此の話はフィクションですが、夢日記に関しての所だけは少しだけノンフィクションが混ざっています。実際に書き初めて何が起こったとしても、当方は一切の責任を負いません。
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夢夢夢
ねぇ、《夢日記》って知ってるかしら。ゲームの方じゃないわよ。本当に日記を付けるの。
・・・・・・え?
「何の」って・・・。其のままよ。夢。其の日に見た夢を日記に書くの。だから《夢日記》何でしょ?
・・・まぁ、知らないのなら教えてあげるわ。どうせ暇何だもの。貴方もそう?時間は有るのかしら?
・・・・・・。そう。なら、ちゃんと説明から始めるわね。
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夢夢夢夢
先ず、用意する物。此れはノートとペンだけ。消しゴムも有ると便利かしら。要は普通に日記を書くのに使う物が有れば良いの。
用意したら、枕元に置いて、起きたら直ぐに書ける様にしておいて。
で、普通に眠って、起きたら直ぐに日記を付けるの。直ぐに、よ。顔を洗ったり、朝御飯を食べちゃ駄目なの。夢の内容を忘れちゃうから。
其れを毎日繰り返すだけ。
ちゃんとした文章にする必要は無いのよ。夢何て、大抵が脈絡の無い物だから。走り書きで構わないの。勿論、夢を見なかった日は書かなくて良いわ。無理矢理捏造する様な事でも無いものね。
そうね。説明はこんな所かしら。何か質問は有る?
・・・・・・そう。じゃ、話を進めましょうか。
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夢夢夢夢夢
私ね、実は付けてるのよ。《夢日記》。
どうしてかって言うと・・・・・・。難しいわね。理由は色々と有るの。でも、主たる理由はやっぱり《噂》の所為かしらね。
此れも知らないわよね?だって、《夢日記》自体知らなかったんだから。
・・・・・・えーと、《夢日記》にはね、色々な効能?効用?・・・とも少し違うかも知れないけれど、何て言えば良いのかしら・・・。兎も角、そんな感じの効果が有るとされているの。
例えば、明晰夢・・・・嗚呼、自分で夢を見ているのを理解している夢の事よ。其の明晰夢を見る回数が増えるとか、後は、良い夢を見られる様になるとか・・・・・。色々ね。
其の中でも私が目を付けたのが、其の噂。
端的に言うと《夢日記を付け続けると気が狂う》らしいの。
其れを、実際の所どうなのか調べる為に、私は夢日記を始めたの。
・・・・・・どうして?
決まってるじゃない。最近、我等がオカルト同好会の活動が今一地味だからよ。最近じゃ、そんな部が存在してる方が珍しいんだから。折角、部室だって与えて貰ったんだもの。
確かに、此の理科準備室は狭いし、御世辞にも綺麗な場所じゃないけど、其れでも、貰えるだけ有り難いと思わなくちゃ。だから、成果・・・じゃないけど、なるべく、ちゃんとしたいじゃない?そう言う所は。仮にも部長だしね。
だから、人体実験。
する事自体、簡単で手を出し易かったのも魅力的だったし。其れで、始めたのは・・・・・・
確か、半年前だったかしら。
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夢夢夢夢夢夢
始めてから一ヶ月位は、余り大きな変化は無かったけど、夢を忘れなくなったわ。
やっぱり、文字にしてるからかしらね?日記を読み返さなくても忘れないの。此れは、一寸だけ驚いたわ。
何月何日に、どんな夢を、どんな視点から見たか、ハッキリと覚えていられるの。
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夢夢夢夢夢夢夢
三ヶ月を過ぎた頃からかしら。夢の内容がリアルになって来たの。
内容が一貫してて、ちゃんと話が成立してる感じ・・・・・・って言ったら、解り易い?
まぁ、ネットに書いてあった事と変わらなかったわ。明晰夢の回数も、順調に増えて来てたし。
面白かったわよ。色々な物になれて。
性別、国籍、果ては生物としての種類までが、毎日コロコロ変わるの。疑似体験、で合ってる?少し違う物かも知れないけど。
此の頃が一番楽しかったわ。
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夢夢夢夢夢夢夢夢
そして、五ヶ月を過ぎた頃。
今度は逆に、明晰夢を見なくなったの。いえ、見なくなったと言うか、判断が出来なくなった、と言う方が正しいかも知れない。
夢の内容がね、余りにリアル過ぎるの。
リアル過ぎて・・・・・・本当にそう何じゃないかって、思ってしまうの。
自分の、性別、国籍、種族が、其の時に見ている夢が本当の自分何じゃないかって。
どの夢が現実なのかが、判らなくなるの。いや、夢が現実何じゃないのは解っているんだけど・・・・・・。難しいわ。説明しにくいの。頭の中では理解出来てるんだけど。
《胡蝶の夢》に似てるかしら。知ってる?
蝶になって遊ぶ夢を見た男が、起きた時、本当に自分は人間なのか、夢で見た胡蝶こそが本当の自分で、今の人間の自分こそが、胡蝶の見ている夢なのではないか、って思う話。
ええと・・・・・・ごめんなさい。自分で言っておいて、意味が分からないわ。
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夢夢夢夢夢夢夢夢夢?
先輩はそう言って、ハンカチを取り出した。顔を酷くしかめながら、薄いブルーの其れを、そっとこめかみに押し当てる。
私は思わず大きな声を出した。
「大丈夫ですか?」
「ええ。有り難う。気にしないで頂戴。」
立ち上がろうとした私を、空いていた左手で制し、先輩は気弱な笑みを浮かべた。
「こんなんじゃ、先輩失格ね。」
私は黙って首を横に振った。
先輩の顔が、益々泣きそうになる。
「もう、今が夢なのか現実なのかも、判らないのよ。自分がどんな人間だったのかも。どんな風に暮らしていたのかも。情けない事だけど。其れでも、貴方の事はちゃんと覚えてるの。不思議ね。」
震える声で告げて、唇の端が僅かに上がった。どうやら、笑顔を作ったつもりらしかった。
目の奥がジワリと熱くなる。私は顔を背け、髪型を整える振りをして目を擦った。
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悲しかった。優しくて強くて人気者だった先輩が、こんなにも弱々しく、私に縋っていると言う事が。
告げてしまいたい。《此処が現実なのだ》と、教えてあげたい。先輩の本当の姿を。そうしたら、先輩は少しだって楽になれるかも知れない。また、元の先輩に戻るかも知れない。
・・・今まで、何度そう思った事だろう。
・・・・・・けれど。
私は、未だに、先輩に其れを告げられずに居る。
怖いのだ。先輩がまた、優しく、強くなってしまう事が。優しく強くなって、私から離れて行ってしまう事が。
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「部員もどんどん減って、もう貴方しか居なくなってしまったわ。自分でも解ってるのよ。自分が可笑しくなってしまったからだ、って。どうせ、貴方が此処に居てくれるのも、きっと、憐れみからなんでしょう?」
先輩がポツリと呟き、チラリと私の方を見る。
何処か媚を含んだ様な視線に、また胸が痛くなった。
「私は退部しませんよ。先輩の事も、可笑しくなったとは思っていません。況してや、憐れみだ何て・・・・・・」
そう答えると、先輩は安心した様な顔をして、ゆるりと微笑んだ。
「知ってるわ。からかっただけ。」
・・・嗚呼、此の人は、とことん私に依存しているのだ。私が裏切るかも知れない何て、微塵も思っては居ないのだ。
まるで夢の様な・・・・・・
ハッとした。
ずっと、ずっと此のままで居たいーーーーー
そんな仄暗い感情が何時の間にか沸き上がっていた。慌てて胸を押さえ、溜め息を吐く。
・・・・・・夢。
本当に、夢なのかも知れない。
私も既に先輩の夢の中に取り込まれてしまっているのかも知れない。
だとしたら・・・・・・。
其れは私にとって、幸せ以外の何でも無い。
私は先輩をじっと見詰め、満面の笑みを浮かべて見せた。
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放課後の第四自習室 。
文芸部部長。
彼は今日も私と一緒に《夢の中》に居る。
作者紺野-2
どうも。紺野です。
久し振りにオリジナルを書いてみました。需要が無いのは百も承知です。
本当は百合を書きたかっ・・・・・・ゲフンゲフン
此処から先輩と後輩のボーイミーツガールが始める・・・・・・のは少し無理ですね。何を言っているんだか。
何、気持ち悪い物を書いているんだ僕は・・・。