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短編2
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闇に潜むもの

私がまだ小学校低学年の夏休みに

母の実家がある山奥の集落に泊りがけで遊びに出かけた。

母の実家は古い大きな家で

あちこちに物置や小部屋があって子供だった私はこの家に遊びに行くのが、なによりの楽しみだった。

田舎に来てから数日経ったある日

その日は朝から具合が悪く、寝たり起きたりを繰り返していた。

何度目かに起きたとき、家の中はシンとしていて叔母や母たちはいないようだった。

トイレに行きたくなった私は熱で朦朧としながら廊下に出た。

トイレに行くためには長い廊下を2回曲がらなくてはいけない。

一つ目の廊下は玄関に面していて明るいが

二つ目の廊下は窓もなく昼間でも電気をつけないと薄暗い。

途中には壁をくり抜いたようなスペースがあり、物置として使われていたが

一段と暗いので普段トイレへ行く時は

なんとなくそこを見ないようにしていた。

二つ目の廊下を曲がり、電気をつけようとしたのだが、なぜかつかない。

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カチッと音がするだけで何の反応もない。

仕方なくそのまま進み、トイレを済ませた。

寝床に戻ろうと廊下を歩いていると、白いものが物置のところへ入っていくのが見えた。

私はなぜかそれが母だと思い、追いかけるように物置に入った。

暗い物置の奥に人が立っている

物置は暗いのにそれだけが浮いているようによく見えた

それは女の人だった

黒くて長い髪をたらしている

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顔から上は暗くてよく見えない。

背の低かった私は少し見上げるようにして見たのだが、なぜか顔が全く見えない。

顔を見ようとしても長い髪と首元までしか見えないのだ。

そこで初めてその人が母ではないことに気がついた。

その瞬間強い寒気とめまいがして、私はその場に座り込んでしまった。

女の人はゆっくりと近づいてくる。

さっきより近くなったはずなのに黒い髪に覆われ、顔は見えない

動きたいのに動けない。広い家には自分しかいないのだ。頭が猛烈に痛む。

もう目の前まできている。

そしてゆっくりと私の顔を覗き込もうとしている

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大きくぽっかり空いた黒い口が見えた

女の人はさらにしゃがみこもうとする

見たくない

やめて

やめて

なにも考えられない

私の顔に黒く、長い髪がかかりはじめた

その時、

廊下の電気がつき従兄弟が歩いてきた。

女の人はもういなくなっていた。

廊下の途中で泣きながら座り込む私に

従兄弟はとても驚いていた。

従兄弟や出かけ先から帰ってきた母と叔母にも物置で見たものを話したのだが

ひどい熱のせいでそんな夢を見たのだと信じてもらえなかった。

そのことがあってから私はその家には

泊まっていない。

でも今でもわからないのは、なぜ髪の長い女の人を見て母だと思い込んだのか

母は当時からずっとショートヘアで髪を伸ばしたことがないのに

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あの人は誰なのか

従兄弟が来なかったら私は

どうなっていたのか

あの人はまだあの暗い物置にいるのだろうか

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