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これは、私の高校時代の同級生が、実際に体験したことです。
彼の名前は日出雄。
日出雄の兄が、地元の暴走族のヘッドの友人ということもあり、彼も自分の中学時代の同級生とつるんで暴走族に入っていました。
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それは、日出雄が高校一年生の夏の日の出来事。
夜、暴走族仲間6人で一台の車に乗り、ナンパスポットであり、心霊スポットとしても地元では有名な場所に肝試しにでかけたそうです。
そこは、岬の高台にある公園で、日中であれば展望台もあり、海が見える見晴らしの良い観光スポットとなっていて、子どもを連れた家族連れ等でも賑わう場所です。
公園の中は自動車でも通り抜けできるようになっていて、駐車場が何ヶ所かあります。
一番上の駐車場は、展望台もあるため夜も街灯が多く明るいのですが、少し下った場所の駐車場は街灯が少なく薄暗く人通りもまばらです。
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その公園では、夜に展望台の所で白い服の女の人の幽霊を見たとか、公園に行った後いなくなった人がいるとか、自殺した人がいるとか、誘拐された人がいるなどという噂が多く聞かれていましたが、どこの誰かが面白半分で話し始めたことが広まったのではないかと思っている人がほとんどでした。
でも、ひょっとしたらと怖いもの見たさで、日出雄たちはある意味わくわくしながら、夜の公園を車でゆっくりと流していたそうです。
ところが展望台の所へ行っても、その途中も特に何も起こらず、運転手の一樹は
「何にもねえなぁ~」
と言いながら、少し下った場所の駐車場に来た所で車を停めました。
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助手席にいた日出雄は
「ここの駐車場も何か噂があったんじゃねぇ?」
運転席と助手席の間の狭い場所に陣取った幸一は
「えっと、なんだったっけ?」
と頭を掻きつつ思い出そうとしている所に
「う~ん、居なくなったって」
と左後部座席の直也。
「そうそう、何人かここに来た後、居なくなったって」
右後部座席の良司がそれに付け足し、
「ええ~っ、居なくなるって、どういうことだよぉ」
幸一が後ろを振り返りながら大げさに驚いてみせると
「ちょっ、痛ぇ~よ」
暗い車の中、幸一の左肘が肩に当たったらしく、一樹が幸一の頭を平手ではたき、車内が騒然としたところで、日出雄がふと後部座席の真ん中に座っている信雄に違和感を感じ
「おい、信雄どうしたよ?さっきからずいぶん大人しいんじゃねぇ?」
その言葉に、騒然となっていた一同がはたと気が付いて、信雄に目を向けました。
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信雄は少しうつむいて、じっと下のほうを見つめていたそうです。
信雄はその時、やっと口を開き
「ちょっと、オレの足、見てもらっていいけ?」
隣の良司が
「何だよ、お前顔色悪いんじゃねぇか?」
少し離れた街灯の明かりに浮かぶ信雄の表情に声をかけます。
幸一は相変わらずの調子で
「何言ってんだよ~、びびってんじゃねぇ?」
とちゃかすと
「マジで見てくれってっ!!」
と信雄は本気で怒り出してしまったそうです。
あまりの彼の様子に、日出雄は室内灯を点け、みんなで彼の足元を調べることにしました。
何しろ5人乗りの6人の定員オーバーですし、男ばかりなのでそれぞれが、足元が見えるように体制を整えなおして見た、その時
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shake
一同の顔は一瞬にして凍りついたそうです。
そこには信雄の2本の足首にからみつく、両手が見えたそうです。
しかもそれは車の床から突き出ていて、到底理解できる光景ではなかったそうです。
一同は、次の瞬間
shake
「わぁあああああああ~」
「ぎゃぁああああ~~」
「うぉぉぉぉおおおおおおお~」
「ひぃいいいいいいっ」
「ぐぅああああああああああ~」
それぞれ、悲鳴にならない悲鳴を上げて、信雄を置き去りにしたまま車から飛び出して逃げ出してしまったそうです。
その後一時間くらいたった頃、日出雄5人は信雄が逃げてこなかったことに気が付き、その車に戻り見たのですが信雄の姿はどこにもなかったそうです。
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翌日、日出雄は信雄は家に帰っているのかもしれないと思い、自宅に行ったところ母親が出てきましたが
「夕べから帰っていないの。」
とのことでした。
そのあくる日も自宅へ行ってみましたが、やはり信雄は帰っていなかったそうです。
そのあくる日も、あくる日も日出雄は信雄の自宅へ通いましたが、結局行方不明のまま。
二十数年たった今も何の消息も得られていないそうです。
作者猫丸三歩
この高校時代の同級生はいろいろと怖い霊体験を持っています。
暴走族ではありましたが、仲間想いで優しい奴です。
なので、この体験はその彼にとっては痛い思い出なのではないかと思っています。