中編3
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従姉妹と俺・夏休み

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こんにちは、蘇王 猛です。今回は俺が中学生の頃に体験した話を投稿させていただきたいと思います。

俺には年下の従姉妹がいます。その従姉妹が夏休みに俺の家に泊まりに来ていた時の話です。

「ねぇタケルくん、公園行かない?」

「公園?どこの?」

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彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべて言いました。

「勿論、S公園だよ!」

「ああ、なるほどな。あそこか。」

そのころS公園といえば園内の池にいるという人面魚の噂で持ちきりの、タイムリーな場所でした。

「人面魚、捕まえれば自由研究は完璧だよ!捕まらなくてもレポートくらい書けるよね。」

「バカ、俺は中学生だぞ。人面魚のレポートなんて提出できるか!」

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とは言ったものの、やはり好奇心には勝てませんでした。俺が従姉妹に弱かったっていう事もありますが…。

「…まあ、奈緒子(仮名)が気になるならちょっと行ってみるか。」

「やったー!ありがとうタケルくん!」

俺はチャリンコを出し、従姉妹を後ろに乗せてS公園へ向かいました。

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「着いたぜ、S公園!奈緒子、ちゃんと網持って来たな?」

「うん!忘れる訳ないでしょ、タケルくんじゃあるまいし。」

「……。」

チャリンコは道端に停め、俺たちは早速噂のある池に走りました。

「涼しー!気持ちいいなー。」

「そうだな。…ん?」

俺はその時、なんとも言えない違和感を感じました。

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暫くしてその違和感の正体に気付きました。

人がいない。

いつもは沢山の人で賑わっているはずのS公園が、静まり返っていました。

「…なあ、やけに人いなくないか?」

奈緒子は怪訝そうな顔でこちらを見ると、辺りを見回しました。

「…本当だね。でも貸し切りって感じで面白いよ。」

その言葉になんとなく納得し、俺達は人面魚探しを始めました。

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「いないねー。そっちは?」

「いねーよ。やっぱガセネタなんじゃねぇの?」

いつの間にか辺りはかなり暗くなっていました。

「全く、今何時だ?」

腕時計を見ると、4時半でした。

「…え?」

冬場ならともかく、日の長い真夏にこんなに早く日が暮れるでしょうか?事実、前日などは7時になっても明るいくらいでしたから。

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「壊れてんのかな、これ…。」

「タケルくん、どうしたの?」

奈緒子が心配そうに声をかけてきました。俺はその声を聞いて急に不安になりました。

「なあ奈緒子。そろそろ帰ろうぜ。大分暗くなっちまったぞ。」

「うーん。そうだね。お腹も空いたし。」

網やら何やらを片付け、池に背を向けたその時。

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「「?」」

背後で水音がしました。

「お、おい。今の聞いたか?」

奈緒子は口を真一文字に結んで頷きました。

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それがただの水音であれば、そこまで気にはしませんでした。

ですが、その音はどう考えても「水から何かが上がる音」だったんです。

俺達は恐る恐る後ろを振り返りました。

何も見当たりませんでした。そこで、視線を下へと落としていくと、いました。

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でかいウシガエルが。

「……。」

「……。」

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そいつはのんびりとした動きでどこかへ去っていきました。

「カエルにビビってたのか、俺達は。」

奈緒子は安心したのか、

「だよね、ここの噂って人面魚だもんね。水から上がってくるわけないよね。」

と、笑顔で池を見つめていました。

が、その顔がみるみるうちに引きつりました。

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「…どうした奈緒子?」

奈緒子は震える指で池を差しました。

見ると、池の中央辺りが泡立っています。まるで下に何かが潜んでいるように。

「何だあれは…?」

泡立ちは仄かな光を放ちながら、滑らかな動きでこちらに近付いてきました。そして岸に着くと、そいつはついに姿を現しました。

「う…うわあああ‼」

「キャーーーッ‼」

俺達は慌ててチャリンコを引いて逃げました。

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「はあ…。奈緒子、大丈夫か?」

「う、うん…。」

「…帰ろうか。」

「…そうだね。」

腕時計を確認してからそんなに経っていない筈なのに、家に帰ると8時くらいになっていて、「こんな時間まで出歩いているとは何事だ‼」と、散々絞られました。(俺だけ)

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翌日、2人で昨日の事の確認をしましたが、やはり間違いありませんでした。

「タケルくん、あれ何だったのかなあ?」

「さあ…。俺にも分からんな。」

まあ、少なくとも人面「魚」ではないと思いますよ。

だってあれは人間の顔をした、巨大な「亀」だったんですから。

Concrete
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匿名様、コメントありがとうございます。
皇居の亀にも伝説があるんですか、初めて知りました!情報ありがとうございます。
人面亀、中々不気味でした…。

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