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中編3
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トンネルの女

これは先輩のカズさんという方から聞いた話です。

その話は実際に新聞に載ったので、近隣では有名な事件です。

十年前ほど前になります。

その夏、カズさんは友人のKさんと、Kさんの彼女のAさんと三人で肝試しに行こうとしていました。

肝試しの場所は、心霊スポットで有名な某トンネルでした。カズさんは車を持ってなかったので、友人のKさんの車で行くことにしました。

Kさんは運転席、彼女のAさんは助手席、カズさんは後部座席に座りました。

そして深夜2時ごろ、目的のトンネルに到着。

そのトンネルは既に閉鎖されており、途中にフェンスがあるため、車では直接行けません。なのでそのフェンスの前に車を止めました。

カズさんとKさんが車を降り、トンネルに向かおうとしましたが、Aさんは車を降りようとしません。

どうしたんだ?

彼氏のKさんが説得するも、ガタガタ震えて怖がり、一人で車に残ると言いました。Aさんは、このトンネルだけには近づきたくないと、何回も言いました。

仕方がないので、車内灯をつけ、カーステレオをかけながら、Aさんを車の中で待機させることにしたのです。

二人はトンネルに向かいます。トンネルまでは坂になっていて、二人はゆっくりと進みました。

そして、暗闇にうっすらトンネルが浮かび上がってきました。

しかしその時、カズさんはある不安を感じて立ち止まりました。Kさんもそれを察したかのようにとまりました。

一 人 に し た ら あ ぶ な い よ ね…?

その数秒後に、後ろから悲鳴が聞こえました。

車の方です。二人は一目散に坂をかけおり、車に向かいました。

今まで聞いたことないような悲鳴に、二人は相当慌てました。一人にするんじゃなかった!と後悔しました。

カズさんのほうが早く車にたどり着きました。

Aさんは両手で顔を覆い、より一層ガタガタ震えています。何かに怯えているようでした。

「大丈夫か!どうした!」

カズさんが助手席のドアを開け、彼女の肩をつかんで声をかけました。彼女は硬直しています。

「しっかり!どうしたの!?」

カズさんが再び声をかけると、顔を覆っていた手が、ゆっくりと動きました。

Aさんの右手はゆっくりと、人を指す形になりました。そして足元を指したのです。

「…した……たす…たすけて…!」

下?

カズさんは彼女の肩から手を離し、彼女の足元を見ました。

するとそこには女がいました。上半身だけの不気味な女が、Aさんの両足を抱えるようにしてつかんでいました。

その女は細く青白い手を、針金のようにAさんの足に絡みつけています。

ベッタリとした髪を振り乱し、ニタニタ笑いながら、Aさんの顔を覗き込むようにして見上げていました。

カズさんは悲鳴をあげて、後ろに倒れこみました。Kさんも同様に腰を抜かしていました。

そして数秒後、バンッ!と助手席のドアが勢いよく閉まりました。

まずい!

そしてカズさんは見てしまいました。

助手席の窓越しに、Aさんが足元の方にズリズリ引き込まれるのを。その時の悪魔のような悲鳴が、今でも耳に残っているそうです。

そしてカズさんが再びドアを開けた時には、女もAさんもいなくなっていたそうです。

直ぐに警察に連絡しましたが、結局彼女は戻ってきませんでした。

Kさんは何人もの霊能者を訪ねましたが、全て断られたそうです。そして精神を病んでしまい、今はどうしているか分からないそうです。

皆さんも、肝試しには御用心を。

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