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あるマンションで 危険な遊びが流行っていた
単刀直入に言うとその遊びとは
『飛び降り遊び』である
スパイダーマンやスーパーマン等のヒーローに
あこがれた子供達が
大人たちに見つからないように
ひそかに命綱をつけてマンションからバンジージャンプのように飛び降りる遊びである
子供たちは 正に その飛び降り遊びをしている最中だった
近所の悪ガキというのだろうか
かっこつけて マスクまでしていて こっちからみれば 真っ黒なカラスのようで滑稽であった
(子供達)『お前も飛び降りてみないか?』
そういわれたのは このマンションに住む
少年だった
少年は 危ない遊びは しないように母親から注意されていた 飛び降りるということに
興味はあったものの 誘いにのらず そのまま家へと帰った
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家へ着くと 少年は『ただいま!!』と大きな挨拶をした
しかし返事がない
いつもなら お母さんが笑顔で迎えてくれるはずなのに 今日は 誰も迎えてくれなかった
(少年)『お母さんいるの?』 少年は家の中に入り辺りを見回した
すると 母親は 台所で夕飯を作っている最中だった
(少年)『お母さんいるなら返事してよ。』
しかし 母親は 少年に気づかないのか そのまま たんたんと料理を作り続けた
(母親)『○○○遅いわねぇ~』
少年の帰りが遅いのを心配しているようだった
しばらくすると遠くから救急車のサイレンの音が聞こえてきた
サイレンの音は 少年が住んでいるマンションのすぐ下で 止まった
誰かが救急車で運ばれたらしい
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十分後 母親の元へ電話がかかってきた どうやら 誰かが死亡したらしい
母親は電話の内容を聞くと すぐに 大粒の涙を流し 床に伏せて大泣きしていた
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結局誰が死んだのかわからないまま 夜になった
相変わらず 母親は 息子の存在に気づかない
(少年)『僕の存在に気づかない??? なぜ??』
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少年は なにげなく 家の鏡を覗いた すると
驚いた事に 自分の姿が映らないのである
びっくりした少年であったが この事態をすぐに飲み込んだ
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(少年)『僕 死んじゃったんだ』
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そうである 全てのなぞがこれで解けた
少年は全てを思い出した
事の発端は あの“飛び降り遊び”である
少年達に 『飛びおりてみないか?』と誘われて 一度は断ったものの
少年達に無理やり 命綱をつけられ スリルがあり興味もあったのでそのまま勢いに任せて飛び降りてしまっていたのだ
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しかし手違いで命綱がきちんとつなげられていなくて 少年は 頭からアスファルトの地面に叩きつけられ
ほぼ即死の状態だった
しかしこの世に未練があるためか 霊体(幽体)となってこの世にさまよってしまったのである
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少年は早すぎる死を悔やんだ
そうこうしているうちに夜中になった
少年は 母親が眠っている寝室へと向かった
少年は そっと 母親の手を握り こうつぶやいた
(少年)『ごめんなさい お母さん………』
少年は死んでから気づいた
命というものがどれだけ大事なものだったかを
まさか自分がこの若さ死んでしまうとは 思いもよらなかったのだろう
少年は後悔の念にさいなまれた
死亡という現実
もう生きる事を許されないこの絶望的な状況
くだらない遊びで この世にたったひとつしかない 大切な大切な命を無駄にし
そして 家族を悲しませる事になってしまった 自分を少年は許せなかった
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自分が犯した 過ちを 償えるなら 償いたい
しかし少年の願いはもう叶う事はない
少年は少しの興味で 飛び降りてしまったことを 心のそこから悔やんだ
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なおも母親に話しかける
(少年)『もっと生きたかった もっといろんな事したかった なんで死んでしまったんだろう
おいしいものも もう食べれない 』
少年が もしこのまま生きていれば 好きな人が出来て 結婚して幸せな家庭を築いていたのかもしれない
しかし 死んだら終わり 死んだら 全てが終わりなのである!!!!!
愛する人と愛し合う事も出来ないのである
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少年が話し終えると なんと驚いた事に死んで霊体(幽体)になっているはずの少年に母親が寝ながら小声で話しかけたのである
(母親)『今までありがとう……… 旅行に行ったり 本当に楽しかった 生まれてきてくれて本当にありがとう 短い間だったけど すごく幸せだった』
少年は突然の出来事に戸惑いながらもこう答えた
(少年)『どうして僕がここにいる事がわかるの?』
(母親)『お前は 私にとって世界で一番大切な子供だよ。 たとえ姿形が見えなくても 存在している事ぐらいわかってたよ 私が誰よりも愛していたお前のこと 死んだってわすれるもんかい。』
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少年は涙が止まらなかった…… 今までの家族との思い出が走馬灯のように蘇る
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海へ行ったり 遊園地で楽しそうに笑ったり……色んな楽しかった思い出が蘇る
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母親の息子に対する愛情の深さが手に取るように わかる瞬間でもあった
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(少年)『お母さん ありがとう…… 』
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その後 少年は 母親への感謝の気持ちと共に この世への未練を断ち切りそのまま天へと昇っていった……
作者ダダ
この世への未練
母の愛情