親戚が病で亡くなり通夜に行った時の話である。
僕の田舎では通夜の晩は朝まで交代で線香の火を絶やさないように寝ずの番をする風習がある。
ただ、一人で徹夜するのは流石に堪えるため、一時間ごとに交代で番をする。
親戚の叔母さんに揺り起こされたのは真夜中の2時だった。
ああ、僕の番だ。
僕はご遺体の部屋に行き、線香を眺めながら、線香が短くなったら次の線香に火を付ける役割をこなした。
にしても、あまり知らない親戚のご遺体の側に一人でいるのもなんだか気持ち悪い。
確かにご遺体の顔には布が被せられ、その上には山から拾ってきた小石が乗せてあるので、直接顔を見ることはないのだが、どうも気持ち悪い。
側に置いてあった麦茶をガブガブ飲みながら僕はこの苦行に耐えていた。
どれくらいたっただろう、僕は誰かに揺り起こされた。
あっ!知らないうちに座ったまま寝むってしまっていたようだ!
僕は起こしてくれた叔父さんにお礼を言って、直ぐに線香を確認した。
良かった。線香は消えてなかった。
僕と叔父さんは顔を見合わせて微笑んだ。
叔父さんは僕に、一緒に番をしてくれると言った。
最初は断ったが何度も付き合うと言ってくれたので、僕は叔父さんと一緒に番をすることにした。
薄暗い部屋にご遺体と僕と叔父さんだけ。
叔父さんは僕に、最後にご遺体の顔を見たいと言った。
僕はいいですよ、と返事をした。
僕はご遺体の顔を覆っていた布を外した。
耳と鼻には綿が詰めらて少し可哀想だったが、お顔は安らかだった。
叔父さんは自分の顔をご遺体の顔に近づけジッと見つめると涙をポロポロ流し出した。
いろんな思い出を思い出したんだな、僕はそう感じた。
叔父さんはご遺体を見つめながら最後にこうつぶやいた。
[まだ生きたかった。。。]
そう言い終わると部屋から出て行ってしまった。
僕はポカンとその行動をみたあと、再びご遺体の顔に布を被せようとしてビックリした!
なぜって?
だってご遺体の顔をよく見ると先ほどの叔父さんと同じだったのだから。。
作者SANTA