今から話すことは、自分の身に起きた最も怖かった思い出だ。
信じてくれなくとも構わない。
俺自身、こうして文字に起こすことで少しでも気分を紛らわせようとしているだけだから。
...この言い方で勘付いた方もいるかもしれないが、これはつい最近起きた出来事だ。
nextpage
wallpaper:218
俺は今、小学校で教員をやっている。ここで3箇所目だから、まだまだ教員歴はそう長くない。
つい先月のこと、夏休み前の遠足として5年生達と近所の山に登山にいった時のことだった。
近所の山といえど、子供だと泊りがけでないと登頂できないような、割と大きな山だ。(残念だが場所が特定されないように県と山名は言えない)
nextpage
wallpaper:498
ところで、私は怖い話が好きだ。読むのも好きだが、話す方が特に好きで、前の学校では良く子供達と怖い話をしてた。(これのせいで親からクレームが飛んできて校長にこっぴどく怒られたのは内緒だ)
そんな話を子供達にしていたら、5年生のあるクラスが聞きたいと言ってうるさかったから、この登山の夜に披露することになってしまった(俺としては楽しみだったが)。
この時断っていれば
あんな思いはせずに済んだのに
nextpage
wallpaper:85
遠足前日、俺は登山をしたことがなかったから、柄にもなくワクワクして眠れなかったw
その日は珍しく蒸し暑い夜だったと記憶している。ようやく寝付いたのは夜の2時くらいだった。
その夜、俺は奇妙な夢を見た。
nextpage
夢の内容はこうだ
山の中で、女の子を上から見下ろしていた。(どっちかというと、自分は宙に浮いている感じだった)
おかっぱ頭で赤いワンピースの子だったから、今思えば絵に書いた様な悪夢だったかもしれない。
不思議と女の子は怖くは無かった。その子は道に迷っている感じで、何かを探しているようだった。しばらく山中を彷徨ったあと、女の子は首の無い男と出会う。コートのようなものを着ているのに、首から上がすっぱり無くなってるのね。
nextpage
流石にここら辺で怖くなってきた。首なし男が、女の子(俺)の方に近寄ってくる。よくみると、コートが乾いた血で汚れてんの。得体のしれない恐怖が一気に襲ってきた。なんかやばいものを見ちゃっているような感じになって、いつもの悪夢を覚ますおまじないを始めた。(と言っても、覚めろ、覚めろって繰り返すだけだけど)
始めた途端、夢から一気に覚めそうになって、すごい安心したんだ。
でも、次の瞬間。
心臓が凍った
nextpage
女の子が一瞬で振り向いた。こっちを睨んでる。顔は白いのに唇は真っ赤で、その対比はくっきり目に焼き付いてる。おまじないを始めた途端、こっちに気づいたから、これはやばいと思った。
そしたら、コートの男が走ってくる!
すごい勢いで迫ってきて思わず叫んだ。その勢いで起きたんだが、どうも体が重い。時間はいつも起きる6時を指していた。
nextpage
wallpaper:21
嫌な汗をかいたから、キッチンに行って水を一杯のもうとした。
視界の端に赤いものが映った。
心臓に悪いったらありゃしない。
それはなんてことはない、赤いハンカチだった。それこそ、血のように真っ赤だった。
でも、あれ?っと思った瞬間に消えてしまった。だから特に気にはしなかったんだ。見間違いかなって。
nextpage
wallpaper:156
んで、話はまだ続くんだ。
その日は快晴。気持ちよく登山を楽しんだ。
そして問題の夜になった。
5年生だから、消灯は10時にしてるんだが、その時はもう9:30くらいだった。
そろそろかな...と思っていたら、トントンっと俺の部屋の扉を叩く音がした。
nextpage
「はいよー」
と言いながら俺が扉に向かった時、何ともいいタイミングでブレーカーが落ちやがった。きゃあきゃあ言ってる子供達に扉を開けてやり、部屋のブレーカーを見てみたが、特に問題はなかった。
おかしいと思いつつ、子供達も待っていることだし、雰囲気を出しつつ怖い話をしようと決めた。
「きてないやつはいるかー?」
とりあえず確認。
「全員集まってまーす」
という返事が暗闇から聞こえ、よしと言ってからいくつか注意をした。
俺が話している時は喋らないこと。
怖くなったら、自由に出て行っていいこと。
そして何より親には秘密にすること(これは切実だったw)
nextpage
怖すぎてもいけないと思って、昨日見た夢を脚色していい感じの怖い話を作った。子供相手なら多少の矛盾は雰囲気で押し切れる。
知らないうちに話に力が入り、俺は喋りっぱなしだった。
相変わらずの暗闇にも慣れ、子供達の興奮した息づかいが聞こえてくる。
話もクライマックスに近づいたとき、窓から風が入ってきた。
この季節とは思えないほど冷たい風だった。
さっき窓は閉めたはずなんだが...。
まあいい。話が重要だ。
nextpage
俺は約20分かけて熱弁をふるい、なんとか10時前に子供達を部屋から出した。
相変わらず電気はこない...。
まあ、山だからこんなこともあるか、くらいにしか思っていなかった。
楽しい遠足の夜を終え、満足して俺は眠りについた。
特に変な夢は見なかった。
nextpage
wallpaper:23
翌朝、生徒や先生達の話を聞いて、俺心臓が止まるかと思った。
曰く、
「昨日は誰と話していたんですか?」
「○○先生、9:40からの打ち合わせなんでこなかったの?」
「怖い話聞きたかったのになぁ」
nextpage
ちょっと待て。
何かおかしい。
俺は昨日確かにお前らに......。
想像しただけで全身の毛が逆立つ。
暗闇の中で俺が怖い話を聞かせたのは誰だったのか。
あの20分間だけは絶対に忘れられない。
nextpage
wallpaper:105
この話には後日談がある。
正確には翌日だがw
俺は山頂付近に寺を発見し、掃除中だった住職に一部始終を説明した。
あの住職の青ざめた顔も未だに忘れられない。
簡単なお祓いをしてもらい。清め塩を紙に包んでもらった。
nextpage
話によれば、山で死んだ子供の霊がたまに出るらしい。よく見られるのは、おかっぱ頭の赤いワンピース着た女の子らしい。
霊にあったものは大抵相手が子供で一人でも、連れていかれてしまうらしい。
そういえば、あの時の「全員集まってまーす」とはどういう意味だったのだろう。想像したくもない。
無事俺たちは登山を終え、学校に向かった。情けないが俺としては一刻も早く逃げたかった。
nextpage
wallpaper:485
山を降り、最後尾でバスに乗り込むとき、確かに聞こえた。
「...マタアソボ」
作者ダレソカレ
こんにちは、ダレソカレです
2作目の投稿となります
前回は怖さ低めでいったので今回は張り切ってみました!
コメント、怖い、タグ等いただけると超ありがたいです