長編16
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ライバル2

ー日曜日ー

佐藤達はスコップを入れたリュックを背負って小池の家へと向かった。目的は勿論、堀井の死体を見つけるためである。その為に佐藤はある人物を呼んでいる。

佐藤「あの人に頼めば堀井さんの望みは全て叶えられるはずだ。」

ー小池家ー

佐藤達が小池家に着くと家の前に小池の家族が立っていた。

小池「お待ちしておりました。」

佐藤「今日はすいませんね。こんなに大勢で来てしまって。」

佐藤は四人で来たので申し訳無さそうに言った。

小池「いえ、それは構いません。ですが…本当に今日、母を助けてくださるんですか?」

そう、佐藤は小池の家族には今日小池の母親を助ける為に訪れると言ってやって来たのだ。

佐藤「ええ、勿論です。ですがそのためには事前に話した通り、この家の庭を調べる必要があります。そう、お母さんに憑いている霊が何で毎晩庭を掘り起こしていたのかを探るために。」

小池の父「承知しています、どうぞ調べて下さい。」

こうして小池一家の許可を取った佐藤達は堀井の死体の捜索を始めた。

勤「どうだ、佐藤?」

理子「どこに埋まっているの?」

二人が佐藤に話し掛けるが、佐藤は地面をじっと見つめている。(霊視中)

しばらくの間黙って地面を見つめていた佐藤だが、ようやく口を開いた。

佐藤「そこだ。」

そう言いながら佐藤は庭の隅を指した。そこから死体の気配を感じ取れたからだ。

勤「あそこか。」

全員がごくりと唾を飲み込む。

その時、小池家を一人の男が訪れた。

その男は…

佐藤「石田さん!」

石田「やあ渉君。遅くなってすまないね。」

佐藤「いえ、来て下さってありがとうございます。」

そう、彼こそ佐藤が呼んでいた人物である警視庁捜査一課の石田刑事だ。

石田「ハハッ、渉君の頼みなら断れないからね。」

佐藤「ではお願いします。」

そう言うと佐藤は背負っていたリュックから二人分のスコップを取りだし、一つを石田刑事に渡した。

小池「あの…その人は?」

突然やって来た石田刑事に驚いていた小池が質問してきた。

佐藤「ああ、すいません。言い忘れていましたが庭を掘り起こして調べるのを手伝ってもらう為に僕が呼んだんです。」

石田「初めまして、石田です。突然の来訪をお許しください。」

小池の父「そうでしたか。どうぞお構い無く。」

こうして佐藤と石田刑事、それに勤と鈴木の四人が死体を掘り起こす事になった。

ーそれから五分後ー

佐藤が指した庭の隅を四人で掘り起こした所、一体の白骨死体が出てきた。

勤「ほ、骨!?」

理子「嘘!何でこんな早くに!?」

勤と理子は出てきた死体が骨になっている事に驚いていたが、石田刑事は犯人が死体に石灰を撒いておいたんだろうと推測した。

佐藤「石灰を撒くと骨になるんですか?」

石田「ああ。死体やその周辺に石灰を撒いておけば雨水等を吸収し、死体の腐敗速度が早まるからね。その為に死亡推定時刻も割り出すのが困難になってしまうんだ。その証拠にホラ、死体のあちこちに石灰が残っているだろ?」

そう話す石田刑事の手には石灰の欠片があった。

理子「ほんとだー。」

佐藤達は石田刑事の説明に納得していたが、側にいた小池の家族は白骨死体を見て呆然としていた。

小池の父「一体どういう事なんですか、これは!?」

小池の父親は驚きながら佐藤達に質問してきた。

佐藤「これについては今から説明します。」

佐藤の説明を聞いて小池家族は信じられないという感じだったが、実際に死体が庭から出てきたので信じるしかなかった。

小池「つまり私の母が毎晩庭を掘り起こしていたのは死体を見つけるためだったんですね?」

佐藤「ええ、そういうことです。」

小池家族は家の庭に死体が埋まっていたという事実にショックを受けていた。佐藤はそれを察し、小池の母親の事についての説明をすることにした。

佐藤「とにかくこれでお母さんはもう例の行動を行う事はないでしょう。しばらくは潜在意識に残るでしょうが、いずれ元に戻る筈ですからご安心を。」

そう言われて小池の家族はホッとして泣きながら礼を述べた。

佐藤「では石田さん、後の事は宜しくお願いします。」

石田「ああ、勿論だよ。」

石田刑事はそう言うと警察手帳を取りだし、それを小池一家に見せて自己紹介をした。

石田「私は警視庁捜査一課の者です。間も無く本庁から応援が来るので捜査の方にご協力を。」

小池一家は彼が刑事だと知り、驚いていた。

小池の父「どうして刑事さんがここに!?」

石田「私は佐藤渉君の知り合いでしてね、彼から頼まれていたんですよ。この家の庭に行方不明者の死体が埋まっているかも知れないから掘るのを手伝って欲しいと。まあ、私自身半信半疑ではありましたが万が一の事もあるのでやって来たというわけです。」

説明を聞いて小池一家は納得してくれたようだ。

その頃、小池の相談事を終えた佐藤達は帰路についていた。

理子「本当に良かったのかな、これで。」

帰りの道中、理子が俯きながら言った。

勤「仕方ねえよ。あの子のお袋さんを助けるにはこうするしかなかったんだから。なあ、佐藤?」

佐藤「ああ…」

佐藤もやりきれない感じだったため、低い返事をするしかなかった。

鈴木「でも僕、やっぱり許せないよ!死体を他人の家の庭に埋めるなんて!」

鈴木は犯人が行った事に腹を立てていた。

勤「本当にそうだよな!最悪な奴だぜ、マジで!」

勤も鈴木同様に腹を立てていた。だがそれはこの二人だけでなく、佐藤と理子も同じだった。

理子「ねえ佐藤君、犯人を見つける事は出来ないの?」

理子は犯人が許せないために佐藤に意見を求めてきた。

佐藤「う~ん…今の段階じゃまだ無理だね。取り合えず石田さんにも協力してもらうけど。」

勤「よおし、だったら俺達の手で犯人を捕まえようじゃねえか!」

勤の意見に理子と鈴木は直ぐに賛成した。佐藤に関しては少々渋っていたが、しばらく考えてから賛成した。

こうして佐藤達は堀井尚美を殺害し、その死体を小池の家の庭に埋めた犯人を捕まえることを誓ったのだった。

だが佐藤達はまだ何も知らなかった。この事件の裏で佐藤達にとって想像もつかない人物が糸を引いていたことを。

ー翌日ー

放課後、佐藤達は早速部室に集まって会議を始めた。

そこで佐藤は石田刑事から聞いたある情報を提供した。

勤「何っ?容疑者が浮上した!?」

佐藤「ああ、石田さんによると…」

佐藤が石田刑事から聞いた情報内容はこうだ。

警察の聞き込みによって小池一家が旅行に出掛けていた日の夜、小池の家の周辺に車を止めてうろついていた不審人物がいたという事が判明した。

その不審人物の特徴は帽子を深くかぶっていたので分からなかったそうだが、手にスコップを持っていたらしいので警察はその不審人物が犯人だと推測し、捜査を進めているらしい。

佐藤「って言うのが石田さんから聞いた事なんだけど。」

佐藤の話を聞き、勤はドンッと机を叩き、「間違いねえよ、そいつが犯人で決まりだ!」と叫んだ。

理子「そうね。夜中に人の家の近くに車を止めて、スコップを持ったままうろつくなんて犯人に決まってるわ!」

鈴木「僕も同じだよ、佐藤君!」

佐藤「ああ、勿論俺や石田さんも同じだよ。でもこれだけじゃその容疑者がどこの誰かなのかが分からないから意味がない。」

佐藤の言うことは最もである。四人がその事について悩んでいると、部室のドアがノックされた。

勤「何だ、また相談か?どうぞ!」

勤が返事をするとドアが開いて、田中と金田が入ってきた。

金田「やあ。」

勤「金田に田中じゃないか。どうしたんだ?」

金田「彼の相談事が解決したから知らせようと思ってね。」

そう、金田は田中の相談が解決した事を報告しにやって来たのだ。

理子「えっ?あの相談事が解決したの?」

理子は驚いていた。いや、理子だけじゃなく佐藤達三人もだ。

勤「マジかよ、どうやって!?」

勤が驚きながら尋ねると田中が説明してきた。

田中「金田先輩が真犯人を見つけてくれたんですよ!それで僕の疑いも晴れたんです!」

金田が真犯人を見つけたと聞き、佐藤は気になったので質問してみた。

佐藤「どうやって犯人を見つけたの?」

その問いに金田は指で頭を叩いて、「ここを使ったんだよ。」と言った。

理子「頭?」

金田「そう、推理したんだよ。」

佐藤「へー、すごいね。」

佐藤は金田に感心していた。

勤「でもよく警察の捜査に参加できたな。刑事に協力とかしてもらったんだろ?」

金田「あ、ああ。まあね。」

佐藤は金田が一瞬見せた焦りに注目したが、そこは敢えて触れなかった。

田中「所で皆さんは何を話していたんですか?」

勤「いや、それが…」

そこで勤は死体を小池の家の庭に埋めた犯人を見つけるために今、議論していたと言う事を話した。

田中「今の話、本当なんですか!?小池の家の庭から死体が出てきたって話…」

田中は話を聞いて驚いていた。どうやら知らなかった様だ。

勤「あれ、知らないのか?あの子とは友達なんだろ?」

田中「え、ええ。確かに小池とは友人ですがクラスは違いますし、今日はまだ会って話をしていませんから。」

勤はそう聞いて納得すると、今度は金田にある提案をした。

勤「で、金田!お前はどうする?俺達と一緒に事件を解決しねえか? 」

勤は金田にも協力してもらおうと思って提案したのだが、金田は勤の提案を拒否した。

金田「悪いけどそれは断るよ。僕は自分一人で調査するから。君らは殺人事件よりも心霊相談でも解決してたら?」

金田はそう言うと田中と共に部室を出ていった。

勤「な、何だよあの態度!感じ悪いな!」

理子「ほんと!失礼極まりないわよね!」

勤と理子は金田の態度に対して激しく腹を立てていた。

鈴木「金田君ってああいう人だったんだね。」

鈴木は怒っていなかったが、少々驚いていた。

佐藤「まあ仕方無いさ。とにかくさっきの問題について考えないと。」

佐藤のその一言で三人はようやく先程の話の続きに戻った。

鈴木「ねえ佐藤君、霊視で犯人がどういう人か突き止められないかな?」

佐藤「それは僕も考えたけど、特徴が分からないことには無理があるよ。」

佐藤にそう言われて鈴木はガックリするが、ある方法を思い付いた。

鈴木「そうだ!被害者の堀井尚美さんに聞いてみたら分かるんじゃ…」

鈴木のその一言を聞き、佐藤はハッとする。

佐藤「それだ!」

二人は数珠を取りだし、堀井尚美の降霊を試みた。

すると二人の目の前に堀井尚美の霊が現れた。

堀井「あの…何かご用でしょうか?」

佐藤「突然呼び出してしまってすいません。実は貴方に聞きたいことがあって…」

堀井「私を殺した人が誰なのかを知りたいんですね?」

佐藤「ええ、そのためにいくつか質問に答えていただけますか?」

堀井はしばらく考えていたが、すぐに了承した。

堀井「分かりました、できる限りの事は協力します。」

佐藤・鈴木「ありがとうございます!」

二人は礼を述べると早速質問を開始した。

佐藤「まず、あなたが殺害された時の状況を詳しく教えてください。」

堀井「はい。あれは今から三週間前の日曜日、東京校外の山中での事です。」

そう前置きし、堀井は話始めた。

その日堀井はハイキングの為に東京校外の山中を登山していた。当日は晴天で正にハイキング日和であったが午後になると天候が乱れ、大雨に遭ってしまった。その為に堀井はどこか雨宿りできる場所を探して奥へと進んだ。

堀井「ですがいくら探しても見つからない上に段々雨も強くなってきました。 」

その時の堀井は辛かったが、ようやく雨宿りできる場所を見つけた。そこは森の奥の崖にあった洞窟だった。

堀井「私はその洞窟を見つけるなり迷わず飛び込みました。ですが今思えば、あの洞窟に入った時点で私の運命は決まっていたのかもしれません。」

鈴木「まさか、その洞窟の中で殺されたんですか?」

鈴木の問いに堀井は小さく頷いた。

堀井「そうです。その洞窟こそが私が殺された場所だったんです。」

佐藤「あなたが飛び込んだ時、既に犯人は中にいたんですか?」

堀井「はい。犯人は私が飛び込むなり刃物で私を…」

そこまで言うと堀井は俯き、口を閉ざしてしまった。

佐藤「堀井さん、犯人を捕まえる為にもそいつの特徴を詳しく教えてください!お願いします!」

佐藤は頼み込んだが、堀井は口を開こうとしなかった。

佐藤「駄目ですか?」

堀井「……私が話せるのはここまでです。犯人の特徴は暗かった上に一瞬だったので分かりませんでした。私は死後に気づいたらあの家の庭にいましたから。そしてあの家の奥さんに…」

佐藤「分かりました、ご協力いただきありがとうございました。」

佐藤が礼を述べると堀井は姿を消した。

それから十分程の間、佐藤と鈴木は勤と理子に先程の会話の内容を説明した。

勤「そうか、犯人は分からなかったか。」

勤は犯人の特徴が分からなかったと聞いて頭を抱え込んでいた。

佐藤「でも被害者が殺害された場所は分かったよ。そこへ行って霊視すれば何か分かるかもしれない。」

勤「よし、じゃあそこへ行って見ようぜ!」

こうして佐藤達は堀井尚美の殺害現場へと向かうのだった。

ー校門前ー

勤「東京校外の山中に行くにはどうすればいいんだ?」

佐藤「電車に乗れば直ぐだよ。さあ行こう!」

佐藤と勤が走って駅に向かうので、理子と鈴木もその後を追った。

だが、この時近くの電柱の陰から何者かが佐藤達を監視していた事には誰も気がついていなかった。

?「フッ…」

その人物が不敵な笑みを浮かべていたことすらも。

ー東京校外の山中ー

電車を乗り継いで佐藤達が殺害現場についた頃には既に夕方だった。

勤「やべーな、日が暮れかけてるぜ。」

佐藤「急いで洞窟に向かおう!」

そしてそれから十分後、佐藤達の前に堀井が言っていた洞窟が現れた。

勤「ここか。」

佐藤「よし、懐中電灯も使って中へ入ろう。」

鈴木「うん!」

佐藤達は途中のコンビニで買っておいた懐中電灯を手に、中へと進んだ。

内部は真っ暗で懐中電灯の明かりなしではいられなかった。

佐藤「!これは…」

佐藤が何かを見つけたようだ。

勤「ん?どうした佐藤。」

佐藤「これを見てくれ。」

佐藤が懐中電灯で照らした所を見るとそこには赤い液体の痕があった。

理子「何かしらこれ?」

鈴木「はっ。ね、ねえ佐藤君…この色ってまさか…」

鈴木が恐る恐る尋ねると佐藤は鈴木の方を向き、「そう。これは血痕だよ、被害者のね。」と言った。

理子「じゃあ、やっぱりここが殺害現場!?」

佐藤「ああ、間違いないね。」

そこで佐藤が数珠を取りだし、霊視をしようとしたその時…

ザッ。

突然入り口の方で物音がした。

佐藤「だ、だれだ!?」

四人が入り口の方を振り向くとそこには一人の男がいた。

勤「お、お前は?」

?「私はそこで堀井尚美を殺害した者だ。」

佐藤「何っ!?」

佐藤達が驚いていると男は懐から刃物を取り出した。

更にその刃物には僅かに血痕が残っていた。

佐藤「そ、それは被害者を殺害した凶器か!?」

佐藤が驚きながら尋ねると男はそうだと答える。

?「これ以上お前らを野放しにしておけば、いずれ俺は警察に捕まる。だからその前にお前らを殺してやる!」

そう言いながら男は刃物を佐藤達に向けて迫り来る!

ダダダダ…

?「ウォー!!」

理子「キャー!!」

しかしその時、突然銃声が響いた。

ドーン!

?「ぐおっ!」

その音が響くと同時に男は倒れ、その背中は血で真っ赤になっていた。

佐藤達が呆然としていると入り口から「君達、大丈夫か!?」と叫ぶ声がした。

その声で我に帰った佐藤達が前を向くとそこには拳銃を持った警官がいた。

警官「さあ、もう大丈夫だ!早く外へ!!」

佐藤達「ハ、ハイ!」

佐藤達が外へ出てみるとパトカーが数台止まっており、発砲した警官以外にも沢山の警察官がいた。

勤「ど、どうなってるんだ?」

鈴木「何で警察が?」

佐藤達がどうなっているのか分からずに困り果てていると先程発砲した警官がやってきた。

警官「間に合って良かったよ。」

佐藤「あの、一体これは…」

佐藤が尋ねると警官は説明し始めた。

その警官はふもとの交番に勤務しているそうだが、所轄の方から「山中の洞窟に凶悪犯が潜伏しているという情報が入ったから向かえ」と命令され、ここへやって来たらしい。

そして先程洞窟を訪れた際に刃物を持った男が佐藤達に向かっていったのを見て発砲したとの事だ。ちなみに所轄からはもし凶悪犯がいて、凶器を持っていたら発砲しろと言われていたらしい。

佐藤「そうだったんですか。」

警官「とにかく君達には事情聴取をしてもらうから本署へ来てくれないかな?」

佐藤達は事情聴取を受ける事を了承し、パトカーに乗って警察署へ向かった。

そしてそこでの事情聴取は一時間程で終わり、佐藤達は再びパトカーに乗って家へ帰される事になった。

勤「それにしても危なかったよな、もしもあそこで警察が来なかったら…」

理子「そうよね、助かって良かったわ。」

勤と理子は助かった感想を述べ合っていたが、佐藤は犯人の堀井尚美殺害の動機が気になっていた。

佐藤「それにしても気になるな。犯人は何故堀井尚美さんを殺害したんだ?昨日石田さんに聞いた所によると堀井尚美さんは誰かに恨まれたりしている事は無かったらしいし。それに犯人はどうして俺達があそこにいることを知って…」

色々気になる事があった佐藤だったが、後で石田刑事に聞くことにして帰宅する事にした。

翌日、佐藤達はいつもの様に部室に集まっていた。

佐藤「昨日石田さんに聞いたんだけどあの犯人の男、山中のふもとの町で通り魔をやってたらしいんだよ。」

理子「通り魔?それって本当!?」

佐藤「ああ、石田さんによると…」

石田刑事によると、犯人・永山季吉(ながやますえきち)は二ヶ月前から通り魔として山中のふもとの町に出没していたらしい。そして永山は三週間前の夜、アジトにしていたあの洞窟に入ってきた堀井尚美を警察と勘違いして刺殺してしまったらしい。

佐藤「で、永山は死体をあの山中に埋める事にしようと考えたらしいんだけど…」

勤「急に気が変わってあの子の家の庭に埋めたのか?」

だが佐藤は首を横に振り、石田刑事から聞いた内容を話始めた。

死体を埋めようとしていた永山だが、その時突然掛かってきた電話の相手にこう言われたらしい。以下はその内容だ。

?「あなたは人を殺しましたね?」

永山「なっ、何を言って…あんたはだれだ!?」

?「フッ。私は死者の声を聞く者ですよ、永山季吉さん。」

永山「!?」

その後永山は電話の相手に言われるまま、山の入り口に止まっていた車を使って堀井尚美の死体を小池の家に運んで庭に埋めたらしい。ちなみに埋める前に死体には車に積んである石灰を撒くようにとも指示されたようだ。

また、相手はもしも断れば警察に永山の潜伏先を教えると脅していたらしいので、永山は逆らえなかったとの事だ。

こうして死体を埋めた永山だったが、昨日再び電話で「妙な高校生達が死体を見つけ、あなたの正体を探っています。このままではいずれ警察に捕まるでしょう。その前にあなたの手で彼らを殺すのです。彼らは夕方ごろにその洞窟を訪れる筈ですから。」

と言われて佐藤達を殺害する事にしたらしい。以上が石田刑事からの情報である。

勤「でも、それって本当なのか!?ただ単に言い訳してるだけじゃねえのか? 」

佐藤「さあね。警察は半信半疑らしいけど。まあ、もしも本当なら犯人はもう一人いるはずだけどね。」

コンコン

その時、部室のドアがノックされた。

勤「どうぞ!」

勤が返事をするとドアが開き、金田が入ってきた。

佐藤「金田君?」

金田「やあ、昨日は大変だったね。」

勤「えっ?」

勤達がどうして昨日の事を知っているのかを聞くと金田は「実は僕が警察に通報したんだよ。君たちが向かった洞窟に凶悪犯がいるってね。」と言った。

鈴木「えっ、そうだったの!?」

金田「ああ。」

佐藤達は驚いていたが、金田は続けて「実は今日ここを訪れたのは佐藤君に用があってね。」と言ってきた。

佐藤「そう言えば前にここを訪れた時、僕に用があるって言ってたね。」

金田「そう、今日はあの時の用事を済ませる為にここへ来たんだよ。」

そう言うと金田はこう言った。

金田「君はこの学校では有名な霊能者らしいね。僕はそんな君と勝負したいんだ。」

佐藤「勝負?」

金田「そう、僕は推理。君は霊能力。この二つのどちらがすごいのかを決める勝負だよ。」

佐藤は金田の突然の発言に驚いていたが、どうして急にその勝負をする事に決めたのかを質問してみた。

すると金田は「僕は霊能力なんて信じない。しかし君がただ者じゃないという事は分かるんだ。だから君の力がどれほどの物かを知るためにも勝負したい訳なんだよ。」と言った。

佐藤はやむ無くその勝負を受ける事にした。

佐藤「でも勝負って言ってもどうやって?推理と霊能力を使っての勝負なら今回の様な事件でもないと。」

金田「だからその事件が発生した時に勝負するんだよ。君はいくつかの殺人事件解決に協力してるんだし、次に事件が起きれば僕との勝負も出来るだろ?」

佐藤「ま、まあそうだけど…。でもどうして君は僕が殺人事件解決に協力してる事を…?」

佐藤が不思議に思いながら質問すると金田は「石田刑事って知ってる?」と聞いてきた。

佐藤「えっ、君…石田さんの知り合いなの!?」

金田「いや、知り合いではないけど彼の事は僕の父から聞いてるんだ。彼は君の力を借りて色々な事件を解決しているとね。」

佐藤「君のお父さんは一体?」

金田「僕の父は警視庁の刑事部長なんだよ。」

その一言を聞き、佐藤達は驚きの余り大きな声を出した。

全員「ええーっ!?」

勤「お前の親父さんって警察のキャリアだったのかよ!?」

勤が驚きながら尋ねると金田は首を縦に振った。

佐藤「そうか。だから田中君の無実を晴らす時に警察の捜査に参加できたんだね?」

金田「その通り。僕が警視庁の刑事部長の息子だと知ったら僕に色々協力してくれたよ。お陰で真犯人を見つけ、捕まえる事も出来た。」

佐藤達は圧倒されていたが、突然携帯電話が鳴ったので我に帰った。

ピリリリ

佐藤「あっ、俺の携帯だ。誰だろ?」

不思議に思いながら電話に出る佐藤。

ピッ。

佐藤「もしもし?」

?「やあ、佐藤渉君だね?」

佐藤「?あなたは誰ですか?」

?「私は永山を操っていた者ですよ。」

佐藤「!あなたが永山を脅迫していた犯人だったんですか!?」

佐藤のその発言に勤達は驚いてしまう。

更に金田はその一言で佐藤から携帯を取ると電話に出た。

金田「あんた、今一体どこにいるんだ!?」

?「フッ、 またいつかどこかでお会いしましょう。金田浩君に佐藤渉君。」

金田「お、おい待て!せめて名前だけでも名乗れ!」

金田のその一言を聞くと電話の相手は笑い、「私の名は『死の脅迫者』」と言って電話を切ってしまう。

金田「くっ!」

佐藤「『死の脅迫者』…。一体、奴は何者なんだ?」

こうして佐藤の前にライバルの金田浩、宿敵の『死の脅迫者』が現れたのだった。

果たして佐藤は金田に霊能力で勝てるのか?

そして『死の脅迫者』の正体を突き止めることは出来るのだろうか?

Concrete
コメント怖い
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琉聖さん、コメント&怖いをつけてくださりありがとうございます!
これまでの全作品を読んでくださり光栄です。
今後の活躍を是非楽しみにしていてくださいね!

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aoiさん、コメント&怖いをつけてくださりありがとうございます!
金田は僕の妄想で生まれただけですが、確かにaoiさんの仰る人物に似てますね(笑)
金田に関しては頭の切れる奴という印象がピッタリですね。それから心霊を否定する現実主義者とも捉えてくださって結構です。
では、今後の展開楽しみに待っててくださいね!

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全作品読ませて頂きました。とても楽しく拝見出来ました(*^^*)今後の活躍楽しみにしてます。ありがとうございました♪

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警視庁の刑事部長の息子の金田君ってよく殺人事件に頭を突っ込む
警察庁刑事局長の弟の某ルポライターさんみたいな人なんですね。
中々頭の切れる御仁とお見受けしました。

これからの展開を楽しみにしておきますね。

返信

ガラさん、コメント&怖いをつけてくださりありがとうございます!いずれ『死の脅迫者』の正体等も明らかになるので楽しみに待っててください!

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スゲー良かった、続きが楽しみです(o^O^o)

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