ある日子どもを連れて帰っていると同じアパートの奥さんに声をかけられた。ヒソヒソとした声で聞いてくる。
「最近、ゆうた君変わった様子はない?」
ゆうたはウチの次男だ。小学2年生。
本当に小学生らしい子供だと思っている
「え?うちの子が何かしました?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどこの間気味のわるいモノを見てしまって」
「あ、それ、もえも見た」
この子は同じアパートの女の子だ。
小学3年生。先の奥さんの子供ではない。
「おばちゃんと学校帰りにおしゃべりしてたらゆうたが田んぼの方から帰って来てて
『おーいゆうた~』って言ったら凄い笑顔で手を振り返してて、おばちゃんがあれっ?って言うからおばちゃんが見てる方見たらゆうたがアパートの階段登っててゆうた‼︎って呼んでも無視して家に入って行った。どっちがホンモノのゆうた⁉︎」
ゆうたは訳が分からず怯えている。
「いや、見間違いとは思うけどちょっとビックリしちゃって」
奥さんは言った。
私もそりゃそうでしょ!見間違いでしょ!と思い、この世の終わり程にビビるゆうたが可笑しくて可愛くて主人に帰宅してその話をした。
「〜って事があってね、どうやら、ゆうたのニセモノがいるらしいよ~(笑)も〜それ聞いてゆうたビビってさ〜またもえちゃんも脅すもんだから(笑)」
「は?それいつの話?」
「えっと、おとといの夕方って二人とも言ってたよ。」
「は?それおかしくない?お前おとといゆうた、学校まで迎えにいってたやん?」
「あ、 そうやん私おととい病院行くからってゆうた学校まで迎えに行ったんやった。」
「「ゆうたのニセモノ 二人いるって事?」」
ヤバイ。怖い。もえちゃんが最後に言ってた事を思い出す。
あの時は本気で聞いてなかったけど。
その後、ゆうたんちの窓からゆうたがいっぱいこっち見てたよ。どれがホンモノ?
今は本気で引越しを考えている。
作者ファニーブラック
実話なんですが、その次の日、仕事から帰るともえちゃんがお祓いすると言ってゆうたをアスファルトを正座させ何やら呪文を唱えながらビシバシッと肩を叩きゆうたは合掌しながらの必死の形相で目を閉じている姿には全身の力が抜けました。