久しぶりに帰省した3年前の8月13日。
お盆という事もあり、私は挨拶がてら同じ村の親戚の家を順にお参りして回ることにした。
しばらく帰省していなかった事もあって、行く先々の親戚宅で昔話でおおいに盛り上がってしまい、最後の親戚の家に向かう頃には真夜中の11時をまわっていた。
私は足早に最後の訪問先へと向かった。
この最後の訪問先には、下道を歩いても行けるが、村の北側にある「ひらみの山」という小さな竹林を超えていくほうがはるかに早く着く。
昼間でも薄暗くきみが悪い山なので、普段ここを通ることは滅多にないのだが、少々遅くなってしまったこともあってこの晩だけは懐中電灯を頼りにこの山を越えることにした。
ゆるやかな山道を登ってしばらくすると、10分ほどで眼下に灯りが見えてきた。
ああ、目的の場所はもうすぐだ。
私は小走りにその山を降りて行った。
目的の家に到着すると、薄暗い玄関先には、階段に腰かけたお爺さんがいた。
このお爺さんはこの家の主である。
とても疲れた様子で腰を下ろし、首をうなだれていた。生気はあまり感じられなかった。
私はお爺さんに声をかけた。
「こんばんは~」
しかしお爺さんはまるで聞こえていないようで、こちらを振り向きもしない。
それはそうかもしれない。
なにせ、長年連れ添ってきた奥さんを昨年病気で亡くしたばかりであるし、今年はその奥さんの初盆なのだから。。。
男ひとり、これからお爺さんはどうやって生活していくのかな、と少し心配になる。
私はお爺さんに、
「夏でも夜は冷えるから風邪ひくよ。おうちに入ったら?」と一声だけかけ、そのままその家の中に入った。
そして仏壇にお参りさせて頂き、大阪から帰省していたお爺さんの娘さんと少し会話し、早々にお暇させて頂いた。
靴を履き玄関を出ると、あのお爺さんはまだ玄関先の階段に座ったままであった。
私は帰り際にもう一声だけ声をかけ、その家をあとにした。
帰りもやはり「ひらみの山」を超えて帰ることにした。
カエルの声がうるさいほど深夜に響く。
私は少し灯りが弱くなっている懐中電灯を頼りに帰路を急いだ。
「それにしてもお爺さん可哀想だな。。。娘たちは大阪に住んでいるからなかなか帰ってこれないだろうし、あの家で一人で暮らしているんだなぁ~」
そんな事を考えながら歩いている時、ハッ!とある事を思い出してしまった。
そうだった。。。。あのお爺さんは三年前に亡くなってたんだっけ。。。。
私は腰から力が抜けてその場に座り込んでしまった。
作者SANTA