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8月に入り、気が付けばそろそろお盆が近づいているなあと感じると、必ず思い出す出来事があります。
それは、今から30年位前のこと。
私がまだ独身で、実家で暮らしていた頃のことです。
実家は、母方の祖母と両親、そして私が長女の四姉妹という賑やかな(笑)家族構成です。
その日は8/13。
お盆の入りの日で、あの世に行った死者がおうちに里帰りすると言われています。
死者が道に迷わないで家に帰って来れるようにと、迎え火ということで夕方に家の庭先で松明を燃やし道しるべにします。
仏壇には死者が乗って来れるようにとキュウリやナスに割り箸を刺して、馬の形にしたものをお供えと一緒に飾っておきます。
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夜になって、家族みんなで夕ご飯を食べた後、
私は一人2階の玄関のそばの部屋で、真夏の暑さを吹き飛ばすべく
冬山が出てくる小説を読んでいました。
実家は2階に玄関があり、1階がリビングになっています。
山の斜面に建っていて、道路に面している所を玄関にすると、自然とそういう形になったのだと思います。
玄関の脇には、道路から1階の方へ下がってくる、人が一人通れるくらいの舗装になっていない小道があり、1階から外に出ても、道路には出れるようになっています。
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それは8時くらいだったでしょうか。
私以外の家族はみんなリビングでテレビを見ながら過ごしていたのですが、1階から母が上がって来て、玄関をガラっと開けて外を見て
「誰もいないよなあ。」
と、つぶやいて戻っていきました。
戻って行ったと思う間もなく再び母が階段を上がって来て玄関を開けようとしたので
さすがに不審に思った私は
「どうしたの?」
と母に聞いてみたところ、母は玄関を開け外を確認しながら
「やっぱり、いないよなあ。みんな、誰か来てるって言うんだよ。」
と言いました。
「ええっ?私、ずっといたけどピンポンも鳴らなかったし、誰か来てたら私がわかるもの。誰も来てないよ。」
何となく気持ち悪くて、私は母と一緒にリビングへ行きました。
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私は一番下の妹の横に座り、妹に
「どうしたの?」
と聞いてみました。
「誰か人が来たんだよ。こんばんはって声がして。お母さんと実花ちゃん(次女)以外はみんな聞いてるの。」
と言うか言わないかのうちに、私は父の後ろのすりガラスの窓に右から左へと横切って行く白い影を見つけ
「うんうん、ほんとだ。誰か来てるね。勝手口の方に回ったよ。」
と言ったので、母は勝手口を開けてみたのですが、
不思議なことに右を見ても左を見ても誰もいないと言う間もなく、
再び白い影が今度はすりガラスの窓を左から右へ横切っていくのが見え、私は
「あ、今度は戻って来た。あ、また勝手口に向かった。」
母と次女以外は同時にそれを見ながらあっちを見たり、こっちを見たりの状況だったので、父はもっと見渡せるようにと、自分の後ろの窓ガラスを全開にして外を見たのですが、やっぱりそこに人はいないのです。
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そうすると、次の瞬間2階の玄関で
「ごめんください。」
と確実に女の人の声がしました。
「やっぱり、誰か来てるよ。・・・どうも、道を聞きたいようだよ。」
私はどうしてそう思ったのか、彼女が道に迷っているのだと感じたのでした。
そう言う私に、母がもう一度玄関に見に行ったのですが、やはりそこには誰もいませんでした。
祖母が
「お盆だからね。」
と一言話し、家族全員がそうかと納得しました。
お盆が終わり、しばらくたった頃、私はあの日訪ねてきた女の人が無事家に戻れたのかどうか気になっていました。
それを祖母に話すと
「お盆は、みんな、大勢の人が帰って行くから、いろんな人に道が聞けるから心配ないんだよ。」
それを聞いた私は、ちょっとホッとしたのでした。
作者猫丸三歩
前回書いた「昔から私のそばにいてくれるモノ」に登場した実家でお盆に起こった1エピソードです。
祖母は霊感のある人で、それが孫の私たちに引き継がれたようなのですが、実の娘である母と、四姉妹の中でも次女だけは何も感じないようです(笑)