夢なんて何時も忘れちゃうのに、あの夢だけは忘れない…怖すぎて中学生だと言うのに寝小便する始末…最悪な夢だった。
そんな、夢の話を。
…いつもの様な朝、母親に叩き起こされ、顔を洗い歯を磨いて朝食を取り…いつもの時間に登校。
途中、友人に会いそのまま一緒に学校へ…
毎日の当然の様な光景。いつもの生活リズム…
学校に着くとそのまま校庭へ部活動の朝練、僕は陸上部、陸上部はまずアップと呼ばれる準備運動から始まる…だが…
様子がおかしいのはこの時からだった…
部長が急にアップはやらずそのままトラックを二十周しろとの指示を出す…
不思議に思いながら軽く手足をほぐしながら走りだす…
校庭ではサッカー部も同じ様に朝練で汗を流しているのだが、我々陸上部がトラックを走りだすと、何故か彼らもボールをほっぽって一緒に走りだす…
「なにこれ?」
同じ部の友人に聞くと、彼は無言で、何も答えずただひたすら走るだけだ…
チャイムが鳴る…
終わったと思い立ち止まると、部長が怒鳴る!
「止まるな!」
仕方なくまた走りだす。
気がつくと、校庭のトラックじゃなく、いつもの通学路を走っている…しかも、陸上部やサッカー部だけじゃなく他の部の者まで走っている…バレー部、バスケ部、剣道部に卓球部、帰宅部まで…
まるで、毎年恒例のマラソン大会の様だ…
朝、一緒に来た友人も走っていたので、近くに寄り、尋ねる
「何なのこれ?」
すると、彼は何故か怯え切った表情で僕を見てこう言う…
「お前ぇ、よく平気でいられるな…うしろみて見ろよ…」
言われたとおり後ろに目をやる…
首のない身体だけの人間が追いかけて来ている!
それだけじゃない!
下半身のないモノも居る!ハラワタを引きずる姿が何とも気持ち悪い…よく皆の知って居る『テケテケ』の様な奴。
足が遅くて追いつかれている者や転んだりした者がソレ等に捕まると…
どうやら頭や脚を奪われるらしい…
捕まった者に三人から四人のソレが集まり、身体の一部を凄い力で引きちぎる!
音が遠くまで聞こえる…
『ブキキ!バキャリァ!!』
「あぎゃああ!!!!」
凄い音と悲鳴が耳にこびりつく…
同じクラスの者や友人も餌食になる…
体力自慢の者まで餌食になった…
走らなければ、ああなる!
冗談じゃない!
恐怖で涙も鼻水も一緒に吹き出しながら走る…
しかし、こんな時に限って転ける…
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!
立ち上がろうと手をつくと、爪の剥げた青白い手が腕を掴む!
恐る恐るソレを見る…
顔がある…
しかし、下半身が無い…テケテケだ…
足を何かが掴む…
足元を見る…
頭の無い奴が居る!血を首から吹き出しながら迫る!
腹に抱きつく者が居る…
見る…
右半身の無いものが…
……………
……………
「ぎゃあああああああああ、ああああええああああおああ!!!!!!!!!!」
ベットで目が覚める…
なんて事だ…
尻辺りが異常に温かい…
中学生にもなって寝小便とは…最悪だ。
しかし、なんて怖ろしい夢だ…まだ震えが止まらない…
……………
だいぶ昔の話だが、今でもあの夢を思い出すと怖い…が、今考えると、こんな夢を見る自分の想像力の方が怖い気がする…
あの時、夢の中で餌食になった者が、どういう因果かインフルエンザに掛かり、クラスが学級閉鎖になった事は未だに謎だ…
勿論、僕も二三日後、インフルエンザに掛かった…
作者退会会員