それはある寒い2月の話だ。
俺はバイクの事故で彼女を死なせた大馬鹿野郎だ。桜が良く見える場所に向かってる途中でバイクは横転して彼女とバイクは崖へと落ちて行った。それっきり生きる気力もなく絶望の日々が続いた。
医学生だった俺はなんとか皮膚科のドクターになれた。念願の夢だった。しかし、彼女の親は私を殺人鬼だと職場に怒鳴り込んでくることも長く続いた。それを見た患者は俺を決して信じてくれなかった。「あのドクターはやめな!私の娘を死なせて自分だけが生き残った最低な人間だよ!」廊下で声を荒げる人物は彼女の母親だ。
仕事が終わるたびに自殺をしようかと考える時もあったが、それでは彼女に申し訳ない。正確に言えば度胸が無かっただけかもしれない。
「紗栄子…。俺は頑張れるかな…?」事故現場に添えられた花に当時、彼女が好きだった花を添えて祈る。
彼女が好きだった曲を聴きながら歩いていると微かだがノイズが入っていた。それが妙に気になって家に着いた時にパソコンに繋ぎノイズの原因を探していた。すると、彼女のフォルダにムービーが保存されていた。
再生してみると彼女が映っていた。「ちゃんと撮れてるかな?」
派手なドレスを着てカメラの前に立っている彼女。
「今日は飯島君の誕生日だね!28才の誕生日おめでとう!」
彼女は頬を赤くして続ける。
「多分。私ね飯島なぐさ君の誕生日の日は忙しいから祝えないけど、飯島君の為に歌います!照れるなぁ…」
彼女はずっと歌手になるのに憧れて頑張っていたのを思い出す。
「どうだったかな?上手く歌えてた?」カメラに耳を向ける彼女、俺は泣きながら「相変わらず上手いな…紗栄子。」「ありがとう…」
返事をするかのように彼女は微笑みムービーは終わった。
そして次の日に再び彼女の母親が怒鳴り込んできた。俺は心身ともに疲れ果て、彼女のムービーを再生した。「どうだったかな?上手く歌えてた?」そして俺は「俺、頑張るよ!」というと「よしっ!」と言って彼女はガッツポーズをしてムービーは終わった。
俺は慌ててムービーを巻き戻しても
昨日の「ありがとう…」がない。
俺は再び涙が溢れ出した。
その日から背中に彼女と同じくらいのサイズの手形が浮かび上がった。
それは天使の翼のように…。
そして俺は枯れた桜がある病院に5年後に配属された。
作者SIYO