俺はねこを飼っていた。
名前は「ぬこ」。
茶色い柄の可愛らしい雄猫だった。
ぬこ「にゃ~、にゃ~。」
あの毛の感触が忘れられない。
雲より柔らかかったんじゃないかな・・・。
「ぬこ」はこないだ亡くなった。
俺は「ぬこ」と話をしたことがある。
それが愚かな妄想であったのか、今でも分からない。
そのことをみんなに話してみたい。
ちょっと聞いてくれるかな。
・・・。
どこにでもいる普通のねこだった。
よく散歩に行った。
これは他のねことちょっと違うかな。
歩いてる途中に急に寝転がったり、虫を追いかけたり。
なんか笑っているように見えた、気のせいか・・・。
俺の腹の上で丸くなったり、ねこパンチしてきたり。
本当に可愛かった。
ずっと一緒にいたんだ。
友人より友人だった。
でも、違いすぎるんだ。
生きられる時間が。
ねこは赤ちゃんの時から家で飼っても14~18年くらいしか生きられない。
「ぬこ」は今13才。
実はおじいちゃんなんだ。
食べる量もだんだん少なくなり、俺も覚悟し始めた。
俺「もうすこし一緒にいてくれるか?」
すっかり弱々しくなった声で「にゃぁ~・・・。」
頭を優しく撫でてあげた。
・・・。
ある日から勝手に散歩に行くようになった。
ほぼ毎日探しに出る始末。
体力も無い筈なのに何でそんなに・・・。
いや、知っていたのに自分を抑えつけていたんだ。
いつも人目に付かない狭い場所にいるから探すのが大変だった。
俺「お前も準備してるんだろ・・・。」
頭を撫でで家に帰る。
本当にそろそろだな・・・。
数日後、また勝手に家を出ていった。
今日は後をつけることにした。
飼い主だから。
また暗くて人気のない場所に向かっている。
俺「こんなところで・・・、寂しすぎるだろ。」
そう、ぬこは墓を探しているんだ。
あの後ろ姿・・・、悲しすぎるよ。
とぼとぼ歩いていくぬこを守りたいけど、できそうにない。
と、寝転がった。
そっと近づいてみる。
俺「おう、どうしたんだよ?」
ぬこ「!?圭太!」
圭太「気付いてないとでも思ったか?お前の飼い主だぞ。」
ぬこ「そうか、気付いていたか・・・。」
圭太「何でこんなところにしたんだ?」
ぬこ「ねこはな、最期を見られたくないし見せたくないもんなんだよ。」
圭太「付き合いの長い俺にもか?」
ぬこ「・・・、あぁ。」
圭太「水臭ぇなぁ。」
ぬこ「さぁ、もう行ってくれ。今まで世話になったな。」
圭太「ここにいるよ。」
ぬこ「お前、俺の飼い主だろ。俺の気持ちが分かるなら帰ってくれ。」
圭太「お前が思ってること当ててやろうか?」
ぬこ「・・・。」
圭太「実は死ぬのが恐い、帰れと言ったが居て欲しい、圭太と別れるのは嫌だ。こんなところか?」
ぬこ「もういい!俺はねこなんだ。ねこらしく逝かせてくれ。」
圭太「確かにお前は普通のねこだ。
マタタビが好きだし爪も砥ぐよ。
でも俺にとっては?
特別なねこさ。
お前にとっての俺もそうだろ?
ここには俺とお前しかいない。
だったら、普通の猫みたいに死に場所を見つけに行かず、
最期まで一緒にいてもいいんじゃないか?」
ぬこ「・・・。」
圭太「大丈夫、怖くないよ。目を閉じてみな。」
ぬこ「うぅっ・・・、ありがとう。」
ぬこは圭太の腕に抱かれた。
最後の感触。
なんて暖かいんだろう。
圭太「うぅっ・・・、じゃあなぬこ。でも忘れないでくれ、これが終わりじゃないからな。」
目を瞑ってでも聞いていてくれただろうか。
冷たくなっていく。
よかった、最期に立ち会えて。
もう満足だった。
・・・。
ぬこと別れて数日。
まだそばに居る気がするんだ。
「にゃ~、にゃ~。」
聞こえてる。
だから言っただろ。
あれが終わりじゃないって。
心の揺りかごに眠るぬこが浮かんだ。
作者大日本異端怪談師-3
まぢ感動します。
自分で言うなってか?
猫好きホイホイ。