁に身を預けていた。

 坊さんの後ろでは、オレの両親を含めた親たちが「本当によかった!」などとつぶやいて泣いていた。

 坊さんはオレ達を連れて、またあの仏間に入った。

 坊さんに座るよう指示され、人数分用意された座布団にそれぞれ腰かけた。

坊さん「ともかく、お前さんたち。よく帰ってきた。誘惑に負けなかったのは、お前さんたちの絆と底なしの根性だ。本当に、よく帰ってきた」

 坊さんはそういうと、残った涙を指でぬぐった。

坊さん「お前さんたちに、話さなければいけないことがある。それは、Bのことだ。Bは鉄柵にへばりついておって、お前さんがたの名前を呼んで、こっちこーいと叫んでおった。その姿をみた何人かの弟子が気をくるわせた。今は大丈夫だがな」

オレ「つまり、Bは生きてたってことですか?!」

坊さん「ああ、そういうことだが」

オレ「けど?」

坊さん「あれは、もう人外になっておる。ここじゃ祓うことができないから、もっとよい寺に搬送してある。Bのご両親もそこに引っ越すそうだ」

オレ「そうなんですか・・・・」

オレ兄「すいません!俺なんです!ここにBもこいつらも連れてきたのは!俺なんです!本当にすいません!」

 オレ兄は罪悪感からか、坊さんに謝り始めた。

坊さん「わしに謝っても意味がないし、もう過ぎてしまったことだ。Bの分まで精いっぱい生きなさい」

オレA「・・・ッ・・・うッ・・・・ありがとうございますッ」

 オレAは泣きながらも、坊さんに感謝した。

坊さん「さてと、次にあの廃病院のことだ。あの廃病院はな、結構最近まで普通に営業していたんだ。だけどな、そこの外科部長がある男の子を術死させてしまってから、おかしくなってしまったんだ。男の子を手術から1週間で、外科部長が自殺した。

しかも、死に顔が満面の笑みだったそうな。そのあと、男の子の手術のスタッフが自殺していった。外科部長と同じようにな。その他にも死んでいった。院長は病院の近くにあったこの寺に来て、この地を誰も来させないように、中の霊を閉じ込めてくださいって言ってきた。

それから数日後、院長が死んだんだ。でな、地下一階の四つの部屋はすべて、病院スタッフと男の子の霊安室になっておる」

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 オレ兄はそれぞれの親に謝り、オレ兄の車で帰った。公園を通ったあたりで、なにかのつぶやきが聞こえた・・・・さびしげだった・・・・。

 後日談。二年後、Aから連絡がきた。

オレ「お、久しぶりだな!大学受験で一年くらいあってないよな!」

A「おう、実はな・・・・」

 大学受験のためそれぞれ一年間会わずに準備してたんだが、Aの声がこわばっていた。

オレ「どうした?」

A「実は、Bを見かけたんだよ。病院で。いや、ひどく似てたからそうだと思ったんだけど」

オレ「まじか、あいつ正常に戻ってこの町に戻ってたんだな」

 Aは一呼吸おいた。

オレ「どうしたんだよ。ますます怪しいぞ?」

A「いや実はな、Bもどきが一人の子供にぬいぐるみをあげてたんだよ。そのぬいぐるみ、あの病院にあったやつと同じだったんだよ」

Concrete
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