俺の父は現在職人をしているが
母の話によると昔は違う仕事をしていたらしい…あまり父に聞いた事はないが道にかなり詳しい。
人間カーナビとでも行った方が分かりやすいだろうか…
父と2人っきりになれる機会があったので
昔、何の仕事をしていたのか聞きたくなった。窓を開けて煙草に火をつけて何気なく聞いてみた。
「とおーちゃん、かあーちゃんから聞いたんだけど昔は違う仕事だったんでしょ?」
「おっ、かあーちゃんから聞いたのか?
あまり話したことないけどな…聞きたいなら教えるぞ、ただ…あまり話したくないけどな。」
父が困ったような顔をしながら言ってきた。
俺はそんな事を聞いたら余計に話を聞きたくて好奇心が湧いてきた。
「聞きたいけど、言いたくないなら
別にいいや。」
目的地まであと、2時間はかかる暇潰しに聞いてみたいがあまり言いたそうじゃないから
2本目の煙草に火をつけようとしたら話し始めた。
俺は霊的なものは持ち合わせてないが
父は小さい時から霊感があったらしい
何の前触れや予兆もないまま35過ぎにパタリと霊感がなくなったらしい…話を聞く限りではかなりの霊感の強さがあったのが分かる。
父が小学校三年生の時の話らしい…
昔は、街灯も少ない時にお母さんとお風呂屋さんに行こうとしたらしいが夜道が危ないので途中からおんぶしながら歩いてたらしい
お母さんも霊感があった為、ここは歩きたくないとかここから先は行ったら何か起きるとかが直感で分かるらしい。
その、道というのがただひたすら真っ直ぐな一本道で両端が畑になってたらしい…
すると、両端の右側の畑で数人の兵隊さんが行進をしながら歩いてたらしい。
お母さんは
「トオル、用事を思い出した、また今度お風呂屋さん行こうな。」
お母さんは、父が霊感なんかあるわけないと思い怖がらせないよう言った。
お母さんには分からないが小さい時から霊感がある父はお母さんに聞いたらしい…
「ねぇ、お母さん…あの、兵隊さん達は何処に行くの?何をしてるの?」
霊感がないと思っていたお母さんは父に
あんた、あれが見えるのと聞いたらしい
父は声を出さずにうなづいた。
すると、お母さんは父に言った
「トオル、あれはお化けなんよ…だから話かけられても話したらいかんよ!もし、話したらお母さんとお風呂屋さんに行けなくなるんよ」
父が分かったと言った後にお母さんに
言ったらしい…
「なぁ…お母さん、そしたらここにいる人もそうなの?」
すぐ隣を見つめて指を差したらしい…
文章にしたら長いが話では10分くらいの話だった。昼間に聞いといてよかったと思った。
続けて父が昔の仕事の話をした…
俺が小さい時に父は運転代行者という仕事をしていたらしい…
内容的には、夜にお酒を飲み過ぎたお客さんの代わりにお客さんの車を代わりに運転して車庫に入れる作業らしい。バブル世代だった頃、大体がベンツやプレジデントなど高級車が多かったらしい。
その分、気前がいいお客さんが多い為出すお金も多かったらしいが…
気をかなり使うらしい。
父が道に詳しいのはその仕事のお陰らしい
ただ、嫌なのが霊感が強い為、後部座席に乗ってるはずのない人も乗り合わせてるらしい…その時はなるべく目を合わせないらしい。
そして…辞めるきっかけとなる出来事があったらしい、高級クラブで呑んでいる人から依頼があった為、現場に向かったらしいが
普通なら車の持ち主は同乗せずに住所や家族に連絡をして事情を説明して向かうのだが
同乗を希望した為、乗ったまま目的地に向かった。
先程まで呑んでたのに車内はお酒臭くないし
説明する口調もしっかりしていたらしい…
ただ、世間話とかはしないで言われた道を走ったらしい。
しばらく走ってると森の様なあまり車が走らない場所になっていたらしいが下をうつむいたまま話さなくなり寝ているかの様に静かだったらしい…
父は、もう車で進めない所まで行くと
車を停車してお客さんに話しかけた。
「お客さん、もうこれ以上進めないけど
道は合ってますかね…もし、間違えなら引き返しますか?」
返事がないので振り返ると同乗していたはずのお客さんが居なかったらしい…
父は、前を振り向こうとした時に…
「ありがとな」って微かに聞こえたらしく
前を振り向くと…
右側の窓でユラユラと揺れてる物があったのでハンドルを切り返してヘッドライトを当てると…
その、お客さんが首吊り自殺をしていたらしい…
すぐに父は警察、代行会社に電話をしたらいし…
死後、3日経ってたらしく目玉が飛び出しそうなくらい腫れてたらしい…
それをきっかけに代行の仕事は辞めて
今の仕事に就いたらしい。
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作者五右衛門