ある夏の日の夜、俺と、友達のKは夜の学校に侵入することになっていた。前から夜の学校に入って肝試しをしてみたいと思っていたからだ。
俺『ドキドキするわーw』
K『いよいよだな』
そういいながら俺とKはあらかじめ開けておいたトイレの窓から侵入した。
侵入してみると、校舎の中はシーンと静まりかえっていて、いつも見ている光景とは思えなかった。
俺とKはとりあえず、自分たちの教室である2ー6に向かった。
俺『なんか不気味だな』
K『そうか?』
次々と誰もいない教室を通り過ぎていく。そしてついに2ー6の教室が見えてきた。
K『さっそく入ってみようぜ』
そういってKがドアを開けようとするも、開かなかった。
K『あれ?開かないなー』
俺『まじで?なんかがっかりだな』
そういって諦めようとした瞬間、なにやら音が聞こえてきた。
俺『…なんか聞こえない?』
K『え、お前も聞こえたの?なんか音がするよな…』
「…ビ…ビチ…ビチャ…ビチャ…」
俺『やっぱり聞こえる…教室からだ』
そう思って後ろのドアについている窓から教室を覗いてみるが、特に異変はない。
K『…前の方から見てみようぜ』
そういってKは前の方にあるドアへ向かった。
歩いていたKは突然ドアの前で立ち止まった。
K『…おい………』
Kは目を丸くし、凍り付いたような表情をしていた。
俺はすぐに異変に気づき、Kの元へ向かった。すると…
誰もいるはずのない教室に、一人の男がすわっていた。
座っていたのは、ドアのすぐそばの席だった。
俺とKは絶句した。
その男はなにやら、下を向いてブツブツつぶやいている。明らかに様子がおかしかった。そしてその男は、ビチャビチャとよだれのようなものをたらしていた。聞こえていた音はこの音だった。
俺はとっさに危険を感じた。
動物の本能的何かなのかは分からないが、とりあえずこの場にはいてはいけない気がした。
それはKも同じだった。
俺『やばい!逃げよう!』
K『……!!』
俺とKは全速力で走った。
後ろを振り返ってみると、鍵のかかっているはずのドアが開き、そこからその男が出てきた。
「……ははっハッハッハッハッハッハッ」
その男は不気味な笑みを浮かべながら、追いかけてくる。
K『うわぁぁぁぁあああっっ!!』
無我夢中で走り、侵入してきたトイレの窓から脱出すべく、トイレへと向かう。
後ろを向いている余裕はなかった。ただ怖くて怖くて、不気味な笑い声が迫っていて、何も考えることができなかった。
逃げている間、男の笑い声はずっと聞こえていたが、トイレに入ったとたん、その不気味な笑い声がなぜか突然消えた。
俺『ハァ、ハァ、あれ?声が消えた!?』
K『もう追いかけてきてない…のかな?』
俺とKはトイレに入った途端、声が消えたからか妙な安心感があった。
俺『よし、あとは出るだけだ』
そういって窓を見た瞬間、
あの男がよだれをたらしながら、不気味な笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「……ひと…り…さ…みし…い………」
俺は気絶した。
K『……い……っかりしろ…おい!』
ハッと俺は目を覚ました。Kが必死に俺を呼んでいるのに気が付いた。
K『…やっと気がついたか。大丈夫か?』
俺はどうやら外にいるようだ。
Kが気絶した俺を担いで窓から脱出したらしい。
K『どうしたんだ、いきなり気絶して?
あと少しで脱出だったのに』
俺『…え?お前あの男見なかったの?』
K『…あの男?トイレに入ってから見てないだろ』
俺『…え?たしかに見たけど…「ひとりさみしい」って言ってなかった?』
K『え?気のせいだろ。それよりアイツ何だったんだよ!なんで夜の教室に人がいんだよ!』
どうやらあの声を聞いたのは俺だけだったようだ。とりあえず学校から出ることができて安心した。
俺『ふぅ…』
ほっとした瞬間、また音が聞こえた。
ビチャ…ビチャビチャ…
見上げてみると、あの男がKの後ろにいた。
作者ryut