友人と俺の運転する車で、県内の心霊スポットへ出掛けた。
山間にある古びたホテルで、以前に殺人事件があったそうだ。
…
帰り道。
俺達の乗る車は、街頭も無い山道を走る。
だが、心霊スポットに足を踏み入れた高揚感で、車を運転する俺のテンションは上がっていた。
「何も出なかったなぁ。ま、いいか。」
「…早く行こうぜ。」
「うん、そうだな。」
「帰りにどこかでメシでも食うべ。」
「…もっとスピード出せないのか?」
「暗いしさ。こんなもんだろ。」
「…あ、そこの道が近道だ。行こうぜ。」
「おいおい、森の中を走るのか? 変な道に行くんだな。」
「? 近道らしいし、いいじゃん。腹も減ったし。」
「…このまま真っ直ぐだからさ、もっとスピード上げろよ。早く行こうぜ。」
「よく道、解るなぁ。」
「? まあ、俺のドライブテクに任せろよ。」
「…もっと早く走れないのか?」
「少し早過ぎないか?」
「道も解るんだし、大丈夫だろ?」
「え?」
「…うん。大丈夫だよ。このまま、真っ直ぐ。だからさ…。」
「早く、行こうぜ。」
…
その瞬間
「おい!」
友人の声で、俺はブレーキを踏む。
急停止する車。
「目の前…。崖だ…。」
「危なかったなぁ…。」
俺の背に冷たい汗が流れた。
…
…
…
俺の車は街に入る。
ファミレスでメシを食いながら、友人が俺に聞いてきた。
「ところでさ…。」
「なんだ?」
「…お前。」
「?」
「誰と喋っていたんだ?」
「…」
「…」
「え?」
その時。
俺と友人。
二人の後ろから。
声がした。
『…逝ケバよカッタのニ…』
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作者yuki