子供の頃変なあだ名のついた近所での有名人が居なかっただろうか?
叫びながら子供を追いかける絶叫おじさんだとか、砂を投げてくる砂かけおばさんだとか。
親に言っても「あそこは仕方ない」の一点張り。
大人になった今ならその事情も察しはつくが・・・
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うちの近所にも有名なおじさんが居た。
その名も昇竜拳おじさんである。
夕方の公園で時折見かける。
「ショーーリューーケーーン!ショーーリューーケーーン!」
一体何と戦ってるんだ・・・
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ある日学校で昇竜拳おじさんの話になった。
噂話に尾ひれが付いてどこまでが本当か分からない情報ばかりだ。
とりあえず皆の話をまとめると・・・
・夕方に現れる
・いつも同じ公園
・公園に住んでる
・その時間帯に公園に入ると怒られる
・2年ほど前に別の場所で見たことがあるがその時は普通の大人だった
・頭の病気
・何かと戦ってる
・波動拳は打ってない
そのうち一人が見に行こうと言いだした。
私は乗り気ではなかったが、皆に弱虫と言われるのが嫌だったので付いて行った。
「ショーーリューーケーーン!ショーーリューーケーーン!」
やってるやってる。
見つかると怒られるらしいし、隠れて見ている。
「ショーーリューーケーーン!ショーーリューーケーーン!」
疲れないのかな・・・
もっと近づこう。そう言い出したのはT男だ。
いつも危険に突っ込んでいく無鉄砲な奴だ。
一人で行かせる訳にもいかず、私たちは公園のフェンスを乗り越えて侵入した。
T男「静かにな~」
生垣の裏に隠れて昇竜拳おじさんに接近する。
あと5mといったところか。
突然T男が走り出した。
T男「竜巻旋風脚ゥ!」
ただのとび蹴りだ。
私たちは一斉に逃げ出した。
振り返ると顔を真っ赤にした昇竜拳おじさんがこっちをにらんでいる。
「ハ、ハドゥーーケン!ハドゥーーケンン!!」
打った!波動拳も打ったぞ!
こっちに打っているようだが、少し狙いがずれているような気がした。
T男はどうしたのか。何故か腰を抜かして座り込んでこちらを見ている。
しかし、これも自業自得。子供は案外ドライなのだ。
無事に生き残ったら学校で会おう。さらばだ。
翌日T男は普通に学校に来ていた。
どうやらあの後昇竜拳おじさんに家まで送ってもらったらしい。
ビビって腰抜かしていたとさんざんバカにされていたT男がついにキレた。
T男「お前らなぁ!おっさんが何と戦ってるんか知っとるんか!」
はて。それはずっと気になっていた。
T男「お前らは何も・・・何も見とらんから。こんなこと言えるんや」
それからT男はクラスで孤立してしまった。
いつも放課後昇竜拳の練習をしている。
そのしばらく後、あの昇竜拳おじさんが亡くなったとの噂が流れた。
一番驚いていたのはT男だ。
T男「次は・・・わしの番や・・・」
その日からT男は学校に来なくなった。
「ショーーリューーケーーン!ショーーリューーケーーン!」
大人になった今でもあの公園では昇竜拳おじさんを見るとの噂を聞く。
我が子には絶対に近づかないように言い聞かせてある。
おじさんの霊?いや、あれはT男だろう。
おじさんが戦っていた物と、戦っているんだろう。
おじさんが守っていた何か・・・それは俺達だったんじゃないかと。
今ならそう思う。
おじさんが打った波動拳。あれは何を狙っていたんだろうか。
作者gora1599
昔居ましたよね。
なんとかおじさんとか。