彼はある日仕事で山間部の集落に家電修理に行ったそうです。
思いのほか修理はスムーズに進み当初予定していたより早く直りのんびり帰路に着きました。
地方都市在住とはいえ車内から見える自然の景色は美しく時間に余裕もあった為、途中車を停め車外で煙草をふかしていました。
道路脇には川が流れており水の流れる音と木々を揺らす風の音、動物達の鳴き声以外は何も聞こえない。正に自然のど真ん中を感じていたその時、少し離れた地面に小さな何かが動いた事に気付きました。
視界の端に映ったそれは全長15cm程の藁の束?ロープ?だったそうです。
ただそれはあきらかに不自然な動きをした後スゥッと消えてしまいました。
え??っと思った次の瞬間それが居た辺りから声が聞こえてきました。
『ワーイワーイ(⌒▽⌒)』
『ワーイワーイ(⌒▽⌒)』
とても陽気な子供の声です
声そのものは全く怖くないのだけど場の空気が異常な程張り詰めていた為、即逃げ出したそうです。
そして逃げ出した彼の後方から聞こえた声は
『ワーイワーイ(⌒▽⌒) 一緒に行こう』
に変わっていたそうです。
得体の知れない恐怖と耳にまとわりつくあどけない声を振り払う様に車を走らせ山を降り彼の住む街まで十数キロという所にあるコンビニに車を停めたそうです。
周りには車も人も多くホッと一息ついていたら窓をノックする音がしました。
驚き窓の外を見るとたまたま通りかかった友人がいたそうです。
孤独な恐怖から解放され落ち着きを取り戻した彼は少しの会話を楽しみ別れました。
そして缶コーヒーと煙草を買い車を再度出発させますが程なくして渋滞に巻き込まれました。
数分後、渋滞の原因がわかりました。
交通事故です。
しかも先程別れたばかりの友人が乗っていた車でした。
慌てて友人の車に駆け寄り声をかけました。友人は運転席で血を流し意識もありませんでしたが構わず声をかけたそうです。
おい!!大丈夫か!!おい!!
反応はありません。
直後に救急車が到着し救急隊員により手際よく病院に向かいました。
しかし彼は暫くその場から動けなかったそうです。
何故なら救急車のドアが閉まる瞬間ハッキリと聞こえたそうです。
『ワーイワーイ(⌒▽⌒) 一緒に行こう』
作者銀杏
少しアレンジしてますが実話です。
因みに事故を起こした友人は今は元気に暮らしています。