短編2
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キツネ

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これは今から30年ほど前に実際に体験した話です。

私の田舎では、通夜や葬式が行われる際には斎場ではなく、亡くなった方の自宅で直接行われていました。その為、業者が仕切ってくれるわけではなく通夜の準備などは親戚やご近所の人たちで行うが一般的でした。

ある年の事。

私の親戚の家で不幸がありその晩は通夜が行われることになりました。

母親がその家の手伝いに行くことになり、実家には私と妹だけになってしまう為、私たち二人もその親戚の家に一晩だけ泊めて頂くことになりました。

通夜は一階の広間で行う為、私たちは邪魔にならないよう二階の一室に布団を敷いてもらいそこで寝ることになりました。

私たちが寝てからどれくらいたった頃でしょう。

私は玄関先からの人の声で目を覚ましました。

「ごめんくださーい」

弔問客が来たと思った私は、となりで寝ていた叔母に誰かが訪ねてきたと伝えました。

しかし叔母は疲れているからなのか

叔母「きのせいやわい。こんな時間に来んわい(気のせいでしょ、こんな時間に来るはずないよ)」といって起きてくれません。

しかししばらくすると、ふたたび

「ごめんくださーい」

という声。

さすがに叔母にも聞こえたようで、「はーい」と声をかけ一階に降りていきました。

叔母が一階に降りて行ったことで安心した私は再び眠りにつきました。

朝、なにやらザワついている人の声で目が覚めた私は、目をこすりながら一階に降りていくと玄関に叔母や母親たちが集まっています。

私「どうしたの?」

と聞くと、

叔母「昨日の夜、ごめんくださーいってだれか来たよね?」

私「うん。だから叔母ちゃんが一階に降りて行ったでしょ?」

叔母「そうなんやわい。でもね、玄関に行ったら誰もおらんかったもんで気のせいかと思ったんやけど。」(そうなんだけど、玄関に降りて行ったに誰もいなかったのでせ気のせいかと思ってね)

叔母「でも来てたんやねー。」

といい、玄関先に落ちている変な形の糞を私に見せた。

私「なにこれ? 犬の糞?」

叔母「違うよ。狐の糞やねー」

私「えっ!?」

叔母「狐が化かしに来たんやねー」

私「・・・狐って化かすの?」

私は幽霊とかは信じていましたが、狐が化かすなんて昔話の中だけの話だと思っていたのでビックリしました。誰かが玄関先まで来て寝静まっているのを見て帰っただけじゃないの?と思いましたが、あの声だけは頭から離れません。

「ごめんくださーい」という声が。。。

そしてよくよく考えてみたら、うちの田舎で標準語はなす人間なんて一人もいない事に気づきました。

もし同じ村の人間なら、

「おるかーい」(いますかー)

だろうから。。。あれはなんだったんでしょうね。。。

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