友人から聞いた話。
仕事帰りにいつもの道を歩いて自宅へ向かっていた時のこと。
遠くの電灯の下に何かが見えた。一体何だろうと近づいて行くと、それは真っ白なお面だった。やけにリアルに作られていて、瞳は光が反射してキラキラと輝き、唇は乾燥してカサカサになっていた。
手に取ると質感は人の皮膚みたく柔らかくて電灯に照らされたそれはとても不気味であった。
しばらく眺めていると、急に肩をぽんと叩かれ、驚いて振り返った。そこには顔の無いスーツを着た男が、所謂のっぺらぼうがそこに居たのだ。何が起こっているのかわからず、ただ呆然とその男を見ていると、
「すいません」
前から声が聞こえて視線をそちらに戻すが誰も居ない。恐る恐るお面を見た。お面の目玉がぎょろぎょろと動き、乾いた唇を舌でベロリと舐めると不気味に微笑み友人を見た。
「それ私のなんですよ。拾って頂いてありがとうございます」
お面がそう言うと、顔の無い男は友人からひょいとお面を受け取り、それを顔にはめて「よし」と言うと、一礼してからどこかへ行ってしまったそうだ。
作者一日一日一ヨ羊羽子
落し物には気をつけましょう。