此れは、崖の上のファイヤー・1の続きだ。
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・・・・・・・・・。
二人に連行されて車に乗り込むと、運転席に座っていたのり姉が振り返らずに言った。
「落ち込んでる?」
僕は少しだけ不機嫌だったりしたので、黙っていた。
一瞬怒られるかと思ったが、のり姉はそんなこと気にせず、一人でどんどん喋る。
「まだ少し早いかもって思ったりもしたんだけど、此処でコンソメ君が落ち込むのも、言っちゃ何だけどお門違いだからね。」
「○○君に変なこと言われてない?妙に話を重くする人だから、少し心配。かと言って、木葉君だとあっさりし過ぎなんだけどね。」
「あの二人、足して割ったら丁度良いんだけど・・・いっそ付き合ったりしないかな。」
「・・・今回のことはね、コンソメ君。《道を歩いてたら野良犬に噛まれた》とか《何もしてないのに赤の他人から突然殴られた》とか、そういう類いの話なんだよ。」
「気にする気にしない以前の問題。降って湧いた災難。・・・其処で責任を感じるのは、優しさを通り越して滑稽だと思う。其れが例え、コンソメ君の長所だとしてもね。」
「馬鹿にしてる訳じゃないんだよ。言いたいこと全部言っておいて何だけど。ただ、背負い込んだ所で意味は無いってことを伝えたかったの。此れも私のエゴっちゃエゴなんだけど。」
「・・・今日、もし行きたくないなら、○○君の所に戻って構わないし、何なら家まで送るよ。お休みの時間が欲しいってのも解るし。ただ、来るんだとしたら、私はコンソメ君に同情してあげない。特別優しくしたりもしない。普段の日常に戻ったと見なすから。」
そして、やはり前を向いたままで、僕に問い掛けた。
「どうする?日常に戻って来る?」
何処か挑戦的とも取れる声色。
僕は、また暫く黙りをしていたが、結局其れを貫くことは出来なくて、蚊の鳴くような声で
「はい。」
とだけ答えた。
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・・・・・・・・・。
崖、と聞いていたので、僕は勝手に火曜サ○ペンス的な、○尋坊的な海辺の崖を想像していたのだが、車はどんどん山の方へと走って行く。
「海じゃないんですか。」
「山にも崖は有るよ。」
確かに其れはそうなのだが・・・。
「転落死した方の霊を見に行くんですか。」
「いや、焼死。自殺。まだ燃えてる。」
崖まで行ってわざわざ焼身自殺とは此れ如何に。死にたいのなら、火を使ったりせずに崖からダイビングすればいい話なのではなかろうか。
「まだ結構掛かるから、寝ちゃいな。着いたら起こすよ。」
・・・考えた所でしょうがない。どうせ今から見に行くのだ。
のり姉の言葉に頷きながら、僕は目を閉じた。
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・・・・・・・・・。
「着いたよ。」
目を覚まして窓の外を見て見ると、点々と街灯に照らされた、公園のような場所だった。
雨はまだ止んでいないらしいが、大分弱まった。霧雨と言った所か。
遊具は無く、東屋が一つ、ぽつねんと設置されている。地面はどうやら芝に覆われているらしい。
街の灯りが見える。彼処が崖になっているのだろう。どうやら、そこそこ高いらしい。
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崖の出前で、人間が一人、燃えていた。
作者紺野-2
どうも。紺野です。
土日までにどうにか終わらせます。