釣り

短編2分

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使い方

釣り

この話は、もう二十年以上前の夏に体験した話です。丁度お盆の頃だったと思います。福井県のとある海水浴場へ、男ばかり十人ほどで、泳ぎに行きました。

私と坂本君は釣り好きなので、泳ぎもせず、キスか、ヒラメでも釣ってやろうと、二人乗りの手こぎボートを砂浜の売店で借り、真夏の太陽の下、沖へと繰り出しました。沖と言っても砂浜より百メートルくらいの所で、竿を投げていました。

全く釣れる様子も無く、1時間が過ぎました。時間は四時ぐらいだったと思います。ぼちぼちかたづけて、浜辺に戻ろうかと、相談していると、水面にクラゲの大群が、現れました。凄い数なんです。ソフトボールくらいの大きさで群れをなしていました。

坂本君が、バックより、ハンディータイプのエアーガンを出してきて、クラゲ目掛けて、パッツンパッツン、打ち始めた。「おまえさぁお盆に殺生したらあかんでぇ」と言いつつ、私は竿の先でつついて遊んでいた。傷ついたクラゲは底が見えない、緑色した海の底へと沈んで行った。

その時、私が手にしている竿の先が何かに引っかかった、底の岩に挟まったのか、抜こうとするが、全く抜けない、それどころか逆に引っ張られている感じがした。多分ボートが波に流され動いているのでそう思ったが、そうでは無い、確実に竿を引っ張る何かがいる。凄い力だ。水面からは緑色した海の底が見えない。

私は意識を集中し今この下で何が起こっているのか頭に思い浮かべた。ヤバイ！凄い映像が、頭に浮かんだ。これは私の想像だったかも知れないが、半分解けた人のかたちをした化け物が、竿の先を引っ張っている様子が見えた。それと同時にお盆ということもあり、今、水死した霊がこのボートの下に、うようよ居る事も。私は、急いで竿を手放した。竿は緑色した海の底に沈んでいった。

私は坂本君に、ボートを、浜辺に向けてこぐ様に言った。しかし、潮の流れが邪魔してうまく進めない。「おい！替われ」と、怒鳴った。私がオールを手にし、必死にこいだ。そうしないと、大変な事が起こる様な気がした。

ようやく、浜に着いた。もう腕がぱんぱんになった。坂本君は、解っていた、なぜ、私が、この様な行動を、つまり、竿を捨て、慌てて戻って来たのかを。

実は彼、昔から、少々霊的な感があるらしい。私の竿を半分解けた人のかたちをした化け物が引っ張っていた事、我々の乗ったボートの下に無数の浮かばれない魂が集まり始めていた事。私の頭に浮かんだのと同じ事が見えていたとの事。

彼がいうには、二人とも少々霊的感が有るため救いを求め集まって来たとの事。

この体験以来、お盆シーズンは水辺にちかづかない様にしています。