気付いたのは最近だ。
クラスの子の首筋あたりにスイッチがある。
パソコンに付いてるようなマークが書いてあって、肌色だったので最初は気付かなかった。
あのスイッチはなんなのだろう・・・
本人に聞いてみたいが、そんな勇気は私には無い。
もしや、自分にもあるのでは無いか?
その心配は杞憂であった。
そんな物あるわけないのである。
私は正常だ。
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クラスの他の子に聞いてみたいが、変な人だと思われても嫌だ。
こんな時は親友のK子に相談だ。
彼女はいつも相談に乗ってくれる。
幼稚園からの大親友だ。
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K子「またこの子は~可笑しなことを言い出して」
私「本当なんだって!K子も一緒に確認してよ~」
K子「私にも付いてるかもよ!ホレホレ見てみなさい~」
おどけて私に首筋を見せてくるK子。
私「そんなわけないでしょ~・・・・ほ、ほら、やっぱり無いよ」
その時見てしまった。
K子の首筋にスイッチがあるのを。
私は咄嗟に嘘をついた。
このK子が、今まで私の親友であったことが嘘になってしまうような気がして。
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それから私はこのことを誰にも相談出来ずにいた。
しかし、どうしても気になることがある。
あのスイッチを押したらどうなるのであろうか?
試しに押してみるか?
いや、取り返しのつかないことになるかも知れない。
確認の手立てが無かった。
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しかし、答えはある事故によって判明した。
クラスの例の子が通学途中交通事故にあったのだ。
そして私はたまたまそこに居合わせた。
ゴンッ
鈍い音が後ろから聞こえ、その後ガラスが割れるような音が聞こえた。
振り返ると煙を上げた車のフロントガラスが割れていて、その中に少女が居た。
制服を見て同じ学校だと分かる。
きっと即死だろう・・・
落ちていたカバンが目に入る。
同じクラスの・・・あの子の物だ。
逃げたい気持ちもあったが、勇気を出して救出に向かう。
「ア、アゴゴゴゴ・・・エ、ラー103バン。エラーーァァ」
生きてる!?うめき声が聞こえてくる。
あの少女だろうか。
その時気絶していた運転手が急に動き出した。
「大丈夫か!?しっかりしろ!」
そう言いながら少女の肩を持ち揺さぶる。
その時見てしまったのだ。
その運転手が首筋のスイッチを押す所を。
途端少女は静かになり、何も言わなくなった。
「きゅ、救急車!君、救急車を呼んでくれ」
急いで電話し、ものの10分ほどで救急車は到着した。
同時に警察へも連絡が行っていたようで、ほぼ同時にパトカーも到着した。
そして、そのどちらでも無い見たことの無い車もあった。
中からは作業着姿の男が工具箱のような物を持って出てきた。
「君!現場に居合わせたようだね。事情聴取したいからパトカーに乗ってくれるかい?」
そこでどんな状況だったかなど聞かれた。
色々と聞かれたが、その中に一つ可笑しな質問があった。
「何か?変な物は見なかったかい?」
変な物?要領を得ない曖昧な質問。思わず聞き返す。
「いや、何も見ていなければいいんだ。別にね」
一瞬、あのスイッチのことを話そうかとも思ったがやめた。
警官の首筋にもあのスイッチが付いているのが見えたからである。
あの事故の後から、誰にも相談出来ていない。
何故なら、私の調べた限りでは・・・
このクラスの全員にスイッチがある。
もちろん私を除いてである。
私は正常だ。
作者gora1599
普通って何なんでしょうね。