ずっとずっと昔の話しです
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小さい頃から親は遅くまで帰らず、家には
妹と2人きりの殺伐とした生活が続いていた
放置という虐待
虐待という言葉も、その頃には
まだ、なかったけどね
母親は生活が苦しいわけでもないのに
水商売をしていて若い子と同じように
明け方まで遊んで、帰って来ない日が多かった
父親は、そんな家庭を嫌い遅くまで
どこに行っていたんだか帰って来なかった
食事も百円玉が数枚おいてあり今のような
コンビニも近くにない時代
お肉屋さんで毎日コロッケを買って食べていた
その時は、自分の感情なんて考えたり
しなかったし良く解ってなかった
そんなもんだと思っていたのだろう
でも本当は淋しくて淋しくて
仕方がなかったんだと思う
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中学に上がると同じような奴らの仲間が出来た
今の若者のようにニュースになるような
変に悪いことはしなかったけれどね
警察にお世話になったこともないし
まあ…
ただの不良少女
ブリーチかけてメッシュ入れて
ズルズルの長いスカートにエナメルの靴
まわりからは、白い目で見られていた
タバコに、万引き、カツアゲを少々………
これも立派に悪いことか…
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学校なんて、行かない日も多かったし
行っても体育館で遊んでたりしてた
親は呼び出しされても1度も
来なかったから叱られる心配もない
荒れてた……
そんな生活が当たり前になった
中2の頃から悪夢に悩むようになった
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夢に、お爺さんが出てくる
知らない人
突然見るようになった
その頃、私の部屋は溜まり場になっていて
いつも数人の友達がたむろしていた
父が帰ってくる、午前2時過ぎに寝て
朝、カーテンの隙間から父が車に乗り込み出勤するまで
静かにしていて
「行った?行った?」なんて確認してから
好きに騒いでいた
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その場面と同じ夢を繰り返し見た
私を含め皆もいるのに
もう一人の私がいる
もう一人の私は爺さんに首根っこ捕まれて
凄い形相で
「ほら!見ろーー」と怒鳴られている
怒鳴られてるのが解るけれど、
口パクで実際の声は聞こえない
それが妙に怖かった
客観的に見ると自分のしてることも
ひどいと思えて
起きると毎回、泣いていた
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ある日は友人が夜中にうちに来てから
一緒に出かける予定だった
今から思うと、一緒に行こうとしていた
所は、ちょいヤバイ場所だった
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深夜に待ち合わせをしていたし
珍しく部屋には誰も
いなかったから、ベットで横になると
いつしか寝てしまった
どのくらいたったのだろう
胸に強い圧迫感で目が覚めた
………
金縛りになっていた
痺れに似た感じで動けない…………
あれ?誰か座ってる?
動けない身体で眼球だけ動かし見た……
shake
あの爺さんだ
正座で後ろ向きに座っている
その時、
「おまたせー」って玄関が開いて階段を上がる
友達の足音が聞こえた
早く……
早くきてーーーーー
声にならなかったけれど叫んだ
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爺さんは正面に正座したまま首だけで
……振り向いた
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その顔は、いつものように険しい顔で
私を見ている
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なんなんだよ…………
あの爺さん…
ふざけんなよ…
どこで取り憑かれたんだ?……
何でワタシなんだよぉ………
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毎日のように見る悪夢で疲れていた
夢で見る自分の姿にも後ろめたい気持ちが
強くなり今の生活が嫌になった
溜まり場になってた部屋も綺麗にした
夜中に出歩く事もなくなり
退屈だから学校も行き出した
悪い友達も離れて行った
普通の友達も多くなっていき
いつしか夢も見なくなった
あの爺さんの存在も忘れかけていた
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目標の高校に入学したとき、祖母が亡くなった
父は6人兄弟だったが、こんな生活だったので
疎遠になっていた
記憶の奥底に残ってた祖母の家
昔は牛を飼っていてトイレが外にあるのが
怖かった
今は、こっちと変わらない
それでも本家は田舎で大きな家だったので
葬式は家で行われていた
まだ、準備の段階で親戚以外は誰も
来ていない
葬儀屋が慌ただしく準備をしている
……
広い畳の部屋で真ん中に寝かされてる祖母
こんな小さい人だったっけ
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続き部屋の先に立派な仏壇があった
仏壇の上の壁には、古い額に入れられた
沢山の白黒写真が飾られている
ご先祖様?だろうね
さほど、興味はなかったが何となく
はじから見ていく
やっぱり父親と似てるみたい
………………………………!
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何枚目だろう
白黒の写真の1枚に、目が釘付けになる
同時に全身の毛穴が開く
あの爺さんだ
久しぶりに見たけど忘れもしない、
険しい顔
あの爺さんがなんで?
母親の葬儀なのに寄り添うでもない
父親に聞く
「………ちょっと…!この人は誰よ?」
「俺の父さんだよ」と父が言う
…………………………………………!
まじ?
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言葉が出なかった
祖父は父が14歳の時に交通事故で死んだ
厳しい人だったが家族を大切にする
良い父親だったとのこと
父に初めて夢の事を話した
父はみるみる、顔を赤くして涙が溢れだした
後から来た母親が私達の姿を見つけて
どうしたの?と顔をしかめる
父は、あんな家庭だった私が
心配だったんだろうと
どうして、そんな事になってしまったのか
独り言のように繰り返し言いながら
泣いた
そんな父を見て母親も背中をさすりながら
泣いていた
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位牌に手を合わせた
ごめん… おじいちゃん
ありがとう…おじいちゃん
父は、仕事が終わると
早く帰って来るようになり
母親も勤めを変え、家にいるようになった
今から思うと良く、元に戻れたと思う
とりあえず…
10年ぶりかに、家族で夕飯を食べて
笑う日々が来た
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爺さん、聞いてる?
どこかで見てる?
もう、爺さんが
出てこなくてもいいように
頑張るから大丈夫だよ
お父さんもお母さんも努力してるよ
きっと普通のどこでもある家庭に
なれると思うから
……
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これも不良時代に本当にあった話しです
爺さんが出て来なかったら
今、どんな自分になっていたのかな
家族は、きっとバラバラになっていたのかも
だけど爺さん!
まだまだ………
見守っていてよ
作者あこ
下手な文章を最後まで読んで頂きありがとうございました
これも本当にあった話しです
あれから悪いことした時にビクビクして
いましたが現れませんでした(笑)