此れは、僕が高校2年生の時の話だ。
季節は春。
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・・・・・・・・・。
客が帰ると、兄は僕に「泊まって行くかい?」と尋ねた。
元々、薄塩達と遊ぶ約束をしていたので、家に帰っても、両親は僕のことを待っていないだろう。下手をすれば僕抜きでイチャついているかも知れない。恐ろしい。
其れに、暗い夜道を独りで帰るのは何だか嫌だ。
僕は少し考えた後、頷いた。
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・・・・・・・・・。
外では雨が降っている。
薄塩達はどうしただろう。今日は崖に行くと言っていたが・・・・・・。
のり姉が雨ごときで予定を変える筈も無い。二人ともびしょ濡れになって崖まで引き摺られて行くことだろう。
哀れ薄塩。哀れピザポ。
僕は心の中で、静かに黙祷を・・・
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ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
さっきの二人が忘れ物でもしたのだろうか。
僕は駆け足で、廊下を抜けて玄関へと向かった。
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・・・・・・・・・。
戸を開けると、非常に見覚えの有る・・・と言うか、ついさっきまで思い浮かべていた二人が立っていた。
「来ちゃった。」
「・・・き、来ちゃったのか。」
真顔でテヘペロ、などと気色の悪いことをしている薄塩に、申し訳無さそうに眉をハの字にしているピザポ。
二人を通り越した玄関先を見ると、一台の車が停まっている。
中には恐らく・・・彼女が居る。
背中にじんわりと嫌な汗が浮かんだ。
「・・・・・・行こう?」
ピザポがあくまでも疑問系の感じで言ってきたが、抑、僕に拒否権はあるのだろうか。
「因みに、拒否権は無いからな。」
無いらしい。
典型的な飴と鞭作戦。ピザポが飴で、薄塩が鞭・・・・・・いや、違う。鞭は薄塩のバックに居るのり姉だ。
だが然し、ピザポが飴ってのも・・・何だかなあ。微妙だ。
其の微妙なピザポが益々困った顔で僕を見る。
「まだ疲れてるとは思うんだけど・・・。ごめんね。無理とかはさせないから。」
薄塩が憎々しい口調で言い放つ。
「逃げられないって分かってんだろ。抵抗するだけ時間と労力の無駄だと思わねーか?」
万事休す。
僕は、唇を噛み締めながら小さく頷いた。
作者紺野-2
どうも。紺野です。
期末試験が近付き、少しだけ忙しかったりします。書くのがが遅くなったら御免なさい。
何話くらいになるかは分かりませんが、そんな長い話ではありません。
よろしければ、お付き合いください。