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コンクリート剥き出しの壁に、申し訳程度に壁紙が貼ってあるのは、
元々あった壁紙を無造作に引き裂いたからに違いないのです。
かろうじて残っているそれは、どうみても私の部屋のものなのですから。
床だって、私の部屋のそれですよ。
文字通り断片的にでも分かります。
あんなに悩んで拘った末に決めた床板なんですから。
麻布で出来た薄い青緑色のカーテンも、木目調の壁紙も床板も、頑張って買い揃えた家具も、一晩のうちにボロボロになってしまったようです。
「また揃えないと」
唯一きれいなまま残っているのは私の着ている衣服程度で、どういうわけか、私が横になっているこのベッドでさえボロボロに切られたような痕があります。
ご丁寧に私を退かしてから、ベッドに傷をつけ、また私を戻したのかと思うと、少しにやけてしまいます。
クスッ
笑ったときに口元を隠す右手が妙に重く感じたのは、どうやらこの手枷のせい。
この分ならもしかしてと足首を見てみたのですが、どうやら枷は、この手にだけあるようです。
こんなもののせいで、また、枷から垂れる鎖がベッド脇にある杭にしっかしと打ち付けてあるせいで、鎖の長さの分しか私は動けません。
それが丁度この部屋いっぱいの長さなのは、きっとこんなことをした何かが、わざわざ寸法を測ってまで調整したのでしょうけれど、これでは部屋の外に出られません。
これでも女の子ですから、寝起きにシャワーの一つでも浴びたいのです。
兎に角、枷と睨めっこをしていてもどうしようもないことは、私にだって分かるので、重い腕をなんとか持ち上げながらも、私はベッドを降りる他ないのです。
朝だと言うのに陽の光がほとんど差し込んでこないのは、もともとそうだったので気にも留めません。
ですが、明かりも付かないこの部屋において、それは中々致命的なものでした。
砕け散った電球が、これ見よがしに、床から私を見上げます。
ボロボロながらも、ないよりはマシとスリッパを履いたのは正解だったようです。
取り合えず、パジャマのままでいるわけにもいかないので、クローゼットを開けてみたのですが、私の服がありません。
どういう訳か、空っぽなんです。
どうやら私の部屋には、私以外の何もないようで、散らかったガラス片や木片などのガラクタだけが散乱しているようです。
はぁ
大きくため息をつき、どうしようもない現状をどうするべきか考えながら、最後の頼みの綱であるドアまで、極力ガラクタを踏まないよう注意しながら進み、その冷たいドアノブを、そっと回しました。
カチャッ
軽快な音をたて、当たり前かのように開いたドア。
流石の私も予想外でした。
当然のようにドアは開かないように施されており、この部屋からは出れないものだと思い込んでいたのです。
少し手前にドアを引いた後に現れたのは、いつものリビングではなく、まったく知らない、見た事もない部屋。
そして、その部屋のベッドの上で横たわる、一人の青年でした。
「大丈夫ですか」
怪しむこともなく、そう声をかけたのは、その人の手にも私と同じように枷がついていたからです。
ですが、いくら声をかけても動く気配がないので、揺すって起こそうと足を前に出した瞬間。
ガチャン
鎖の長さが限界に達したようで、私はこのドアの向こうには進めないようです。
こんなものさえなければ、なんとでもなりそうなものなのですが。
とうとう、どうしようもなくなってしまいましたが、ほんの少し寝て次に起きた頃には、あの人も起きていると思うので、私もまた、ベッドに横たわります。
足に当たる冷たい鎖が鬱陶しかったので、ベッドの下にどかしたいのですが、枷が重く、もういいかなと諦めてしまいました。
こんな手さえなければ、すぐにでも枷を取れるのに、本当に邪魔な腕です。
作者R・Jam
読んでくださってありがとうございます。
R・Jamです。
今日見た夢が、こんな感じの夢だったので、
おぼろげながらも書き起こしてみました。
実際にこういう女の子が存在していたら怖いですが
物語の中でならこういう子、案外好きなんです。
ちょっとずれている部分が狂気的でいいです。
ちなみに私はこんな物の考え方をする人ではありません(笑