あれは私が小学校五年生の時の話です。
当時の私は、色々あって、学校でクラスに馴染めないでいました。
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家でも家族ともめてばかりでいやになって、とっさに家を飛び出しました。
田舎なので特に誰にも出会うこともなく、ふらふらその辺を歩いていました。
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その時、なんで私はそうしたのか、自分でもよく分からないんですが、なぜか墓地に入っていったんです。
それで、祖父の墓の前に座って、「もう、学校も家もいやだよ。おじいちゃん、助けてよ」みたいなことをいいながら、泣いていました。
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気がついたら寝てたようで、辺りは真っ暗になっていました。
私はもっと小さいときから、よく色んなところに出歩いて、勝手に帰ってくるような子供でしたから、家族や警察など一人も私を探している様子はありませんでした。
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やっぱり帰った方がいいのかなぁ、などと思いながらぼーっとしていると、異変に気付きました。
あまりにも周りが真っ暗だと。
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ふつう、遠くにある家だとしても、家の明かりが灯っているはずなんです。
天気も悪くないし、停電だとも思えない。何かがおかしい。と私は思いました。
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ここにいちゃいけない。ととっさに思いましたが、周りが真っ暗すぎて何も見えず、動こうに動けない。その時。
祖父と祖父の兄の墓がぼんやりと明るい光に包まれたんです。
ロウソクに火がついてるわけでもない。なのに、なぜかその周りだけ明るい。
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よく目をこらして見たら、ニターっと笑った祖父が、手招きしていました。
祖父に会ったことなどないのに、顔が、鮮明にわかりました。
足が勝手にそっちに行きそうになる。
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心は拒んでいるのに、体が吸い寄せられるように祖父に近づいていく。
私は、「助けて!!!」と大声で叫んだつもりでしたが、実際には恐怖で叫べておらず、唇がかすかに動いただけだと思います。
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もう、祖父のすぐ近くまで来ていた。もう、終わりだと思った。ニターと笑った口が半開きになってこう言った。
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マッテイタヨ、 ウゥ、 ヤットキテクレタ、、
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もう、終わりだ、そう思った。
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その時、なにかに強く引っ張られた。そして、後ろにはねとばされて、塀に当たった。
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祖父は何だかとても悔しそうな顔をしていた。そして意識が飛んだ。
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目が覚めたら、墓地ではなく、ある空き家の前にいた。
その家は、幼稚園のとき、よくかわいがってくれていた、独り身のおじいさんの家だった。3年前に、亡くなった。
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私は、助かった、と思った。おじいさんに助けられたとこの時初めて理解した。
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家にかえって、特に怒られもせず、日常とほぼ変わらず、あれは夢なのか、と思ったけど、
、、、、
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帰ってズボンを見たら、誰かに掴まれたような泥の跡がついていた。
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そして、10年経った今でも、たまに祖父の夢でうなされる。そして、目が覚めたら、足が泥だらけになっています…
作者Y-mi
実話です。