貴方は死にたくなった時どうしているだろうか?
趣味に没頭する。
それもいいだろう。
仕事に打ち込む。
それもいい。
だが、現実逃避ばかりしている人間はどうだろうか?
実は俺のことなのだ。
社会に出て三年目の今年、六社目の会社に就いた。
一生懸命やっているつもりなのだ。
だが、努力不足なのか、上手くいかない。
仕事も出来ないから人間関係も上手くいかない。
なにをしても上手くいかない。
甘えているとか努力が足りないのはわかっている。
ああだこうだ考えるのすら馬鹿らしい。
缶コーヒーを一気に飲み海を見つめる。
いっそ飛び込んでしまおうかとさえ思えてくる。
死ねば楽になれる。
そこまで考えてある考えが浮かぶ。
最後に学校にいこう。
突拍子もない考えが浮かぶ。
確か二年前に廃校になったはず。
最後に見ておくかとバスを乗り継ぎ学校に向かった。
学校は今時珍しい木造建築で老朽化している。
慣れ親しんだ校舎に心弾む。
三年三組の教室に通りかかった時、中からガサゴサ音がするのが気になり中に入った。
入った瞬間金属バッドで殴られたような衝撃を受けた。
景色は暗転していく。
ゆっくりと。
気がついたら校庭にいた。
夢でも見ているのだろうか?と辺りの様子をうかがう。
辺りにはなにもない。
酷く不快な気分にさせられる空間が広がっていた。
キーン。
金属音が響いたと思うとふたたび景色が暗転した。
気がつくとマウンドにあがっていた。
「なんとかなるって」
懐かしい声がする。
親友だったS君だ。
気がつくと目の前にはS君がいた。
俺は小学生のころ、野球をやっていた。
ピッチャーだった。
そして、S君はキャッチャーだった。
なんとかなるってはS君の口癖だった。
目の前の彼はあの時のままだ。
手にはボールが握られている。
俺はいつかのように彼からボールを受け取った。
瞬間景色がぐらついた。
覚醒が近いようだ。
彼は最後にとびきりの笑顔を向け、そして消えた。
目の前には見慣れた教室。
幻覚でも見ていたかのように現実感がない。
だが、手には泥で汚れたボールが握られていた。
校庭に出た。
かつて野球をしていた頃に汗を流したグラウンドはそのままだ。
小学生三年の頃S君は死んだ。
病死だった。
俺はそれ以来野球をやっていない。
何事にも熱心に取り組むこともなくなった。
理由は今でもよくわからない。
なんとかなるって。
彼の言葉が脳内で反響する。
俺は学校を出た。
また来年ここに戻ってくると心に誓って
作者月夢改