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べリアル・オブザーバー ~埋葬立会人~

中編3
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べリアル・オブザーバー ~埋葬立会人~

俺はねこを飼っていた。

名前は「ぬこ」。

茶色い柄の可愛らしい雄猫だった。

ぬこ「にゃ~、にゃ~。」

あの毛の感触が忘れられない。

雲より柔らかかったんじゃないかな・・・。

「ぬこ」はこないだ亡くなった。

俺は「ぬこ」と話をしたことがある。

それが愚かな妄想であったのか、今でも分からない。

そのことをみんなに話してみたい。

ちょっと聞いてくれるかな。

・・・。

どこにでもいる普通のねこだった。

よく散歩に行った。

これは他のねことちょっと違うかな。

歩いてる途中に急に寝転がったり、虫を追いかけたり。

なんか笑っているように見えた、気のせいか・・・。

俺の腹の上で丸くなったり、ねこパンチしてきたり。

本当に可愛かった。

ずっと一緒にいたんだ。

友人より友人だった。

でも、違いすぎるんだ。

生きられる時間が。

ねこは赤ちゃんの時から家で飼っても14~18年くらいしか生きられない。

「ぬこ」は今13才。

実はおじいちゃんなんだ。

食べる量もだんだん少なくなり、俺も覚悟し始めた。

俺「もうすこし一緒にいてくれるか?」

すっかり弱々しくなった声で「にゃぁ~・・・。」

頭を優しく撫でてあげた。

・・・。

ある日から勝手に散歩に行くようになった。

ほぼ毎日探しに出る始末。

体力も無い筈なのに何でそんなに・・・。

いや、知っていたのに自分を抑えつけていたんだ。

いつも人目に付かない狭い場所にいるから探すのが大変だった。

俺「お前も準備してるんだろ・・・。」

頭を撫でで家に帰る。

本当にそろそろだな・・・。

数日後、また勝手に家を出ていった。

今日は後をつけることにした。

飼い主だから。

また暗くて人気のない場所に向かっている。

俺「こんなところで・・・、寂しすぎるだろ。」

そう、ぬこは墓を探しているんだ。

あの後ろ姿・・・、悲しすぎるよ。

とぼとぼ歩いていくぬこを守りたいけど、できそうにない。

と、寝転がった。

そっと近づいてみる。

俺「おう、どうしたんだよ?」

ぬこ「!?圭太!」

圭太「気付いてないとでも思ったか?お前の飼い主だぞ。」

ぬこ「そうか、気付いていたか・・・。」

圭太「何でこんなところにしたんだ?」

ぬこ「ねこはな、最期を見られたくないし見せたくないもんなんだよ。」

圭太「付き合いの長い俺にもか?」

ぬこ「・・・、あぁ。」

圭太「水臭ぇなぁ。」

ぬこ「さぁ、もう行ってくれ。今まで世話になったな。」

圭太「ここにいるよ。」

ぬこ「お前、俺の飼い主だろ。俺の気持ちが分かるなら帰ってくれ。」

圭太「お前が思ってること当ててやろうか?」

ぬこ「・・・。」

圭太「実は死ぬのが恐い、帰れと言ったが居て欲しい、圭太と別れるのは嫌だ。こんなところか?」

ぬこ「もういい!俺はねこなんだ。ねこらしく逝かせてくれ。」

圭太「確かにお前は普通のねこだ。

マタタビが好きだし爪も砥ぐよ。

でも俺にとっては?

特別なねこさ。

お前にとっての俺もそうだろ?

ここには俺とお前しかいない。

だったら、普通の猫みたいに死に場所を見つけに行かず、

最期まで一緒にいてもいいんじゃないか?」

ぬこ「・・・。」

圭太「大丈夫、怖くないよ。目を閉じてみな。」

ぬこ「うぅっ・・・、ありがとう。」

ぬこは圭太の腕に抱かれた。

最後の感触。

なんて暖かいんだろう。

圭太「うぅっ・・・、じゃあなぬこ。でも忘れないでくれ、これが終わりじゃないからな。」

目を瞑ってでも聞いていてくれただろうか。

冷たくなっていく。

よかった、最期に立ち会えて。

もう満足だった。

・・・。

ぬこと別れて数日。

まだそばに居る気がするんだ。

「にゃ~、にゃ~。」

聞こえてる。

だから言っただろ。

あれが終わりじゃないって。

心の揺りかごに眠るぬこが浮かんだ。

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