ふと目覚めた俺は目の前の光景に驚いた。
俺が世界で1番愛する女が男とキスを交わし
ているではないか。
思えばすれ違いばかりであった。
あのころの二人を取り戻す為にやって来た
思い出の海。久々のデートだというのに趣味
であるサーフィンに没頭していた俺は確かに
悪い。
しかしまさか彼女がビーチで男とキスを交
わしているとは、怒りが頂点に達した俺は二
人に近づこうとしたが、今一度冷静に目の前
の光景を捉えてみる。
仰向けに倒れた男と唇を重ねている彼女は
溺れた男を救助していたのだ。
誤解に気づいた俺は二人を助けようと砂浜を
走るが思うように進まない。
やっとの思いで辿り着いた俺は目の前の男
の顔を見て愕然とした。
青ざめた男の顔は自分自身であった。
そうか俺は溺れかけていたんだ。命を取り
戻す事は出来るのだろうか。
どれくらい時間が経過したのか分からない。
俺は再び目を覚ますと目の前の光景に驚いた。
「チェ」
残念そうな顔をした彼女が舌打ちを
しているではないか。
作者中嶋愛矢