家のインターホンが鳴った
夜の9時だ
「誰?こんな時間に」
お母さんが不機嫌そうに呟いて扉を開けた
マンションに引っ越してきたある家族が挨拶にきたらしい
僕と同い年の女の子もいた。女の子はとても可愛かった
*・*・*
その女の子は花蓮という名だった
かなり気があって毎日毎日、彼女と遊んだ
学校でも帰って遊ぶ時も、僕の隣に彼女がいない日はなかった
*・*・*
彼女と出会った日から僕の中で変なことが起こりはじめた
幻聴が聞こえるんだ
さらに不思議なことにその声は死んだお爺ちゃんの声
朝起きると決まってこう言う
《逃げろ》
全く何に逃げればいいのか
*・*・*
彼女には、かわった趣味がある
それは、目玉グッズを集める事
彼女の、ヘアゴムにもスカートにも目玉がついている
当然のように、クラスの子達は気味悪がって近づこうとしなかった
先生までも彼女を異様な目でみた
その目玉が作ったと思えないくらいリアルだという理由もあったかもしれないが人の趣味を悪く思うなんて酷いと思った
*・*・*
お母さんが殺された、犯人は捕まっていない
お母さんの死体には目がなくなっていた
アメリカ人のお母さんの美しいブルーの瞳が失われていた
お母さんを殺した上に瞳まで盗んだ犯人を心底憎んだ
ショックで一週間立ち直れなかった僕を忙しいお父さんの代わりに彼女が支えてくれた
そのお陰で学校に行くことができた
教室に入ると三人欠席していた、活気のあるクラスはドンヨリしていた
学校の帰りに欠席してた子について彼女に問うと殺されたと言った
僕のいない一週間の間に何があったんだろうか
驚いて彼女を見るとふと彼女の赤いランドセルにつけてあるキーホルダーが目に入った
ブルーの瞳。
お母さんを思い出してしまった
気付いたらキーホルダーに触れていた
お母さんが死んで初めて悲しくなって泣いた
彼女が目を見開き僕を見たのがわかった
キーホルダーには赤黒い何かが付着していた
僕は泣きながら呆然と彼女をみた
手から鞄が滑り落ちた
彼女は笑っていた…怖いくらいに
ニタニタと
「……気づいちゃった?
ごめんね。あまりに綺麗だったから
子供だから疑われにくいの。だからお願い、少しだけでいいから知らないふりをして」
頭が混乱していた
彼女の言っている意味がわからなかった
*・*・*
大学卒業後
彼女と僕は結婚した
相変わらず彼女の趣味は変わっていない
目をくり抜かれ死亡する事件もまだ続いている
20年もの年月が経ったのに未だ犯人は逮捕されていない
世間では宇宙人の仕業だと言い出す始末である
たまに、彼女の目玉コレクションに赤黒い何かがついてる時がある
それが何かなんて考えたくもない
最後に言っておく
僕は彼女を愛している
『逃げろ』
どこかで死んだ父さんの幻聴がきこえた
作者マァー
犯人だとわかっていても最後まで信じ愛す
そんな夢物語があればいいなと思いかきました
目を通して頂きありがとうございました