ごめんなさい、本当に。
何の罪も関係もないあなたにこの話を持ち出してしまって......。
でもどうか、一人でも多くの人に聞いてもらいたいです。
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私は今、祖母と二人で暮らしています。中学二年の女子です。
普段は私、父、母、祖母の4人暮らしですが、父は出張、母は旅行で家を留守にしています。
小さい頃から怖い話が大の苦手で、泣いてしまったこともありました。実際に怖い話を聞いた夜はほとんど眠れません。
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今日話すのは、ハッタリさんについてです。あなたは「はったり」もしくは「ハッタリをかます」などという言葉を知っていますか?
簡単にいうと、ウソをつくことや、誇張することなどを意味します。
おそらく、ほとんどの人が聞いたことがあると思います。でも、語源の由来の方は知っている人は少ないのではないでしょうか。
由来には諸説あって、そのどれもが推察にすぎません。(有力な説はありますが、断定はできないという意味です)
私は、本当の意味を隠すためにそうなったのではないかと考えています。
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中学校での出来事でした。
私には小学校の頃から結構仲良くしていた友達がいました。
控えめな私と対照的で、クラスの
女子のリーダーのような女の子です。名前をA美とします。
ある日私とA美は喧嘩をしました。喧嘩と言っても、口論になった程度です。
理由は、同じ男子を好きになったコトでした。その男子も私に好意をもってくれていて、それが面白くなかったんだと思います。
口論はどんどんエスカレートしていき、最終的には○ね!だの、○す!といった激しい言葉も出してしまいました。
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流石に友達が止めに入り、口論は終わりましたが、A美が鬼の様な形相で「呪ってやる......」と言ったのにはゾッとしました。
A美の家は古いお寺だからです。
そこで○ね!とかならまだ大丈夫でしたが、あえて「呪い」という言葉を使ったのが私にはとても怖かったのです。
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その夜、クラスの友達の女子から、LINEが送られてきました。
その子によれば、A美は数人を引き連れてお寺に行き、私を呪うと言ってお墓のようなものを壊したそうです。
その光景があまりにも恐ろしく感じたので、LINEで知らせてくれたみたいです。
その時に聞こえたのが、「ハッタリさん、ハッタリさん、(私の名前)を殺してください」けたけた笑いながら何度もそう言ったそうです。
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翌日、A美は私に何も言ってきませんでした。ただ、目があったとき、ニタァと笑った顔が恐ろしかったです。
放課後、私はこっそりお寺を見に行きました。するとそこには、無残に破壊された祠のようなものの残骸がありました。
本来そこにあったと思われる、お札や紙の紐のようなものが散らばっていました。本当に怖かったです。
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その日の夜、私はその光景を思い出して一人震えていました。
この年になっておばあちゃんに相談するのも恥ずかしく、なんてことはないと自分に言い聞かせていました。
11時ごろでしょうか。コンコン、と窓を外から叩く音がしました。
おばあちゃんはすでに寝ています。
風でしょ!、と無理やり自分を落ち着かせました。
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すると今度は、リビングと廊下をつなぐドアがガタガタ音を立て始めました。
私はもう半分パニックです。
ドアの揺れが収まったと思ったら、最悪の出来事が起こりました。
カチャ、カチャカチャと、少しずつドアノブが回り出したのです。
ドアの向こうに、確かに気配を感じました。
二階からおばあちゃんが降りてきた気配は全くありませんでした。
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夏前だというのに、悪寒がしました。手の先、足の先が寒さで震えます。
両手で体を抱きしめました。
「い......いや...。やめて......」
うわごとのように呟くしかありませんでした。
心臓が狂ったように鳴りだし、体の震えが止まりません。
ドアノブが半分くらいまで回りました。
もう、涙目です。
しばらくそのまま固まっていました。
するとガチャ!っと一際大きい音がして、思わずビクッと跳ねました。
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その後ゆっくりとドアノブが元に戻りました。
それからのことはあまりよく覚えていません。気がついたら、居間で眠ってしまったようです。
でも、夢じゃなかったことだけははっきりしています。だって、痛いほど抱きめた肩に、くっきり痣ができてたんですから。
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次の日、私はなり振り構わず、おばあちゃんにすがりました。
そこで、このハッタリさんについて知ったのです。
祖母が子供の頃にも、ハッタリさんの事件が起こったそうです。
ソイツの名前は、「ハッタリさん」または「バッタリさん」と言います。
何でも、特定の人を呪うわけではなくこの話に関わった者のところに無差別に来るらしいです。
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名前の通り、主に家の中でバッタリ出くわすんだと祖母は言います。
「ドアを開けたときとか、廊下の先、角を曲がったときとかにいるんさ。えれぇ大きさの女でな、古びた着物を着て、長い髪を垂らしてんだと。んでもって、バッタリ出会った者の首を締め殺すんだ」
祖母の話です。
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祖母はこうも言いました。
「じゃがな(私の名前)、怖がっちゃいかん。そいつは本当にはいないいんさ。怖がった人が自分で作り出してしまうんよ。そいつは話を聞いたもんのとこ、みぃーんな来ちまうんだ。だが怖がらなければ出て来ん。早く忘れるこった」
祖母はふひゃひゃと冗談めかして愉快そうに笑いましたが、とても笑えるような気分ではありませんでした。
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以上が私の話です。
このバッタリさんは、つまり「はったり」なのです。嘘で相手を怖がらせようというだけだと、私は納得しました。いや、しようとしました。
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でも、どうしてもできませんでした。
怖がってはいけない、と私に警告した祖母の顔は、いつになく真剣でした。祖母の子供の頃に起きた事件というのも気になります。
そして何より、ドアノブが回ったのは事実です。
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私はもう耐えられそうになく、こうして少しでも自分から遠ざけようと、この話をしました。
改めて、ごめんなさい
どうか、どうかお気を付けて
そいつはバッタリでてくるのですから......
作者ダレソカレ
こんにちは、ダレソカレです
個人的には、超ハイペースで3作目ですw
この話は、自分が「こんなのは嫌だなー」というのをテーマにしました
暇だったら他の作品もみてくださいm(._.)m
怖い、タグ、コメント等頂けるとありがたいです