これはまだ俺が中学3年生だった時の話だ。
俺の通っている学校の中学部には毎年学校の持つキャンプ場へキャンプをする行事がある。
学校保有のキャンプ場と言ってもただ山の中の樹を切り倒して平地を作っただけの代物だ。水道は近くの川の水を引いている。電気は通っておらず、発電機を利用していた。そのような場所なので当然電波も悪く、携帯電話も使用できない。
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そんな場所でテントを立て、飯盒で飯を炊いたり、近くの山(と入っても1500m級の山だ。男子校とは恐ろしいものだw)に登ったり、キャンプファイヤーをして盛り上がったり。そんな風に過ごしていた。
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その夜は風もなく、よく晴れて気持ちのいい天気だった。月は満月だったと思う。
キャンプ最後の年と言うこともあり、俺たちは気分が高ぶって夜寝付けず、くだらない話をして盛り上がっていた。あいつには彼女がいる。この先生は怖い。そんな話だったと思う。そのうち話題も尽きてくる。そしてキャンプにはお決まりの話題に突入する。
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そう、怖い話だ。仲のいいもの同士グループになったおかげで俺の班員たちは怖い話好きばかりだった。俺の友達に西村と言うやつが居た。そいつがやけに真面目な顔で話し始めた。
「前はオリエンテーリングってイベントがあったのしってるか?5年前に廃止になったやつ。なんで知ってるかって?実は俺のにいさんもこの学校に通ってたんだけどな、にいさんの班がやらかしたみたいなんだ」
ーやらかしたってなにを?
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「見つけちゃったんだよ。ここは樹海の近くだ。…わかるだろ?
そいつは木にぶら下がってたんだ。てっきり兄さんはそれがチェックポイントかと思ってぐいっとロープを引っ張ったんだよ。みつけたぞ!って言いながらさ。
そしたら…仏さんだった。
shake
兄さんもその友達もパニックになって。泣きながらなんとかキャンプ場まで戻ってきて担任に報告したんだ。そしたら担任は、あぁ今年もか。そろそろ潮時か。って言ったんだよ…。」
そう言って西村は口を継ぐんだ。
あまりの現実味に皆は一瞬シーンとしてしまった。あまりにも気まずいので俺が「おい次誰だよ?ビビってんなよww」
と笑い飛ばしたのでようやく皆も笑い出した。…はずだった。
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その時だ。遠くから
ぴー…ぴー…
間の抜けた笛の音が聞こえてきた。皆驚いて黙ってしまった。まだ笛はなっている。
ぴー…ぴー…
…なんの笛なんだ?いや、そもそもなんでこんな時間に?
不安だけが広がって行った…
沈黙の中、西村がぼそりとつぶやいた。
「あれって、救難用のさ…」
…!
shake
さっきの西村の話。救難用の笛…なにかヤバイ感じがする…
ぴー…ぴー…
笛はまだなっている…いや!
shake
さっきより、音が大きい!
近づいてきているのか?
ぴー…ぴー…
間違いない、大きくなっている。皆もう口を開くものはいない。自分の心臓の音が頭に響く。その音、誰かの息遣い、そして、笛の音だけが響いている。
ぴー…ぴー…かさり…
…かさり?
今の音は。まさか…
ぴー…かさり…かさり…
間違いない足音だ…!
確実に近づいてきている!もう目の前だ!
俺たちは寝袋を被り、ひたすら音を立てないように息を殺した。笛の音と足音がだんだん大きくなる
そしてついに
じぃー…
shake
テントのジッパーの空く音が聞こえた…!
そして、怒声が響いた。
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「お前らいつまで起きてんだ!さっさと寝ろ!明日もあるんだぞ!」
先生だった。俺は胸をなでおろした。
「もう先生!驚かせないでくださいよ!」
「ははっ!わりいな!お前らがずいぶん楽しそうだったからよ。まぁ早く寝ろよ」
「全く…笛まで使って…いたずらにも程がありますよ!」
すると先生は不思議そうな顔をして言った
「なにいってんだ…?
俺は寝かせに来ただけだ。」
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「笛の音なんぞ聞いてないぞ…?」
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作者小魂
初投稿です。
話を作るのは下手なので唯一の実体験を投稿しました。
拙い文章でしたが、読んでくださった方はありがとうございました。
それにしてもあの笛の正体は何だったのでしょうか。
未だに心残りです。